道立道南農業試験場研究部長 赤司 和隆
土壌には肉眼では見えない各種微生物が1㌘ 当たり数億いると言われています。中でも量が 多く、重要な働きをするのが糸状菌と放線菌、 細菌です。これらのうち酸素を必要とする好気性 のものは畑に施された有機物をエサに繁殖し、そ の結果有機物を分解します。ここで言う有機物とは生物それ自体、 または生物が作ったものを意味し、作物残さ、緑肥、有機質肥料、 堆肥および家畜排せつ物などを指します。有機物の構成物質であ る糖・アミノ酸、デンプン・タンパク質、セルロ-スなどはおおむねこ の順の好気性菌により分解され、最終的には二酸化炭素と水に変 化します。そのあとには分解されにくいリグニン(植物の骨格を形成 する繊維物質)が残り、腐植の構成物質となります。腐植も有機物と 同様、微生物による分解をうけますが、その速度はゆっくりとしてい ます。有機物の分解により窒素、リン酸、カリウムなど作物の成長に 必要な各種養分も土壌中に放出されます。つまり、植物起源の有機 物に取り込まれていた土壌からの養分は土壌微生物の働きで、再 び土壌の中に現れ次の作物をはぐくむのです。減化学肥料栽培や 有機栽培ではこのような土壌微生物による物質(養分)循環が利用 されています。有機物は養分の富化に有効であるため、昔も今も土 づくりには欠かせないものです。
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