水分含む膜で衝撃吸収=當瀬規嗣解説
私たちの脳は硬い頭蓋骨で厳重に保護されています。骨も軟骨もない、とても軟らかい組織である脳を守るためです。ところで、皆さんは大切な品物を宅配便で送るときに段ボ-ル箱などを使うと思いますが、品物を箱の中に入れただけで送る人はいないと思います。もしそうしてしまえば、輸送中に品物が箱の中で踊って壊れたり傷ついたりするからです。そこで、宅配便では衝撃を吸収するクッションや緩衝材などを入れて品物を保護します。脳と頭蓋骨の関係も同じです。脳のためのクッションは水分で、脳脊髄液といいます。脳に到達した血液から作られます。ただ、脳脊髄液はそのまま存在するのではなく、くも膜という綿のような構造の中にふくまれています。ちょうど、水を含んだ脱脂綿のような感じです。このしくみで衝撃を吸収します。別なたとえで言うと、ス-パ-で売っている、水を張ったプラスチック容器入りの豆腐の様子に煮ています。こうして、頭蓋骨の中の脳はプカプカ浮いているような状態なので、頭を激しく振っても、体操や格闘技のようなスポ-ツで頭を上下左右に激しく動かしても、脳が傷つかないのです。とはいうものの、急激な衝撃が頭に加わると、脳は衝撃の加わった反対方向に動き、頭蓋骨に衝突したしまいます。この衝突で一時的に脳の動きが停止し、意識を失った状態を脳震とうといいます。かなり重大なことであり、衝撃で脳が壊れているかもしれません。脳振とうを軽く見ないでください。ご用心。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)
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