下巻の主なテーマは、空海と最澄との静かな闘いである。
どちらも悪者でもなく、どちらもそうせざるを得ない必要があってのことなのだが、どちらも引けずに、こじれている。
最後の切り札として最澄は弟子の泰範を空海の許において叡山に戻ってくるのであるが、
其の叡山の学頭でもあった泰範が真言宗に魅せられ、結局は最澄の許に戻ってくることはなかった。
(学頭の時から、最澄に対する不満があったのかもしれないが)
空海と最澄との静かであったはずの戦いが、だんだんと露わなものとなり、やがて断交となる。
読んでいて気持ちの良いものではないが、このようなやり取りがあったかもしれない…と思うと、複雑である。
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私は小学校の時に近くの山で一年に一回『万灯会』があり、家族の思い出が詰まっている。
空海は、生涯の最後に万灯会を催したそうである。
それは長安での日々を偲んでのことではなかったか…と司馬氏は書かれている。
コトバンクによると、万灯会は「東大寺、高野山などのものが著名」とある。
日本では651年(白雉2)味経(あじふ)宮で2700余の灯を燃やしたという《日本書紀》
孝徳天皇条の記載が初見で,744年(天平16)に東大寺の前身である金鐘寺で1万坏の燃灯供養を行った例が最も古い。
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空海とはどのような人物だったのか、彼の心が複雑すぎて、私には及びもつかない次元であった。
過去に観た空海展での目の前に見える形の方が凡人には程よく、空海の世界が面白いと思った次第。