私は、洋服というものを殆ど買わない。というよりアパレルを見下す所がある。お陰で、ここ10年間で買った布製品は、作業ズボンと速乾Tシャツくらいだろうか。
しかし、破れたズボンで外出という訳にもいかず、古着屋で綿パン2本とポロシャツ1枚を買った。
古着と言っても、より新品に近く、生地も裁縫もしっかりしていた。計900円(=300×3)が高いか安いかは判らない。
単なる布と思えば高すぎるが、アパレル商品と思えば安いのか。
コールガールと同じで、単なる”肉”とみなせば1万円は高価だし、”ファンタジーを売る女体”とみなせば手頃な値段かもしれない。
バブル末期には”DCブランド”というのが大流行した。猫も杓子もファッション雑誌に出てくる様な”布”をまとい、まるで天下を取った様な気分で街を歩いていた。
因みに、”DC”とはデザイナーズ&キャラクターズの略で、1980年代に日本国内で広く社会的なブームとなった日本の衣服メーカーブランドの総称です。
コロナ休業で、夜の娯楽産業や外食産業を始め、多くの産業が打撃を受けている。そんな中、アパレル産業の将来も非常に危い。
コロナ渦のお陰で、大量の衣料在庫が行き場を失い、営業を再開しても客足の戻りも鈍く、多くのアパレル企業が”資金繰り”に窮する事態とされる。
これほどのダメージとなった背景には、バブル崩壊後のアパレル業界が慢性的に直面する”過剰在庫問題”が横たわってるという。
以下、「アパレル”大量の売れ残り”はどこへ消えるのか」から一部抜粋です。
もはや、売れ残りは当り前
2019年は98%を占める輸入品と僅か2%の国内生産品を合わせ、28億4600万点のアパレル商品が供給されたが、国内の総消費数量は、13億7300万点と48.2%に留まった。
一方1990年には、11億9600万点が供給され、11億5400万点が購入された。つまり、96.5%が消化され、売れ残りは僅か3.5%(4200万点)に過ぎない。
それに当時は、国内生産品が52.1%と過半を占めてたが、バブル崩壊以降、衣料品の購入単価も92年をピークに下がり続け、リーマンショック後の2010年には、92年の64.2%にまで落ちた(2019年は66.8%)。
高コストな国内生産から低コストな中国生産へのシフトが進み、91年には早くも輸入浸透率が52.1%と過半を超え、00年には86.4%に達し、国内の衣料産地はほぼ壊滅。
近年は、中国から南アジアへの生産地シフトが進み、2019年の輸入浸透率は98%にまで達した。
低コストの海外シフトは生産ロットを拡大させ、00年には23億500万点と20億点の大台を超えたが、消費数量は12億5300万点に留まり、消化率は54.3%に急落する。
以降、供給量は増え続けるも消費数量は伸びず、2015年以降は過半が売れ残る異常事態が定着した。
1990年から2019年まで消費数量は19%しか伸びてないが、供給数量は138%(2.38倍)も増えたのだから、当然の結果ではある。
売れ残りは何処へいった?
どうして、そんな”無茶”が続けられたのか?
まず、値引きロスや売れ残りが増えた分、利益の確保の為に生産原価率を切り下げたのは間違いない。
SPA(製造小売)業界で7掛け弱、百貨店では半分近く切り下げたから、”お買い得感”が損なわれ、益々売れ残るという泥沼に陥った。
因みに、建設業の生産原価率が87.67%、金属製品製造業が79.36%、紙加工品業が78.85%と、アパレル業界はやや安い方ですね。
では売れ残った大量の在庫(19年は14億7300万点)はどこに行ったのか?
