ございません*4 みっともない・はしたない

2016-01-18 | 言葉遣い
 先日、電車で東京方面に向かったときの事です。

人目を引く洋服のわりに、素朴な顔立ちの母娘が乗り込んできたと思いましたら、

娘さん、座るなり から葉書サイズの鏡を取り出して、メイクスタート

いまの時代、決して珍しい光景ではありませんが、つい目が行ってしまいます

お読みくださっている皆様は、「お母さんは娘さんに注意しないのかしら?」

と、母娘の顔立ち同様(しつこい ) 素朴な疑問をお持ちになるでしょうが、

実は、娘さんと先を争うかのように、お母さんもお化粧を始めていたのです。

必要性から言いますと、お母さんの方が切実ですから、それはもう必死

揺れる車内でアイラインを引くのにはハラハラしましたが、慣れているのでしょう。

素朴なお顔はどこへやら、、ひと駅ごとに洋服に似合うメイクに仕上がってゆく様子を、

半ば呆れ、半ば感心しつつ、持参した を読むふりをしながら見入っておりました。

さらに気になったのは、娘さんの短いスカート

いえ、キレイな脚を強調したいのは若さの特権ですから、それは構わないのですが、

お顔を整えることに集中するあまり、膝を揃えることを忘れてしまったようです

女の私ですら目のやり場に困ったくらいですから、向かい側に座っていた男性はお気の毒でした。

母娘にとって他の乗客は、車窓に流れる風景の一部だったのでしょうけれど


 「みっともない」 とか 「はしたない」 というお小言を耳にする機会が少なくなりましたね。

良い意味で使われることはなくても、日本人の恥じ入る文化と共に、残しておきたい言葉です。

 
 ところで、「みっともございません」 という人はいないでしょうが、

「みっともいい物ではない」 という言い方を聞いたことはありませんか?

「見たくもない」 ⇒ 「見とうもない」 ⇒ 「みっともない」 と変化したものですので、

「みっともいい」 とはならないでしょうから、いわゆる俗語のようなものなのか、

それとも、「みっともない」 と 「見た目がいいものではない」 の合成語なのでしょうか。

そんなところにも、日本語の面白さを感じます。


お読みくださいまして、ありがとうございます。
クリックしていただけますと励みになります

コメント (4)

