プーチンは、ウクライナが強力なロシアの侵攻を屈辱を持って受け入れ、他の国々は大した関与は出来ないだろうとタカを括っていた。しかし、この深刻な誤算により、紛争は長期化し、終りが見えない状況となっている。
アメリカのベトナム戦争や旧ソ連のアフガン侵攻など、誤算が決定的となった過去の戦争はそうした流れでのみ終結した。つまり、誤算を犯した事により国の政治状況が変化し、撤退が唯一の現実的な選択肢となったのだ。
但しこれは、西側諸国がウクライナ支援を堅持した時だけ実現可能となる。が、やがて戦争の代償は様々な形で世界中の各国に深刻な悪影響を及ぼす事になろう。
英国BBCは、2023年のロシア=ウクライナ戦争で起きうる5つの展開を予想した。
アメリカの2人の専門家は”ウクライナが勝つ”と予測し、英国の2人とイスラエルの1人は”混沌とした状態が続く”と予想した。
不可解で不可能なミッション
プーチンのウクライナ侵攻は、明らかに不可解なミッションだが、不可能なミッションでもある。つまり、失敗しても(たとえ)成功したとしても、プーチンもロシアも破綻する。
これがロシア制作の映画なら、最後の最後でウクライナはロシア側の停戦条約を受け入れ、この旧ソ連時代は兄弟だった二国は和解し、プーチンはロシア史上最大の英雄になる。
一方で、ゼレンスキーは反逆罪で処刑され、その遺体はホワイトハウスの玄関先に贈りやられるであろうか。
だが、この(プーチンにとっては)出来過ぎたシナリオも、今となっては遠のくばかりで、ほぼ不可能となった。
(プーチンのハッタリ通り)たとえ核戦争になったとしても、世界中が第三次世界大戦に突入しようとも、ゼレンスキー及びウクライナは戦う事をやめないだろう。
つまり、”プーチンの侵略”という高く付きすぎた身代金は今やウクライナの手中にある。プーチンの誤算はゼレンスキーという男を見誤った事にある。
売れないコメディアンでアメリカの操り人形に過ぎないと低く見積られていたユダヤ人だったが、アベとは違った。つまり、ゼレンスキーという男は根っからの戦士だったのだろうか。
”ロシア=悪、欧米=善”という二項選択の浅薄な構図で世界は動いてはいない。そう、世界は(超大国が考える様な)絶対的ではなく、非常に曖昧で相対的である。
プーチンの過信とバイデンの過信はどちらがどれほど酷いのか?プーチンの盲信とメルケルの盲信はどちらがどれほど穏やかなのか?安倍の暴走と岸田の暴走はどちらが無謀でどちらが無策なのか?
結局、誰も答えを出せないのだろう。
ウクライナを欧米に奪われる事がロシアの滅亡と考えるプーチンの誇大妄想は、やがて狂気へと結びつき、核兵器使用による苦し紛れの勝算は破滅のミッションでもある。
事実、プーチンの勝算のシナリオは不可能どころか、今となっては泥沼の真っ只中である。民間人の大量殺戮や民間インフラの大量破壊にまで手を染め、ただでさえ不可解なミッションは不可能で手が付けられない奇怪なミッションに変わりつつある。
結局、プーチンのミッションが成功に終わろうが失敗に終わろうが、大量破壊という結果をもたらしただけの不可解なミッションでもある。
世の中は絶対的ではなく、相対的な基準軸で回っているのだから・・・
エネルギー戦略の成功と失墜
”エネルギーはロシアによって武器にされ、欧州だけでなく世界に悪影響を及ぼす”
今年11月、EUのミシェル大統領はG20の場でプーチンを非難した。というのもプーチンは、ヨーロッパに張り巡らされた天然ガスのパイプラインを使って、ドイツと深い関係を築き、更にヨーロッパにも大きな影響を与え、ウクライナを孤立させるに成功したかに思えた。
ロシアにとって欧州への石油と天然ガスの販売はずっと主な外貨調達源だった。そして、1999年末にエリツィンから大統領の座を引き継いだプーチンは、自国のエネルギー資源を(国有化し)戦略上の武器として、弱体化したロシアの国力を取り戻そうとした。事実、彼の単純明快なミッションは成功したかに思えた。
今回のウクライナを巡る欧米との全面対立でも、エネルギーを武器に外交を展開するプーチンは、”この戦争では何も失っていないし、むしろ得をしている。欧州がロシアから石油や天然ガスを買いたくないなら、中国やインドに主要顧客を切り替えるだけだ”と強気の姿勢を崩さない。
しかし、欧州がロシアに代わるエネルギーの調達先を見つけた場合、ロシアは相当大きな試練に直面するという試算もある。
つまり、27年までにEU諸国はロシア石油への依存を完全に断ち切る事が可能で、石油パイプラインとバルト海沿岸の港が深刻な打撃を受ける。更に、採掘の難しさなどに伴う生産コスト増という旧来の課題に、輸出先切り替えコストとタンカー需要の高まりという新たな逆風が加わる。
特に、液化天然ガスと石油精製の分野で、西側の技術が利用できなくなり、厳しい選択を迫られるという。
また、(ロシア全体の68%の原油を握る)プーチンの頼みの綱であるガスプロムも、いずれガス田の操業を停止するか、未利用ガスの燃焼処分が必要になるかもしれないと。
最後に〜ウクライナの春
以上は、ある種のシュミレーションに過ぎないが、現実問題としてEUのロシア離れは着実に進んではいて、ここ半年近くでロシアからの天然ガス輸入量は約4割ほど減少したとされる。
だが、EUの立ち位置が難しいのは、こうした天然ガスの”脱ロシア化”を進めてもロシアからの輸入も当面は継続しないと、ヨーロッパ経済が立ち行かない事にある。
それがEUにとっては泣き所であり、ロシアにとっては唯一の攻め所でもある。こうしたEUとロシアのせめぎ合いが続く中、来年のヨーロッパのガス価格も不安定となり、その影響は地球の裏側にも響きかねない。
一方で、ドイツの前メンケル首相の失墜は、天然ガスをロシアに依存し過ぎた事だとされる。段階を追って輸入先を分散する事で、ロシア依存による手痛い代償をある程度は防げた筈だ。故に、ロシア=ウクライナ戦争がなくとも、EUのロシア離れは起こり得たし、プーチンのエネルギー戦略もいつかは枯渇したであろうか。
つまり、プーチンのエネルギーを武器と見なす明快な戦略も、ウクライナを合併するという不可解なシナリオも、所詮は”インポッシブル”であったのだろう。
旧ソ連愛国主義のプーチンはウクライナをどんな視点で眺めてたのであろうか?憎しみか?融和か?寛容か?それとも逆襲か?
