東農大網走 丹羽教授の研究グル-プ 世界初、食中毒の仕組み示す
[網走]東京農業大生物産業学部(東農大網走) 食品科学科の丹羽光一教授(41)の研究グル- プは、ポツリヌス菌の毒素が食中毒などの症状を 引き起こすメカニズムを世界で初めて解明、ヨ-ロ ッパ細菌学会誌の電子版最新号に発表した。ボツ リヌス毒素は致死性の高い食中毒を引き起こす一 方、筋肉の異常緊張を和らげる治療薬にも使われ るが、作用の仕組みは不明だった。丹羽教授らは 牛の大動脈の壁をつくっている「血管内皮細胞」を 培養してボツリヌス毒素を接触させ、倍率三百-六百倍の顕微鏡での 観察を三年間続けた。この結果、毒素が細胞に接触すると、細胞から 出ている「糖鎖」と呼ばれる毛のような部分が毒素をつかんで細胞の 中に取り込み細胞を通過させていた食事で体内に入った毒素は「口→ 腸→毛細血管→毛細血管の外の体液→神経細胞」というル-トで神 経細胞に至ることが確認された。この毒素は筋肉に信号を伝える神経 伝達物質アセチルコリンの動きを阻害することで筋肉を弛緩させるため、 重症の場合は呼吸まひなどで死亡することもある。ボツリヌス菌は道内 などの海岸の砂に広く分布。菌が付着した魚で作られた「いずし」は、 長期保存中に菌が増殖し、度々食中毒を引き起こす。全身の筋肉がね じれたり硬直したりする原因不明の運動障害ジストニアや、まぶた、顔 などの筋肉のけいれんの治療にも、少量のボツリヌス毒素を注射する 療法が行われている。丹羽教授は「今後、ボツリヌス毒素が神経細胞 に働きかけることを、さらに明確にしたい」としている。道立衛生研究所 (札幌)の孝口裕一研究員は「医薬品の安全性確保や効果改善につ ながる」と評価している。
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