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ミトコンドリアDNAで、ウナギの産卵大回遊の謎が解けた!

2010年01月13日 | 動物
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 夏バテによい食材
 ウナギは高タンパクで、脂肪が多く含まれていながら消化にもよく、ビタミンAも豊富に含まれている。コラーゲンも多く、これは血管を柔軟にするなど生活習慣病予防にも役立つ成分になる。

 また、ウナギにはビタミンEが豊富に含まれている。ビタミンEは、若返りのビタミンともいわれ、抗酸化作用があるため、細胞の老化を防ぐ作用があり、若さを保つために働く。

 夏バテを防ぐためにウナギを食べる習慣は、日本では大変古く、万葉集にまでその痕跡をさかのぼる。人気のある食材であるが、生物としては謎の多い生物である。


 謎の多いウナギ
 紀元前の古代ギリシャ時代、アリストテレスはウナギの成魚を詳細に観察したにもかかわらず、その体内に卵や生殖器を見つけることができなかった。そこで彼は、ウナギが雌雄の生殖の結果として生まれるのではなく、泥の中から生じるのではないかと推論した。これが、有名な自然発生説である。

 その後、ウナギは、成長の過程で河を上るときはオスになり、河を下るときにメスになる、雌雄同体の生物だったことがわかった。

 レプトセファルスと呼ばれる仔魚がウナギのものだとわかったのは、18〜19世紀に入ってからのこと。20世紀初頭になり、デンマークのヨハネス・シュミット博士は北アメリカ大陸東岸に分布するアメリカウナギと、ヨーロッパや地中海沿岸に分布するヨーロッパウナギが共に北大西洋のサルガッソー海で産卵することを突き止めた(Schmidt 1923)。

 太平洋のニホンウナギの産卵場がマリアナ沖で発見されたのはそれからおよそ70年後の1991年。(Tsukamoto 1992)。そして昨年度に世界で初めて、ニホンウナギの雄の成熟個体が産卵場として想定された海域で採集された。(Chow et al. 2009)。

 2003年、ウナギの実験的な完全養殖に成功した。しかし、課題が多く、まだ量産には至っていない。また、鮭は卵を産むために河を上るのに、同じように河を上るウナギは卵は産まず、何千キロも離れたマリアナ沖の深海で産卵するのは、なぜなのか長い間謎であった。

 遡河回遊と降河回遊
 鮭は河を上って卵を産むのに、なぜ、ウナギは川を下って卵を産むのか?

 この問いに対しては、Gross らの説が有力。すなわち、「熱帯・亜熱帯では海より淡水の方が栄養(餌)が豊富で、ウナギはそれを成長に利用するために海から淡水域に回遊してくる(降河回遊)」というもの。(Gross et al. 1988)

 逆に、海の方が淡水より栄養豊富な亜寒帯や寒帯では、ウナギとは逆方向の回遊(遡河回遊)がサケのなかまで多く見られるため、Gross らの仮説は、このようなユニークな回遊行動の維持機構を、うまく説明するものとして知られている。

 しかし、これだけでは、なぜ、産卵場所をマリアナ諸島西方の深海にし、何千キロも旅をして、河を上るのか?という理由にはならない。

 ウナギの古里
 今回、東京大学海洋研究所の塚本勝巳・西田睦教授と千葉県立中央博物館の宮正樹上席研究員らの研究グループがロンドン大学の井上潤研究員らと共同で行なった詳細なDNAの遺伝子解析により、ウナギが外洋の深海に生息していた祖先から進化してきた可能性が高いことを明らかにした。

 この結果、ウナギの産卵大回遊は、餌が豊富な熱帯・亜熱帯の淡水域で十分に成長する一方で、遠い昔から慣れ親み安心して産卵のできる、しかも外敵が少ない、外洋の深海を利用するという、二つの異なる環境の特性を最大限に利用するために進化してきたものと考えられる。 

 DNA分析
 研究チームは、ニホンウナギを含むウナギ属19種に加え、アナゴ科、ウツボ科、ウミヘビ科なども含めた56種の標本を世界中から集め、細胞中に含まれるミトコンドリアのDNA全塩基配列を調べ上げた。

 この結果、これら56種は最終的には同じ祖先から枝分かれしてきたと見られるものの、ウナギ属は浅海や大陸棚に生息し外見も似ているアナゴ、ハモ、ウツボなどとは遺伝的には遠く、むしろシギウナギ、ノコバウナギ、フウセンウナギ、フクロウナギ、タンガクウナギ、ヤバネウナギなどの深海魚と近縁であることが分かった。

 これら深海魚は外洋の水深200-3,000メートルに生息している。ウナギという名がついているものの、巨大な口やくちばしのような顎(あご)を持つ体型から、これまでウナギ属とは全く遠い種と考えられていた。

 このことから、ウナギの祖先は元々深海で住んでいた可能性が高く、深海で住んでいた先祖が極端に餌の乏しい熱帯の外洋中・深層を見捨てて、餌が豊富な熱帯・亜熱帯の淡水域で成長し、しかし産卵だけは遠い昔から慣れ親しみ、しかも外敵が少ない安全な外洋の深海で行うという、生活史を獲得したと考えられる。

 

参考HP Wikipedia「ウナギ」・サイエンスポータル「ウナギの古里やはり深海
東京大学海洋研究所「
ウナギの進化的起源は深海に! 

ウナギの科学―解明された謎と驚異のバイタリティ
小沢 貴和,林 征一
恒星社厚生閣

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