お箸*8 日本のお箸 (1)材料と塗り

2016-03-28 | お箸の世界
 
 「箸」 という字は竹かんむり。

神様に供える食物を手づかみするのが憚られ、竹をトングのように折り曲げて、

祭祀などに用いていた 「折箸」 が、日本におけるお箸のルーツと言われています。

弥生時代末期の遺跡から発見されたことから、邪馬台国 卑弥呼の時代と思われますが、

神様へのお供えではなく、人々が食事の際にお箸を使うようになるのは、まだまだ先の話。

 
 このように 「竹」 から始まったお箸ですが、現在多く普及しているのは木製のお箸。
 
もちろん、竹製のお箸はよく見かけますし、竹で出来た割り箸もありますが、

ここで注目したいのが、日本が世界有数の森林国であるという事実

林野庁によりますと、国土(2500万ha)の67%(1300万ha) つまり3分の2が森林で、

その森林面積の5割が天然林、4割が人工林、そして残りの1割が竹林などだそうです。

とかく日本は資源の乏しい国と言われますが、こと森林資源に関しては豊富なのですね。

ただ、それが使われずにいるのが現状、というところでしょうか。


 お箸の材料となる木は全国各地で生産され、加工しやすい桧葉(ひば=あすなろ)、

特有の芳香を放つ檜(ひのき)、美しい木目が魅力的な栃(とち)などが有名ですね。

木目に沿って縦に割れやすい吉野杉は、割り箸の材料に適しています。


 そして、日本のお箸を語る上で忘れてはならないのが 「漆(うるし)塗り」。

塗り箸の全国シェアの8割を占める 「若狭塗」(福井県 小浜市) を始め、

「津軽塗」(青森) 「会津塗」(福島) 「輪島塗」や「山中塗」(石川) は馴染みが深く、

ちなみに、当ブログにたびたび登場するお箸は 「会津塗」。

酸にもアルカリにも侵されず、防水・防腐・防虫に優れた漆塗り。

たしかに合成樹脂のお箸に比べると高価ではありますが、お箸は毎日 口に入れるもの。

良い品を大切に使いながら、安心してお食事を楽しみたいものです。



お箸は友人の旅行土産。 箸置きは、お餅に合わせて串だんご


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お箸*7 韓国のお箸とスプーン 

2016-03-18 | お箸の世界
 ご多分に漏れず、「冬のソナタ」 をきっかけに 「韓流ブーム」 に見事にはまりまして、

新大久保に出かけては、微笑むヨン様のポスターの下で韓国料理に舌鼓を打ち、

都内で開催された冬ソナ関連のイベントには、勤務後であろうと駆け付け、ほぼ皆勤賞

同じく韓流ドラマに夢中だった母と、手に手を取ってソウルへと旅に出たものでした

 あれから10年。。。

ヨン様に関するニュースがめっきり減った今でも、私のアンテナの感度は良好で、

最近スーパーの店先で が釘づけになった商品がこちら( ネットから借用しました)


大きな やきそば の文字より、小さな Peyong の方に反応してしまう悲しい習性


 さて、今日は韓流ドラマでもよく見かける、韓国のお箸とスプーンについてお話しいたします。

     
     スプーンは 「スッカラ」 お箸は 「チョッカラ」 ふたつ合わせて 「スジョ」


おかずをお箸で食べるのは日本と同じですが、汁物はもちろん、ごはんもスプーンでいただきます

身近なものに例えるなら のイメージでしょうか。 ごはん物とはいえ、お箸は使いませんものね。


     
     上が日本の洋食のスプーンで、下が韓国のスプーン(スッカラ)
     日本の物より長く、口に入れる部分は丸く浅く、柄は比較的まっすぐ。


 次にお箸を見てみましょう。

     
     上が日本の手元箸で、下が韓国のお箸(チョッカラ)
     ステンレス製で、ご覧のように、長さと幅は日本のお箸と同じくらい。


     
     ところが、この薄さ  立てて撮影するのにひと苦労
     「箸が転んでもおかしい年頃」 は遠い昔で、「箸が転んではイラつく年頃」

     
     