廃棄処分や中古衣料としての捨て値輸出は最終的な処分で、まず売れ残り在庫は持ち越して、来シーズンに販売される事が多い。
紳士服業界などは、セールを繰り返しても7割弱しか消化できず、来シーズンに持ち越して、新作と同時販売する業界慣習が定着してる。まるで”鰻のタレ”の様な笑えない話だが、事実だから仕方がない。
大躍進するワークマンも”定番品は10年継続”を謳い、EDLP(常時低価格販売)に徹し、売れ残りは延々と来年に持ち越すから、値引きロスは年間売上の1.2%に過ぎない。
しかし、何年も持ち越すと物的に損耗し、価値が落ちる一方で倉庫代が嵩むから、処分せざるを得ない。ベーシックな商品でもアパレルは3年でフィットが変わり、持ち越すのは3年が限界だ。
ファッション性の強い商品は持ち越しても、売れる見込みが薄いから早々に叩き売るしかない。
結局、売れ残りは雑巾へ(悲)?
アパレル業界が儲かってた頃は、ブランドイメージの毀損を恐れ、焼却処分する事も多かったが。今や資金繰りにも窮するアパレル業界は、少しでも資金を回収すべく2次流通業者(バッタ屋)に放出する。
その買取相場は、シーズン初期なら生産原価の半分程だが、セール時期にはその半分、持ち越すと更に半分になる。
今回のコロナ休業では、”バッタ屋”の買取り資金が追いつかない程、大量に放出されたから、相場は更に切り下がった。
この”バッタ屋”が引き取った在庫は、ブランド側の希望でタグや値札を切り取り、或いは来シーズンまで寝かせ、販路を海外やローカルに限定して再販される。
国内では、ディスカウントストアやホームセンターなどが主な再販先だが、最近はブランド再販専門店も台頭し、地方百貨店などが仕入れるケースも増えた。
しかし、どれだけ値引きされても未使用の”旧新品”扱いで、古物商免許を要する”中古品”とは異なる。
行き場がなくなった”旧新品”や傷んで転売が難しくなった”中古品”は、中古衣料として主にマレーシアなどのアジアに輸出され、多くはウエスや繊維原料として分別再生され、その価格は1kg僅か39.8円。
つまりブランドアパレルと言っても、結局は”キロ40円”の雑巾なんですな。
アパレルの在庫は何処に?
店舗に積まれてるのは在庫の一部で、国内の倉庫や海外生産地の倉庫にも大量の在庫が積まれている。
”無印良品”は、在庫の置き場所を開示してるが、2020年2月期は店舗に33%、倉庫に67%だが。実質は、日本国内向け在庫は店舗23.6%、国内倉庫47.9%、生産地倉庫28.5%という。
ユニクロは店舗に41.4%、国内倉庫に58.6%で配備してたとされるが、実質は店舗29.6%、国内倉庫41.9%、生産地倉庫28.5%と。
大量生産した在庫は、コストが格段に安い生産地倉庫に保管する傾向にある。
無印良品は生産子会社に、ユニクロは商社に生産地在庫を抱えさせてる。中小のSPAやアパレルメーカーは専門商社やOEM業者にその役割を担わせ、コロナ危機では大量の未引き取りが発生した。
そんな未引き取り商品は来シーズン、素知らぬ顔で新作品として店舗やEC(ネットショップ)に投入されるだろう。
故に、これら生産地に抱えた在庫まで含めると、国内需要の遥か倍以上の数量が国内向けに生産されてるのが実情で、過剰在庫は生産地からドミノ倒しに積み上がり、超法規的又は超自然的カタルシスによるしか、その解消は不可能とされた。
そして、そこに起きたコロナ危機という大厄災が、偶然にもこの情況を一掃するかもしれないのだ。
もはや”正価”など有名無実
コロナ休業で2ヶ月近く売上が激減し、多くのアパレル企業が行き場を失った在庫の換金を急ぐ中、営業再開と同時にセールに入るブランドも多い。
休業期間中もECでは5割引どころか7割引も珍しくなく、もはや業界は正価販売を掲げる所ではなくなってる。
