正体不明、ある日突然・・・・=當瀬規嗣解説
心臓の鼓動は、お母さんのおなかの中にいるときに始まります。正 確な時期は、受精後22日から23日ごろと推定されています。でも、 詳しいことはまだわかっていません。この時期の心臓は、まだ心臓 の形になつていません。将来胸となる部分の一部が、盛り上がって 筒のような形になりかけているころです。心臓の形を作るしくみには、 ある遺伝子が作用することがすでに明らかになっています。この遺 伝子が鼓動を始める働きを持っているのかどうかは、まだ分かって いません。ラットを使って観察してみると、心臓の鼓動は徐々に始ま るのではなく、突然、あるリズムを持って始まり、そのリズムは規則 正しく、次第に速くなつていくことが分かりました。つまり、心臓の鼓 動に必要なさまざまな装置はすでに準備されていて、最後のあるし くみが引き金を引くことによって、「ヨ-イドン」で心臓の鼓動が始ま るようなのです。私は、この引き金の正体を知りたいと思っています。 大人の場合、心臓の細胞膜にあるカルシウムだけを通すカルシウム チャネルが、心臓の鼓動を起こすキッカケになります。カルシウムチャ ネルは、ラットでは心臓が鼓動を開始する直前の時期に、突然に作 られ始めることが、私たちの研究で明らかになりました。このカルシウ ムチャネルと心臓の形を作る遺伝子との関係はどうなのか、カルシウ ムチャネルが本当に引き金となるのか、それともこの後、「真犯人」が 登場するのか、さらに解明していこうと思っています。でも、「言うは易 し行なうは難し」で、研究は鼓動のようにトントン拍子には行かないの が実際のところです。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)
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