     慣れるまでは、いささか持ちにくい重さと形状です。

 
 金属製である理由として、昔々は毒殺を未然に防ぐ云々・・・などと言われていますが、

仮に木や竹なら、韓国料理の色に染まると洗っても落ちにくく、衛生的に見えないためと、

お箸に限らず器も金属製の物が多いことから、丈夫であることが大切なのだと考えます。


 前回の中国料理の時にも申しましたが、韓国でも お茶碗以外の器は持ち上げません

儒教のお国柄ゆえ、お食事の開始もペースも終了も目上の方に合わせ、

乾杯の時は横を向いて飲み、両親や目上の方の前では も遠慮することが多いようです。

     
     
     ソウルの宿泊先 ロッテホテル明洞の 「無窮花(ムグンファ)」

          
注文しなくても並ぶ小鉢の数々は、無料の上におかわり自由

お国柄もお料理も、まるごと味わってこそ、心に残る旅になりますよね。


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お箸*6 中国のお箸とレンゲ

2016-03-12 | お箸の世界
 札幌で育った私にとって、ラーメン屋さんは物心ついた頃から身近なものでしたが、

円卓を囲むような中国料理のお店に入るようになったのは、社会人になってから。

羽田空港 旧ターミナル 3階の奥にあった「彩鳳(さいほう)」というお店でした。

今でも、国内線 第1旅客ターミナル地下1階のフードコートで食べられるようですし、

名物の「ジャンボ焼売」は、第2旅客ターミナル2階の出発ロビーでも購入できますが、

当時は大きな窓から の離着陸が一望できる、お味も眺めも良い中国料理店。

ランチタイムの喧騒が去った夕暮れ時には、落ち着いた雰囲気に包まれたものです。

 「彩鳳」で昼時の割り箸に代わって出されたのが、象牙色で太さがほぼ均一の長いお箸

その後、北京や上海、香港で本場の中国料理をいただく機会に恵まれましたが、

いずれも長いお箸を用いて大皿から自分の分を取り分ける、いわゆる「直箸(じかばし)」。

中国には「取り箸」に該当するお箸も、その習慣もなかったように記憶しています。

さらに自分のお箸で取ったお料理を、こちらの取り皿にまで入れてくださることがあり、

目上の方、立場が上の方からしていただくと、恐縮するやら、ありがたい・・・やら

これは親愛の情を表すもので、日本でいうところの「返盃」や「お流れ頂戴」でしょうか

お箸が長いのは、他の人のお皿まで手を伸ばす時に便利なためと思われます。

もっとも最近は、ご存知のように感染症が次々と流行しており、減少傾向にあるようです。


 中国料理でお箸と一緒に使うのは 「レンゲ」。

散った蓮華の花びらに形が似ているため、「散蓮華」とも呼ばれています。

持ち方は洋食のスプーンとは違い、柄のくぼみに人差し指を沿わせて、親指と中指で支えます


     
     奥は中国のレンゲ 日本の物より少し小さめです。
     手前は日本のレンゲ  の中に滑り落ちないよう工夫されています。


 ご飯、麺類、おかずには お箸を用い、柔らかいお料理や汁物はレンゲでいただきます。

大皿に盛った炒飯を皆で取り分ける際には、お皿ではなくお茶碗に入れますが、

パラパラしたご飯ですので、お茶碗に口をつけてかき込むような食べ方をします。

お茶漬けさらさらのイメージと言えば、日本と似ているように思えますが、

手で持ち上げても構わない器は、お茶碗のみ。

取り皿が手のひらに載るサイズであっても、テーブルに置いたままいただきます。

この点が、日本とは決定的に異なるマナーでしょう。

お国柄によって、似てもいれば違いもある。 そんな器と扱い方に興味を覚えます。


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秘書にゃんこ*水郷 佐原 いちご狩り

2016-03-08 | おでかけ
 「狩り」 とは、本来は動物を追って捕まえる 「ハンティング」 という意味ですが、

いつしか 「さくらんぼ狩り」 「きのこ狩り」 「紅葉狩り」 のように、

を採ったり、 を愛でながら散策したりする時に使われるようになりました。