これまでイメージに拘り、セール時期を遅らせ、二次流通業者への放出も拒否してきたブランドも、セールを早め2次流通に大量放出してるから、もはや”正価”販売という建前は風前の灯と化している。
コロナ危機を契機に、アパレル業界の過剰供給が多少は是正されるにしても、長年の過剰供給で流通在庫も消費者のタンス在庫も積み上がり、新規商品は流通在庫や中古品という自ら作り出した”ゾンビ”たちと価値と価格を張り合わねばならない。
格段に割安なゾンビ商品が溢れる中、”正価”など有名無実と化すのだろうか。
以上、現代ビジネスからでした。
最後に〜”ゾンビ”アパレルの復活
アパレルブランドをこよなく愛する知人がいた。
”たかが布に、何故大金を払うのか?”私には全く理解できなかった。
知人は、”布”ではなく単なるブランドイメージという幻想にお金を払ってたのだ。
でもそういう事を言うと、知人は途端に不機嫌になった。
かつて、大金を投じて購入したブランドがバルブ崩壊後、単なる”布”に風化した現実を考えると、満更外れてはいない。
しかし今やその布が、”ゾンビ”アパレルとなり、復活しつつある。
但し、現実を見直すという点では、アパレルをブランドというよりゾンビとして捉える方が商売としてもずっと上手く行くのではないか。そう思うのは私だけだろうか?
いや、この傾向は夜の商売でも当てはまりそうだ。
つまり、”ゾンビ”はコロナ危機を味方につけ、夜の街に巣を繁殖する。そこには正規な価格など存在しない。
あるのは、汚水を飲んでも生き延びろうとする”腐った水商売”だけだろうか。
そんな中、ユニクロの柳井会長は、京都大学の本庶氏と山中氏(共にノーベル賞受賞)が取り組む研究に対し、10年間で総額100億円の寄付をする旨を発表した(6/24)。
”研究とビジネスは似てて、我々は世の中をよくしたいという思いは変わらない。この人は成果を上げられるというのは大体直感でわかる。微力ながら援助させて頂いた”
全く、綺麗事なコメントだが。100億投資するくらいなら、最前線の現場で働くブラックな待遇の従業員達に、その1/10でも分け与えようという気はサラサラない。
著名人や有名人を支えようという意識はあっても、本当に困ってる現場を助けようという意識は毛頭ない。
ユニクロも典型の”ブラック企業”だと言われるが、国内の製造業の殆どもブラックだろう。
このままで行けば、日本の製造業はブラックからゾンビへと変異し、従業員の致死率も高くなるのだろうか?
原価300円の品を2万・3万で売るビジネススキームは成り立たなくなっている。
コロナで外出を控えていますし、「部屋着で十分」という意識が定着しつつある感じですね。
私の世代はバブル末期のブランド服全盛でした。でも、ここまで激変するとは思ってませんでした。
うちのお袋もアパレルの現場で働いてた事ががありましたが、奴隷そのものでした。
そういう私も今や作業着か部屋着で十分ですね。
コメントありがとうございます。
よく見る光景が昔に流行ったブランド品で確かに私も何点か所有してましたが今では恥ずかしく着る事が出来ません
昔の栄光にしがみつくその光景はプライドを捨てきれない切れやすい高齢者に繋がるのでしょうね
私の今の憧れはホームレスファッションです^ - ^
着飾る事無く生活する為だけの実質エコファッションですね
雑巾みたいなジーンズやナイロンのペラペラなブラウスがウン万もしたり・・・
それだけ団塊の世代の方達も若い頃は奴隷みたいに必死に働いた証拠でしょうが。
私の理想の服装はメキシコのポンチョです。
家にいる時も恥ずかしくない格好をと思ってた情けない時期があります。
今日の記事は過去の無能で無知な私を戒める為に書いたようなもんです。
でも女性がお洒落するのは当然の事ですよ。