近所のスーパーでお弁当やお惣菜を買うと、
レジの方から 「お箸は何膳お付けしましょうか?」 と聞かれます。
このお店では、アルバイトの高校生でも 「何膳」 と言いますので、
マニュアル化されているのか、または口伝えで指導されているのでしょう。
一方、近くのコンビニでは、「お箸をお付けしましょうか?」 と聞かれます。
数の選択肢はありませんが、一人分という前提では的確な尋ね方です。
中には、「お箸をお付けしますか?」 と聞くレジ担当の方もいますが、
「お(ご) ~ する」 は、自分側をへりくだって述べる謙譲語ですので、
主語は 「私」 であり、「私はお箸を付けますか?」 という意味になり、
これではまるで、自分の意思を他人に尋ねているように聞こえてしまいます。
さて、話を 「膳」 に戻しましょう。
細い棒状のお箸を数えるのに、なぜ 「本」 ではなく 「膳」 なのでしょう。
今でこそ皆でテーブルを囲んで食事をしますが、昔は銘々に 「お膳」 がありました。
半月や四角形の平たい 「お膳」(お盆) は、今でも定食などを載せますし、
二枚の板や四本の脚で支える、高さのある 「お膳」 も、旅館の宴会などで見かけます。
これらにセットされているのが、「ご飯」 と 「お箸」。
「お箸*10」 では 「一汁三菜」 についてお話しいたしましたが、
「一汁」 や 「三菜」 のように数字で書き表すまでもなく、
ひとつの 「お膳」 には、必ず 「ご飯」 と 「お箸」 がセットされています。
「ご飯とお箸が揃ってこそのお膳」 と言えば、少しオーバーかも知れませんが、
「ご飯」 も 「お箸」 も 「一膳」 と数えるのには、そんな背景があると思うのです。
「ご飯」 については、「一杯二杯」 という数え方も一般的ですが、
「居候 三杯目にはそっと出し」
という川柳のためか、私には山盛りのイメージがあります
また、ご飯をお茶碗に盛ることを 「装う(よそう)」 と言いますが、
そこから転じて、「一膳」 のことを 「一装い(ひとよそい)」 とも言い、
炊き立てのご飯をふんわりと盛り付ける様子が感じられて、好きな言葉です。
お箸を 「何本」 と数える人がいると、言い直すのも聞き流すのも後味が悪いものですが、
かく言う私自身、物の数え方(助数詞) を正確に使い分けているかと申しますと、
日本語の大きさ、広さ、深さの前では、謙虚でありたいと願うばかりです。
長らくご無沙汰いたしておりました。
お読みくださいまして、ありがとうございます
レジの方から 「お箸は何膳お付けしましょうか?」 と聞かれます。
このお店では、アルバイトの高校生でも 「何膳」 と言いますので、
マニュアル化されているのか、または口伝えで指導されているのでしょう。
一方、近くのコンビニでは、「お箸をお付けしましょうか?」 と聞かれます。
数の選択肢はありませんが、一人分という前提では的確な尋ね方です。
中には、「お箸をお付けしますか?」 と聞くレジ担当の方もいますが、
「お(ご) ~ する」 は、自分側をへりくだって述べる謙譲語ですので、
主語は 「私」 であり、「私はお箸を付けますか?」 という意味になり、
これではまるで、自分の意思を他人に尋ねているように聞こえてしまいます。
さて、話を 「膳」 に戻しましょう。
細い棒状のお箸を数えるのに、なぜ 「本」 ではなく 「膳」 なのでしょう。
今でこそ皆でテーブルを囲んで食事をしますが、昔は銘々に 「お膳」 がありました。
半月や四角形の平たい 「お膳」(お盆) は、今でも定食などを載せますし、
二枚の板や四本の脚で支える、高さのある 「お膳」 も、旅館の宴会などで見かけます。
これらにセットされているのが、「ご飯」 と 「お箸」。
「お箸*10」 では 「一汁三菜」 についてお話しいたしましたが、
「一汁」 や 「三菜」 のように数字で書き表すまでもなく、
ひとつの 「お膳」 には、必ず 「ご飯」 と 「お箸」 がセットされています。
「ご飯とお箸が揃ってこそのお膳」 と言えば、少しオーバーかも知れませんが、
「ご飯」 も 「お箸」 も 「一膳」 と数えるのには、そんな背景があると思うのです。
「ご飯」 については、「一杯二杯」 という数え方も一般的ですが、
「居候 三杯目にはそっと出し」
という川柳のためか、私には山盛りのイメージがあります
また、ご飯をお茶碗に盛ることを 「装う(よそう)」 と言いますが、
そこから転じて、「一膳」 のことを 「一装い(ひとよそい)」 とも言い、
炊き立てのご飯をふんわりと盛り付ける様子が感じられて、好きな言葉です。
お箸を 「何本」 と数える人がいると、言い直すのも聞き流すのも後味が悪いものですが、
かく言う私自身、物の数え方(助数詞) を正確に使い分けているかと申しますと、
日本語の大きさ、広さ、深さの前では、謙虚でありたいと願うばかりです。
長らくご無沙汰いたしておりました。
お読みくださいまして、ありがとうございます