日々の暮らし*『ランチ酒』(著者:原田 ひ香)

2022-08-27 | 本が好き
 人々が眠りに就く時間に夜通し働く女性が、今日お薦めする『ランチ酒』の主人公です。

三十路で離婚して住む家も仕事もないため、婚家に置いてきた娘を引き取ることもできず、

同級生の伝手でようやく得た仕事が「見守り屋」。

眠る人や眠らない人を、そのお客様の家でただひたすら眠らずに見守るのが彼女の役目です。

ある時は、徹夜仕事の息子から、認知症の母が心配なので見ていてほしいと依頼されて話し相手になったり、

またある時は、失敗談を延々と語る女性や、アイドルが好きで自慢話だらけの男性の聞き役に徹したり。

産後まもなく夜の仕事に復帰した若いママから赤ちゃんを預かることもあれば、

時には飼い主の留守宅でペットを見守ることもあります。

 そんな彼女が仕事を終えて食事をしながらお酒を呑むことから、タイトルは『ランチ酒』

世間はランチタイムでも、夜勤明けで帰宅したら眠る彼女にとっては「寝酒」の意味合いがあります。

店名は明かしていないものの、ちょっと検索すればヒットしそうな実在するお店がズラリ。

どのお店のどのお料理が美味しくてどんなお酒が絶妙に合うかが、シリーズ3作で紹介されています。

もしお読みになるのでしたら、
 ランチ酒(表紙は焼き魚定食)
 ランチ酒 おかわり日和(ハンバーグ)
 ランチ酒 今日もまんぷく(餃子と麻婆豆腐)
の順が、話の流れがつかみやすいと思います。


主人公と娘の会話に出てきたシュークリームの、秘書にゃんこサイズ


 「見守り屋」は架空の職業でしょうが、大都会だからこそ成り立つのかもと妙に納得したり、

深夜だからこそ、他人だからこそ、人は心の内側を語れるのかも知れないと思ったり。。

一方、私生活においては、娘の成長、元夫の再婚、新しい妻との関係、心ときめく相手の出現など、

彼女を取り巻く環境や心持ちの変化が女性作家ならではの視点で描かれ、どんどん読み進められます。

ただし、夜読みますと、おなかが空いて冷蔵庫に手が伸びますので、お気をつけくださいませ


お読みくださいましてありがとうございました。
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日々の暮らし*『おあげさん』(著者:平松 洋子)

2022-08-22 | 本が好き
 頭に「お」を付けて、馴染みやすい食べ物とそうでないものってありますよね。

たとえば野菜でしたら「お大根」や「お茄子」は「お」を付けても違和感がありませんが、

同じ売り場に並んでいるのに、いつもお世話になっているのに、なぜか「お人参」「お胡瓜」とは言わず、

同じネギでも「お葱」と言うのに「お玉葱」とは言いません。

「お」が馴染みやすいかどうか、どんな由来があるか気になるところです。

そして「さん」が似合うお料理。

「お」が付いて「さん」が付けば、美化語というより、もはや気持ちは尊敬語

その代表格が「お豆さん」「お粥さん」「おいなりさん」、そして今日の本のタイトル『おあげさん』。

(もしかすると、私が育った家だけかも知れませんが・・・)



著者は、岡山県出身の平松洋子さん
236ページすべてが「おあげさん 」で溢れていて、
読み終えたら間違いなく「おいなりさん」や「きつねうどん」が食べたくなります


 昔、仕事で宮崎を訪れたときのこと

宮崎が新婚旅行のメッカで、淡い色のスーツに身を包んだ初々しい若奥様の手には

旦那様は を首から掛けて大淀川でボートを漕いでいる、そんな時代でした

先輩に、川沿いにある重乃井(しげのい)という釜揚げうどんのお店に連れて行ってもらったところ、

おうどんが茹で上がるまでの時間にいただいたおいなりさんの形が三角形だったのに驚きました。

巨人軍がキャンプの際に立ち寄るそうで、壁には王選手や長嶋選手の写真が所狭しと飾ってありましたっけ。

『おあげさん』を読み終え、遠い日の宮崎を思い出して、三角形のおいなりさんも拵えてみました


お読みくださいましてありがとうございました。
京都 俵屋吉富 の 水灯り で ゆく夏を惜しむ秘書にゃんこに
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秘書にゃんこ*高橋真琴米寿記念展 ~ 森の風鈴小径

2022-08-17 | おでかけ
 久しぶりに日本橋に参りました。


「日本橋」の文字は、第15代将軍 徳川慶喜公の揮毫。



日本橋三越本店 1階ロビー
昭和から平成になって少し経った頃、この場所で藤山一郎さんの指揮により「青い山脈」が演奏され、
大勢の買い物客が、吹き抜けの各階から唱和しました。
たまたま居合わせた私も、去りゆく昭和に感謝しつつ新しい時代を迎えたものです。