プーチンのシナリオが不可能なミッションとなりつつある今、狂気と憎しみだけが一人歩してる様にも思える。
結局、国家を窮地から救うのは、暴君でも狂気に塗れた独裁者でもなく、ましてや豊富な天然資源でもない。
どんな状況下に置かれても、ブレない知力と揺るぎない良心が必要なのだろう。
そういう意味では、ゼレンスキーの方がプーチンよりも一枚上手だったと言えるのかもしれないし、いや、(プーチンが繰り出すカードによっては)そうでないのかもしれない。
ただ、ロシアもウクライナも、いや誰しもがこの2月末に始まったプーチンの侵略戦争が12月になっても続いてるとは思ってもいなかっただろう。
そういう私も夏場には経済封鎖が功を奏し、誤算続きのロシアが失速し、休戦協定が結ばれるのではとタカを括ってた所がある。
春先のロシアが優勢の頃は、ウクライナに勝算は殆どないかの様にも思えた。ウクライナの春は幻となり、長い冬が訪れるかに思われた。
しかし、アメリカや英国やEUの支援を受け続けたウクライナは息を吹き返し、プーチンの誤算を決定づけたようにも思える。
ナポレオンもヒトラーもスターリンも冬が訪れても軍隊を動かし続けた。が、後退を余儀なくされたプーチンは軍隊を冬ごもりさせ、来春に新たな攻勢を仕掛けようとしている。
ウクライナがロシアの占領した全ての地域を奪還するという計画は過大過ぎるシナリオかもだが、(一部には)春先に奇襲を仕掛けるのではとの予想もある。
1968年の”プラハの春”は旧ソ連に潰されたが、2023年の”ウクライナの春”ではプーチンのロシアを潰せるのだろうか。
年が明けようとしてるのに、こういう事しか書けない私の心の中は冬のままなのだろうか・・・
遠い国と言っても、エネルギー問題などは、すぐ日本にも影響することですし…。
転象さんの言われる通り、この戦争はいろんな角度から見る必要があると思います。日本は西側の見方ですが、ロシアだけでなく、中国、北朝鮮、さらにはベトナムなど東南アジアの国々の見方も探る必要があると思います。東南アジアの国々も経済的に急成長していますから、以前の日本ではないことを為政者たちは勘案して動く必要があると思います。
それにしても、ゼレンスキーも思っていた以上に強かですね。
同じような状況になったとき、日本にゼレンスキーのように頑張れる政治家はいるでしょうか?
実は、こういう記事あんまり書きたくないんですよね。
戦争を知らない平和な世代が知ったかふりするなって説教されそうで・・・
でも、英国BBCはデフォルトな立場でウクライナ戦争を分析してる方だと思います。
どうしても日本はアメリカ寄りでウクライナ戦争を眺めるから、(私もそうですが)プーチンを狂人に仕立てますが・・・
正直、夏場過ぎには休戦協定くらいは結ばれるのかなと楽観視してましたが、来年も続きそうで、世界経済がどう衰弱するのか心配になってきました。
プーチンを吊るしあげるだけで戦争が終結するのか?他に主導者がいるのか?
いや、終戦後の復興費や戦後保証はどうなるのか?
全く考えたらキリがないですね。
言われる通り、ゼレンスキーは筋金入りのユダヤ人でした。EUの立場が微妙な中、何かある度にバイデンのお尻を叩き、うまく支援を引き出してます。
数学も難しいですが、ロシア=ウクライナ戦争の解決も難題の1つですね。
他国の政府に干渉する事が如何に最悪の事態をもたらすのか
世界中は思い知ったかもだ。
今回のウクライナ戦争はロシア版湾岸戦争とも言えるけど、プーチンは敢えてブッシュ親子が演じた世紀の大失態を繰り返そうとしている。
«ブッシュ親子が許されるのなら、オレがやってる事はずっと正当だろう»
ただ、プーチンもブッシュ同様に紛争を捏造し、支持率を煽るという禁じ手を使った。
勿論、旧ソ連の復活という明確な目標があったんだろうけど、結果が民間人や民間施設の大量殺戮じゃ悲し過ぎる。
アメリカとロシアが共に衰退化するシナリオも捨てきれなくなってきましたね。
言われる通り、プーチンの誤算はアメリカの誤算でもあり、殆ど同じことをアメリカもしてきましたから・・
中国も台湾問題で同じ事をやろうとすれば、これまた同じ様に最悪の誤算が待ってるでしょうか。
大国の野望と小国のプライド
こういうのはいつまでも対立し続けるんですかね。
コメント有難うございます。