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冬の嵐、寒冷渦・極低気圧(ポーラーロー)とは何か?

2010年01月02日 | 気象
科学大好き!アイラブサイエンス!このブログでは、最近気になる科学情報をやさしく解説!毎日5分、読むだけでみるみる科学がわかる!
 天気予報の当たる確率
 気象庁発表の天気予報の的中率は80%程度といわれる。現代科学をもってしても、未だに90%もいっていない理由の1つに、天気を立体的に捕らえにくいことがあげられる。テレビで見る天気図は、地上天気図であるが、これはあくまで地上付近の天気である。地上付近に低気圧があるか、高気圧があるかということが基準である。

 実際の天気はそう単純ではない。例えば低気圧1つをとってみても、温帯低気圧、熱帯低気圧、寒冷渦、極低気圧(ポーラーロー)などさまざまなものがあり、そのでき方も違う。これらの低気圧は立体的に考えないと十分に理解できない低気圧もある。

 温帯低気圧や熱帯低気圧では、まわりよりも温度が高いところに空気の上昇があり、それによって低気圧が発生し雲ができる、わかりやすい低気圧である。この場合、低気圧を縦に見ると、地上ではまわりより気圧が低くなるが、上空ではまわりより気圧が高くなる「高」「低」の二重構造になっている。

 寒冷渦・極低気圧の三重構造
 ところが寒冷渦、極低気圧(ポーラーロー)になるとできかたがまったくちがう。寒冷渦や極低気圧とは、天気予報でよく「上空に寒気を伴う低気圧」といういい方をする低気圧で、上空に寒気があってできる。なぜ上空に寒気があると低気圧ができるのだろう?

 北極圏やシベリアなどの寒気の一部が、ジェット気流の蛇行などで切り離されて日本付近にくることがある。それが日本海などの暖かい海面上にくると、上空の寒気は重いので下に下がろうとし、逆に海面付近の暖かい空気は上昇する。

 さらに、寒気の上の空気は寒気が下降気流になるので、逆に低圧となり、海面近くにできる上昇気流をさらに上部に引き上げるはたらきをする。こうして縦に見ると「低」「高」「低」の気圧の三重構造ができ、これが強烈な寒冷渦、極低気圧をつくり出し、時に台風並の低気圧に発達する。

 なお、寒冷渦と極低気圧(ポーラーロー)は同じ構造を持つ。比較的規模の小さいものを、極低気圧(ポーラーロー)というようだ。

 寒冷渦とは何か?
 寒冷渦は上空の寒気と低気圧の位置が一致した、順圧的構造(上の気圧が「高」下の気圧が「低」)を持っている。

 空気は冷たいほど重く、気圧はその空気の積み重なった重さの結果であるので、寒冷渦は上空に行くほど周囲に比べて気圧が低くなっている。そのため、寒冷渦は地上では低気圧が明瞭でなくても、500hPa面などの高層では低気圧になる高層の低気圧である。

 寒冷渦を立体的に見ると、寒気の上空の大気は気温が高く密度が低いため、気圧は周囲よりも低くなる。一方、寒気自体は温度が低いため、密度は大きく重いたく、地上付近では気圧が高く低気圧は明瞭でなくなる。

 寒冷渦では、上空に寒気が入り込むため、大気が不安定になる。この際に、下層が日射によって強く加熱されたり、下層に湿潤な大気の流入があると一層大気は不安定化する。大気が不安定化すると、対流活動が活発になり、積乱雲などの対流雲が発達する。

 よって、寒冷渦の周辺では、積乱雲等による気象現象である、降雹、短時間強雨、落雷、突風などの激しい現象が起こる可能性が高くなる。一般に、低気圧に向かって南からの温暖湿潤な空気の流れ込みやすい寒冷渦の南東側で、大気の不安定が強く対流活動が活発になり、スコールラインを形成することもしばしばある。

 また、高層天気図からわかるように、寒冷渦の中心はジェット気流の弱い領域に位置している。そのため、寒冷渦は動きが遅く日本を通過するのに2~3日ほどかかる。 (参考 小倉 義光著「一般気象学」)

 

一般気象学
小倉 義光
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