 少女漫画家 高橋真琴さんが米寿を迎える今年、各地で記念展が開催されています。
(2月 池袋東武終了 7月 日本橋三越終了 10月 名古屋松坂屋 12月 大丸心斎橋店)

案内状を頂き、比較的涼しかった7月の平日に秘書にゃんことお出かけ。


デパートも会場も人が少なく、ゆっくり観て廻りました。



「女の子はみんなお姫さま」
88歳におなりの今も、美少女の世界を追求



小学生の頃、もしもこんな筆箱を持っていたら、きっとクラスの人気者


 日本橋三越から歩いてすぐの福徳神社の隣には「森の風鈴小径」


風が吹くと、一斉に歌うような風鈴たちの音色



2022年7月8日(金) ~ 9月4日(日)


お読みくださいましてありがとうございます。
三越や風鈴小径から程近い 京都おばんざいのお店 に、
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日々の暮らし*『砂の器』(著者:松本 清張)

2022-08-12 | 本が好き
 言わずと知れた不朽の名作は、昭和35年5月から1年間、読売新聞の夕刊に掲載されました。

その後、映画化1回、テレビに至っては7回もドラマ化されましたので、ご覧になった方も多いことでしょう。





 原作と映画やテレビとでは、ストーリーや登場人物が異なる場合が多々ありますので、

清張作品に触れるとき、私はまず原作を読みます。

読み終えたら『地図で読む松本清張』でおさらい。

国鉄や都電(かつて都内を網羅していた路面電車)の路線図を見ながら犯人や刑事の足跡を辿り、

時代背景や、現代とは異なる価値観などの説明を読みます。

そして最後に、もし図書館に所蔵があれば を借りてきて映画鑑賞。

『砂の器』の場合、上下巻で1000ページほどの原作を2時間にまとめたので、内容がだいぶ変わっています。

原作のラストシーンが羽田空港の国際線ロビーだったため、当時の映像が観られるかと期待していたのですが、

残念ながら、映画では全く別の場所でした。



1974年(昭和49年)公開の作品
国電蒲田駅操車場内で発生した事件が、やがて連続殺人事件へとつながります。



警視庁警部補役 丹波哲郎さんと、西蒲田署の巡査役 森田健作さん。
両刑事が捜査で訪ねた東北地方の駅前食堂。
森田さんがやがて政治家になるなど想像もしなかった頃、
『おれは男だ!』の面影が残る若手刑事を演じていらっしゃいました。



1931年(昭和6年)から1977年(昭和52年)まで使用された、建て替え前の警視庁 旧本部庁舎。



1980年(昭和55年)、同じ場所に現本部庁舎が竣工。
建物だけでなく、交通量がずいぶん違いますね。



映画で一瞬映った場面。
話の流れからすると、おそらく大阪駅ではないかと思いますが、どなたかご存知でしょうか?

 
 夜行列車に一昼夜揺られ、靴をすり減らして目撃者を探し、アリバイ崩しに奔走する刑事。

手軽にコピーも録音も出来なかった時代、書類も証言も現場の状況も、漏らすまいと手帳に書き写す刑事。

不便であればあるほど、知恵が働き、工夫をし、観察力や文章力が鍛えられるのだと、

こちらまでヘトヘトになりながら、読み終えると「次」が読みたくなってしまうのです


お読みくださいましてありがとうございます。
映画の一場面から 昭和の蒲田駅ビル 西館
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日々の暮らし*『コスメの王様』(著者:高殿 円)

2022-08-07 | 本が好き
 今日お薦めする本は、かつて「フルベール化粧品」と呼ばれていた「クラブコスメチックス」の物語。

明治・大正・昭和を生き抜いた創業者の一代記は、連載小説として産経新聞に掲載された後に書籍化。

私が知る頃には評判も高く、案の定、図書館では十数人待ちの人気でした。



「双美人」のイラストに見覚えある方もおいででしょう


 郷里の家族を支えるため働きに出た少年と、同じく貧しい家庭から売られてきた少女が出会った神戸の花街。

幾多の困難に見舞われ、信じていた人に裏切られながらも、真心で商売に取り組んで成功した少年 利一。

花街で随一の売れっ子の芸妓 花千代となった少女 ハナ。

惹かれ合う二人を待ち受けていた運命は・・・。

年老いた二人のほっこりとしたラストシーンに、穏やかな気持ちで本を閉じました


 時代に翻弄されながらも誠実に生きた二人。

主役は少年ですが、少女をメインにしても成り立ち、思わず応援したくなる清々しいストーリー。

朝の連ドラにならないかしら


お読みくださいましてありがとうございます。
上京するまで全国区だと思い込んでいた
北海道限定のリボンナポリン
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