ございません*3 とんでもない

2016-01-12 | 言葉遣い
 「とんでも8分」 と聞いて、すぐに 「歩いて10分」 と頭に浮かぶ方、お仲間です

もしや、お若い方は何のことかお分かりにならないかも知れませんね。

念のために申しますが、決して駅前の不動産屋さんの広告ではないのですよ  

「とんでもない」 と言う場面で、言葉遊びとして続く 「とんでも8分、歩いて10分」

他にも、「その手は食わない」 が 「その手は桑名の焼き蛤(はまぐり)」 になったり、

1960年代には、「あたりまえだ」 転じて 「あたり前田のクラッカー」 という CM もありましたっけ。


 冒頭から昭和モード全開ですが、今日はこの 「とんでもない」 についてお話しいたします。

称賛されたり、過分と思われる評価を受けたりした時に、相手の言葉を軽く打ち消す際に使いますが、

この相手というのが立場が上の方である時に、「ない」 が 「ございません」 になるようです。

また、「とんでもない」 は謙遜の意味の他に、「とんでもない奴だ」 のように悪い意味でも使われますので、

お客様や上司からの褒め言葉に対して、「とんでもない事」 と言っては失礼だと考える方もおいでのようです。

「申し訳ない」 を 「申し訳ありません」 や 「申し訳ございません」 と言うように、

「とんでもありません」 「とんでもございません」 もまた、時代の流れと共に定着したため、

私たちが敬語を使う上での目安となる文化庁の答申 「敬語の指針」 でも、許容されている言い方です。

似たようなニュアンスの言葉に 「めっそうもない」 という言い方も耳にしますが、

こちらも本来の言い方で 「めっそうもないことでございます」 とすると仰々しく聞こえるためか、

「めっそうもありません」 「めっそうもございません」 と、謙遜の意を込めて軽く打ち消しています。


 さて、昨日は鏡開き

武家社会の行事であったことから、忌み言葉である 「切る」 を避け、

刃物ではなく木槌で 「割る」 ようになったものの、「割る」 もまた縁起が悪いため、

「開く」 と言うようになったのだとか。

最近は文字通りパックを 「開く」 と、中から小さなお餅がたくさん出てきますね


     
     秘書にゃんこサイズのお餅を前に、あどけない表情。
     「あどけない」 も、幼さや無邪気な様子を表す形容詞です。


お読みくださいまして、ありがとうございます。
クリックしていただけますと励みになります

コメント (10)

ございません*2 申し訳ない

2016-01-07 | 言葉遣い
 前回 「やりきれない」 と書いた後で、そういえば 「やるせない」 も似た心持ちと考えるうちに、

この二つの言葉が歌詞として登場する 「悲しくてやりきれない」 という曲を思い出しました。

1968年(昭和43)年に、ザ・フォーク・クルセダーズが歌ってヒットした曲ですが、

作曲家の加藤和彦さんが出来立ての曲を持ち込んだ先は、作詞家のサトウハチローさん宅。

あの 「ちいさい秋みつけた」 の歌詞を書いた方です


 それでは、今日は 「申し訳ない」 についてお話しいたしましょう。

こちらも 「やりきれない」 と同様、もともと 「申し訳ない」 でひとつの言葉であり、

「申し訳ない事をいたしました」 「申し訳ない気持ちでいっぱいです」 というように、

「事」 や 「気持ち」 に掛かる形容詞です。

ところが、謝罪の言葉といえば 「申し訳ありません」 「申し訳ございません」 が一般的であり、

ビジネスの場面では誰しも、詫びる側、そして言われる立場になった経験がおありでしょう。


 この言い方が一般的になった理由として、私は二つの事が考えられると思います。

ひとつは、「申し訳」 という名詞がある ため。

「申し訳程度の雨」 「それでは申し訳が立ちません」 のように、後ろに 「ない」 が付かなくても、

「申し訳」 だけで存在できるところが、「やりきれない」 「やるせない」 などと異なります。

そしてもうひとつは、謝罪の場面で使われる言葉である ため。

「ない」 だけを見てみますと、「ありません」 や 「ございません」 に比べて丁寧さに欠け、

謝罪の意を表すのに、「ない」 では相手に対する敬意が感じられないという思いからか、

「ありません」 「ございません」 へと、より丁寧と思われる言い方に変化したのでしょう。


 「申し訳ありません」 や 「申し訳ございません」 がここまで一般的になりますと、

言葉はいきものであり、時代の流れと共に変化しているのだと、つくづく思うしだいです。


 さて、お次の 「ございません」 は、何が登場しますやら?


お読みくださいまして、ありがとうございます。
クリックしていただけますと励みになります。

 
コメント (4)

ございません*1 せつない・やりきれない・素っ気ない

2016-01-02 | 言葉遣い
     

               あけましておめでとうございます 


 この年末年始、 を見てもバラエティー番組のノリについてゆけず、

連日ローカル局で放送されている韓国のドラマに見入っております。

運命に翻弄される せつない恋、やりきれない思い、心とは裏腹の素っ気ない態度。。

ブームが去ろうと、韓流スターの独身率が低下しようと、昭和の乙女には胸キュン場面が満載です


 語り出したら止まらないので、このあたりで本題に入りましょう。


 「せつない恋」 「やりきれない思い」 「素っ気ない態度」 

いずれも 「ない」 が付きますが、これは 「有る ⇔ 無い」 の 「ない」 ではありませんし、

「せつ」 「やりきれ」 「素っ気」 を打ち消す意味の 「ない」 でもありません。

ただ、「やりきれない」 に関しては、「期限までに作業をやりきれない」 という使い方もあり、

この場合は、「作業をやりきれる(やり終えることができる)」 を否定する 「ない」 であり、

「語り出したら止まらない」 の 「ない」 も、「止まる」 を打ち消す 「ない」 です。

「有る ⇔ 無い」 の 「ない」 ではないということは、「せつある恋」 なんてありませんし、

丁寧に表現する場面でも、「せつありません」 や 「せつございません」 と言う人はいないでしょう。


 あらあら、あるとかないとか、新年早々ややこしくなってしまい、申し訳ございません

ん? 「申し訳ございません」??