四季折々の自然に恵まれた日本では 「狩り」 の機会が多くありますが、春先といえばこちら。

暖かい風に誘われて、秘書にゃんこは生まれて初めての 「いちご狩り」 を楽しみました


 先日、千葉県の「小見川(おみがわ)」という町で接遇マナーの講義を終えた後、

車窓に広がるのどかな景色を眺めながら、途中駅の 「佐原(さわら)」で下車しました。


     
     香取市 小見川は千葉県の北部に位置し、茨城県との県境に在ります。


     
     JR 佐原駅の情緒ある駅舎は、タイムトラベルの出入り口。
     


 佐原といえば、江戸の風情を今に残す町。

去年、「小江戸 佐原 雛めぐり」 に訪れたのも今頃の時期でしたが、

今回は、古い町並みとは鉄道を挟んで反対側にある、水郷方面へと向かいました。


     
     アドバルーンを見たのは何十年ぶりでしょう しかも の形
     


     
     平日の昼下がりということもあり、他にお客様はなく貸切り状態  
     

 甘くてやわらかい 「章姫(あきひめ)」  香りがよく上品な甘味と酸味の 「紅ほっぺ」

ご覧の通り上下二段に が生っていますので、お子様や車椅子の方も楽しめるそうです


     
     いちご色のドレスで を抱える秘書にゃんこ


 白い花びらの中心にある黄色い部分が、青くなった後で白くなり、やがて真っ赤な になりますが、

私たちが味わっている赤い部分は 「果実」 ではなく、種に見える粒々こそが 「果実」 だそうです。

だけでおなかいっぱいになった秘書にゃんこ・・・果実にすると、いくつ食べたことになるのでしょう

それなのに、パックにお行儀よく並んだ や、おめかししてショーケースで微笑む を見ると、

ついつい微笑み返してしまう春の日です


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お箸*5 箸に始まり、箸に終わる。

2016-03-05 | お箸の世界
 「お箸」と聞けば、お食事のときに使う 「手元箸」 を思い浮かべますが、

日本には、他にも「箸」と名の付くものがあります。


 まずは 「菜箸」

鍋やフライパンに入れた材料を混ぜたり、器に盛り付けたりする際に使います。

手元箸に比べて長さが約2倍もある理由は、

熱湯や油、火でヤケドをしないように、少し離れることで を守るためと、

立った姿勢で器に盛り付ける時に、長い方が便利であるためと思われます。

「箸づかい」を学ぶ場で、小さなお豆さんをお皿に移すゲームのような訓練があります。

たしかに箸先での細かい作業も必要ですが、大きな材料を持つためにお箸を開くことが出来、

重さのある材料を持ち上げた時に箸先まで力が伝わるという、安定した持ち方も大切です。

最近の菜箸は箸先に何本も溝が入っていて、食べ物が滑り落ちにくいよう加工されていますが、

長い菜箸を使いこなすためには、正しい持ち方が必須です。


 次に 「火箸」

暮らしの中に囲炉裏や火鉢があり、薪や炭が必需品であった時代、火箸はどこの家にもありました。

いまでは茶道でお湯を沸かす際、炭を組むために使う場面くらいしか思い出せないのですが、

炭が弾ける音を聞きながら、古民家の炉端でお食事をしてみたい私は「旅の宿」世代です


 そして 「取り箸」

皆でお鍋を囲む時、自分用のお箸を使う「直箸(じかばし)」を気にする人が多くいます。

それならばと、自分のお箸を上下持ち替えて使う人もいますが、

衛生面では、 で触った部分をお鍋に入れる「逆さ箸(さかさばし)」の方が でしょうか。

私の場合、「直箸」は相手によって不快だったり、平気だったり、嬉しかったり

相手との心の親疎を垣間見る瞬間でもあります。

誰かがお鍋をかき混ぜてしまう前に、お店の方に取り箸か、せめて割り箸を頼みたいものです。

皆が見ている前で取り箸を扱う時、箸づかいが美しい人は素敵です



 生後百日に祝う「お食い初め」に始まり、日々の生活でさまざまな役割を果たしてくれるお箸たち。

そして最期の時のお骨上げまで、お箸は私たちの人生に寄り添ってくれているのですね。


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