緊急”辞退”宣言〜名誉ある五輪撤退は､日本の為にある

　東京都議選の結果を見ても､都民の民意はオリンピックの延期や中止にあるのは明らかで､それは国民の民意と全く同じである。
　そんな都民の怒りが政府を動かしたのかは不明だが､日本政府とIOCと東京都と組織委は8日､1都3県を一律無観客に決定した。

　｢コロナ渦を可視化する｣に寄せられたコメントにある様に､全42会場のうち34会場が無観客になり､チケット収入900億円の9割以上が消滅する事になる。
　これはIOCではなく政府や東京都や組織委の負担になり､昨年安倍元首相が言い放った”完全な形での開催”は一気に吹っ飛んだ訳だ。

　7/7の東京都は920人(7/8は896人)の新規感染を記録し､約2ヶ月ぶりに900人を超え､3回目の緊急事態宣言が有効に働かなかった事を決定づけた。
　これは､五輪選手団や関係者の入国時の水際対策が不十分であった事も大きな要員であろうか。

　同じく8日に､菅首相は東京都に対し4度目の緊急事態宣言を発令した。
　期間は来月22日までで､その流れで今月23日開幕の東京五輪の1都3県での無観客が決定した事になる。
　つまり､緊急事態宣言の中でそれも無観客の中で開会式を行うという､前代未聞の大会になった。

緊急”辞退”宣言

　尾身分科会会長の”空砲”により､五輪中止かも？の流れから一転し､無観客どころか上限を1万人とした政府案がそのまま素通りした。
　そして今､変異株再拡大により､その上限案が覆され､無観客に戻ってしまった。
　ここで一気に､無観客から五輪中止の線にまで引き戻して欲しいもんだ。

　専門家の試算によれば(少し聞き飽きた感もあるが)､今月末には新規感染者は5000人を超えるとされる。
　その大半は東京都だろうが､オリンピック開催により”東京変異株”なんてのが世界中に拡散したら､(最初からある筈のない)五輪開催の意義なんて､どこかへ吹っ飛びそうな勢いである。
　内閣支持率が急落し続ける菅首相も､ここら辺で大逆転のカードを切るべきである。
　その名もズバリ､｢緊急”辞退”宣言｣だ。

　勿論､利権に塗れたIOCは870億円もの違約金を払えとホザクだろう。NHKは660億円もの損害を被るかも知れない。
　当初は､5000億とか7500億で開催できる”コンパクト五輪”とか持て囃されたが､IOCは勿論､政治家や関連企業が群がったお陰で3兆円にまで膨張した。
　今や､政権やIOCの腐敗を死滅させるには､”撤退”宣言の切り札しかない。
　国民に勇気と感動を与えるのであれば､オリンピック開催から撤退し､国民を納得させるべきだ。
　オリンピックの腐りきった本質が暴かれてしまった今､コロナ渦でなくとも日本政府の”緊急撤退宣言”こそが､要請や要望ではなく､国民の絶対なる訴えである。

五輪貴族にNOと言えるのか？

　しかし､日本政府や組織委にはIOCという大き過ぎる壁がある。
　4度目の緊急事態宣言のお陰で､東京都民は更なる社会的制約を強いられる訳だが､こんな庶民の苦しい事情を殆ど理解せず､”不幸の祭典”を楽しみに来日するのが､IOC委員らの”五輪貴族”である。
　IOC関係者と家族は入国後､14日間の待機が免除され､その上､当日からコンビニや個室なら飲食店の利用も特例で認めらる。
　以下､｢ムチャ要求にNOと言えるのか｣から一部抜粋です。

　IOC委員は観客とは”別枠”で､無観客開催でも競技場で生観戦できる”例外”のてんこ盛り特権だ。
　彼らが宿泊するのは5つ星の高級ホテルで､費用は東京都が持つ事になってたが､1年延期により､彼らの宿泊料は全額”アチラ持ち”になった。
　ある競技団体の元幹部が言う。
　”今回､写真誌が狙ってるのは五輪貴族用のVIPラウンジ。批判が多く､五輪会場内での酒の販売や提供と持ち込みをも禁止した。橋本会長(組織委)はVIPラウンジも例外ではないと言ったが､J.コーツ調整委員長に象徴される様に､IOC幹部は特権意識が強い。<酒はNO>に黙って従いますかね”
　女性蔑視発言で辞任に追い込まれた組織委の森前会長が､”期間中は同じ人が毎晩パーティーばかりやってる”と､五輪貴族を批判していた事は記憶に新しい。

　”IOC幹部は､VIPラウンジで酒を飲み五輪を見るのが何より楽しみというのが殆どです。組織委は殆どIOCの言いなりで来た。
　例えば､開幕前に<選手村は酒の持ち込みOKだ！ラウンジにも酒を用意しろ！>と言われた時､<規則だからダメ>と､ピシャリとはねつけれるとは思えませんがね”(元幹部)
　いつになったら､国民の“マグマ”が噴き出すのか。
　以上､日刊ゲンダイからでした。