これって、正しい言い方でしょうか? それとも・・・。


 お読みくださいまして、ありがとうございます。 今年もどうぞよろしくお願いいたします

 
コメント (12)

エレガントな言葉遣い*3 濁音(だくおん) 「゛」

2015-10-02 | 言葉遣い
 濁音の無い会話など成り立つはずもありませんが、会話にも 「印象」 というものがあり、

最初の 「第一印象」 や 「最後の印象」 は、聞き手の記憶に特に残ります。


だって、〇〇さんの報告が遅いから」 「どうせ、無理に決まってます」 「だめ、明日は予定があるの」

でも、まだ慣れていませんし・・・」 「だったら、どうすればよかったんですか?」

など、冒頭から否定的に結論づけられてしまいますと、会話のキャッチボールが難しくなります。

「報告が遅かったことも一因ですが、私も再度確認すればよかったと反省しています」

「今回は難しいかも知れませんが、今後のためにも、客観的に理由を挙げてみましょう」

「せっかく誘ってくれたのにごめんなさい。 先約があるので、明日は伺えそうもないわ」

「慣れていませんので、ご面倒をお掛けすると思いますが、よろしくお願いいたします」

「今回のケースでは、私はやはり、課長にも事前にお知らせするべきだったのでしょうか?」

拗ねたり甘えたりする場面では結構ですが、ビジネスシーンでは、感情的に聞こえたり、

投げやりだと思われたり、さらには卑屈に聞こえてしまうこともありますので、気をつけたいものです。


 「最後の印象」 と書きましたのは、まさに 「エレガントな言葉遣い」 そのものですが、

も好きだ」 ⇒ 「 も好きよ」  「 で行くんだ」 ⇒ 「 で行くの」 

「後で するよ」 ⇒ 「後で するわ」  「そうだっけ?」 ⇒ 「そうだったかしら?」

を編んだんだ」 ⇒ 「 を編んだのよ」  「 がキレイだなぁ」 ⇒ 「 がキレイね」

など、女性らしい語尾を耳にしますと、私など嬉しくなってしまうのですが、

今の時代、「女性らしい」 と言うだけで、何とかハラスメントになってしまうのでしょうかしらね


 さて、私は機械に疎く、「まるで江戸時代の人間に電気の説明をしているようだ」 と言われたこともあります。

実際、周囲にある電化製品で使いこなしていると言えるのは、せいぜい冷蔵庫とアイロンと掃除機くらいで、

のリモコンや洗濯機ですら、押したことのないスイッチがあるのですから、

、そして に至っては、その機能の1割も使っていないと思われます。

そんな私が家電のお店に行きますと、担当してくださる店員さんは大変。 (他人事

それでも、無知と無理を承知で申しますが、やはり恥はかきたくないものです。

同じ説明を繰り返してくださるときに、「ですから、先ほども申し上げましたように」 と言われますと、

飲み込みの遅さや物覚えの悪さを責められているようで、いたたまれない気持ちになってしまいます。

「ですから」 が、濁音で始まるからという理由だけではないでしょうが、他の言い方をしていただければ、

気軽に質問して、楽しい気分で買い物ができることでしょう。

と同時に、逆に私自身、専門知識や業界用語で相手の方の心を波立たせていないか、

「ですから」 と言わないまでも、そういう気持ちや表情になっていないか、我が身を振り返っております。


お読みくださいまして、ありがとうございます。 クリックしていただけますと励みになります。

にほんブログ村 資格ブログ 秘書検定へ
コメント (6)