嘘だと言って”ジョー”

　そんな中､バイデン米大統領が五輪欠席を決めた。菅首相のラブコールは当然の如く不発に終わった。
　理由は明らかで､東京コロナへの警戒心だ。
　日本のワクチン完了者は人口の1割程度。接種が進む米国にすれば”危険な国”で､78歳の“後期高齢者”であるバイデンにすれば､”感染都市”東京へは行かない方がベターなのだ。

　バイデンは､菅首相との会談でも五輪開催に対し､”あらゆる公衆衛生対策をした上で支持する”と伝えていた。しかし哀しいかな空砲に終わったのは､”衛生対策”を軽視した菅が自ら撒いた種なのだ。
　五輪後の感染状況次第では菅政権の支持率が急落し､秋の衆院選には勝てないかもしれない。
　バイデンは､”ヨシは長くはもたない”とクールに既に分析してたのだ。
　そんな哀れな菅首相が､再びバイデンに会って”ジョー”と呼べる機会は多分ない。

　事実､G7会談でも各国首脳からは”支持”の賛同を得た形とはなったが､共同声明(全25頁､約14000語)で五輪に触れた箇所は､最終段落の3行足らずで僅かに30語のみ。
　つまり､”ヤりたいんだったら勝手にどうぞ”という､付け足し感がアリアリなのだ(日刊ゲンダイ)。

　全く､これじゃ世紀の祭典というより､堕落した風俗街である。
　感染した風俗嬢から､”ヤりたけりゃ勝手にヤれば”と言われれば､誰だって拒絶するだろう。
　今の東京オリンピックはそれと同じ状況である。よほどの”好き者”でない限り､東京という危険な惑星で羽根を伸ばそうという気にはなれない筈。
　勿論､IOCの五輪貴族はそんな状況でも､”オーイ酒！おーい女”って叫ぶだろう。
　全くバカと五輪貴族は叩いても治らん。

最後に再び､緊急”五輪辞退”宣言

　組織委は6日､新型コロナに今月感染した職員と業務委託者が東京･晴海の選手村に勤務するスタッフだと明らかにした。
　この2人とは別に新たに3人の感染も確認された。いずれも組織委の業務委託者で､入国後に事前合宿地に入った選手･関係者などを除き､五輪関係者の感染は計12人となった。

　13日に開村する選手村には最大で18000人を収容の21の宿泊棟が建つ。しかし､すでに陽性者が連日見つかっている状況を考えると､あっと言う間に選手村発熱外来がパンクする危険性が出てくるだろう。
　そうなれば､陽性者は選手村の外の医療機関に運ばれる訳で､クラスターが発生したら､医療崩壊の危機も・・・五輪選手村が”バイオハザード”マップにならないよう祈るばかりだ(日刊ゲンダイ)。

　個人的には菅首相は嫌いではない。少なくとも安倍よりかはずっとマシだ。
　菅には今､”五輪辞退”という起死回生の大逆転のカードを持っている。
　今ここで､そのカードを勇気を持って宣言すれば､”名誉ある撤退”として､日本だけでなく世界からも称賛されるだろうか。
　スガの内閣支持率は急浮上し､”カネや脅しに弱いアベとは違う”イメージで､最後の最後で汚名返上のキッカケとなるかもだ。
　もちろん現実には､そんな美学が存在しないのは百も承知だが､五輪憲章の美学に比べればずっと尊いであろう。

　しかし､身内を裏切るというのは､どの世界でもどんな歴史でも当然の様に起こり得る。
　たとえ秋の総選挙で､”反日で裏切り者”のスガだけが失脚し､自民が大勝するかもしれない。しかし五輪開催で､沈没する船に乗ったまま自死するという､最悪のケースよりかは少なくともマシだろう。
　どうせ捨てられる運命なら､国民から世界から称賛され､そして政界から切り捨て去られた方がマシだろう。

　僅か3兆円で､腐敗した政府やIOC､それにハイエナの様に利権に群がる関連団体や役員らを浄化させる事が出来れば､これ程”お安い”？買い物もないだろうか。
　五輪辞退で､脆弱な医療体制を再編し､変異株再感染を撲滅出来たら､それに五輪に群がるハイエナ共を壊滅出来れば､それだけでも快挙である。
　勿論､オリンピックそのものがIOCと共に死滅してくれれば､個人的にはもっと嬉しいが。
　しかし､菅にそんな度胸も勇気も知力もないのは明白だ。

　人はいつかは死ぬ。
　だったら､最後の最後で花を咲かせようというのが人情である。
　孤独な老人の”捨てられし運命”なら､五輪開催を捨て去る事で､残りの”捨てられし人生”を生き抜いた方が､サムライの美学に相応しいのではないか。
　そう思うのは私だけだろうか？