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小惑星探査機「はやぶさ」奇跡の飛行!6月ついに地球帰還!

2010年01月21日 | 宇宙
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 サンプルリターン
 「はやぶさ」は、将来の太陽系の資源利用や天体との往復飛行に必要な技術を開発し、それが実際に使えることを実証する工学技術実験衛星。特に、天体表面からの試料を地球に持ち帰る「サンプルリターン技術」を目指している。

 そのための目的は主に5つある。第1は、イオンエンジンという新しい推進機関を使って惑星間を飛行すること。第2は、自分の判断でどこにいるかを知り、自分で近づいて行ったり、姿勢を変えたりするような自律航行。第3は小惑星の試料の採取。第4は、イオンエンジンを使った飛行に、地球の重力を利用した地球スウィングバイを併用して加速すること。そして最後が、試料を積んだカプセルを地球に持ち帰ること。小惑星からサンプルを持ち帰ることは史上初の試みで、成功すれば世界的快挙となる。

 こうして最新技術を結集し、2003年5月に打ち上げられた「はやぶさ」は、約20億kmを旅した後、2005年9月に小惑星イトカワに到着し、同年11月にイトカワへの着陸に成功した。

 ところが、その後の燃料漏れなどのトラブルで出発が延期されていた。「はやぶさ」が小惑星の試料採取に成功したかどうかは、カプセルが地球にもどってくるまで分からないが、「はやぶさ」プロジェクトチームは、試料採取に成功したことを信じ、サンプルを地球に持ち帰りたいという強い信念で探査機の復旧作業を行った。

 そして2007年4月、「はやぶさ」は地球に向けてイトカワを出発。あれから3年、奇跡の飛行を続け、帰還は今年、2010年6月に予定されている。これまで「はやぶさ」にどんな困難な歴史があったのだろうか?

 奇跡の飛行「はやぶさ」帰還へ
 打ち上げ直後、四台のイオンエンジンのうち一台が不安定になり停止。その後も三基の姿勢制御装置のうち二基が故障した。

 ようやくたどり着いたイトカワでは着陸後に補助エンジンで燃料漏れ。機体の姿勢が狂って通信が途絶えた。

 通信は約七週間後に復旧し「奇跡の復活」といわれたが、このトラブルのため2007年6月だった帰還予定は3年延びた。

 復路も無事には済まなかった。通信復活の後まもなく2台目のイオンエンジンが故障。昨年11月にさらに一台。使えるのは劣化した一台だけとなった。

 このピンチも、運用チームが万一に備えて設けていた回線が救った。エンジンは「イオン源」と「中和器」が同時に動くことが必要だ。故障したエンジン二台のなかで、無事だったイオン源と中和器を遠隔操作でつないだところ、一台分の推進力が得られた。

 エンジンはその後も順調に稼働。2010年1月14日現在、地球まで約5900万キロに近づいた。ただ、残る一基の姿勢制御装置はいつ不具合が出てもおかしくない状態で予断を許さない。

 「昨年11月に再び動いた時点で帰還は五分五分とみていた。今は六割と少し高まった」と、はやぶさプロジェクト責任者の川口淳一郎・宇宙機構教授。「動いているだけでも奇跡。何とか戻ってきてほしい」

 「サンプル」ごく微量でも可能性
 「わずかかもしれないが、小惑星イトカワに降り立った時に舞い上がった砂がカプセル内に入っているはず」

 試料の処理を担当する安部正真・宇宙航空研究開発機構准教授は模擬実験などから八~九割の確率で試料が採取できているとみる。

 小惑星は地球などの惑星が誕生したころの状態をほぼ保ち、岩石の分析から太陽系形成の謎に迫れると期待される。

 はやぶさは、イトカワへの着陸時に金属弾を発射し、飛び散った岩石片をカプセルに回収する計画だった。だが、装置がうまく働かず弾は撃ち出されなかった可能性が高い。

 採取できていても、ごく微量ということは十分考えられる。だが分析技術が向上し「一ミリグラムもあれば十分調べられる」(安部准教授)という。

 宇宙機構の相模原キャンパス(神奈川県相模原市)には昨年三月、五室のクリーンルームなどからなる「惑星物質試料受け入れ設備」が完成。分析を担当する大学などの研究グループに試料を「汚さず、なくさず、分配する」ための中継施設だ。十マイクロメートル(百分の一ミリ)角の粒子もつかめるマニピュレーターを備える。

 「ようやく私たちの出番。バトンをしっかり引き継ぎたい」と安部准教授。試料開封から初期分析までの予行演習をするなどして、はやぶさ到着を待つ。

 砂漠で「鍋」を探す
 試料が入ったカプセルは直径四十センチ、重さ十七キロ。強化プラスチック製で、ふた付きの中華鍋のような形だ。地球から約十万キロの地点で機体から分離されて秒速十二キロで大気圏に突入。高度十キロでパラシュートが開き、オーストラリアの砂漠に落下する。

 カプセルが出す電波を地上四カ所のアンテナでとらえて着地点を割り出し、回収チームがヘリで駆け付ける。機体本体はカプセルに続いて大気圏で燃え尽きて役目を終える。

 昨年末には鹿児島県で気球を飛ばし、着地点割り出しの練習をした。山田哲哉・宇宙機構准教授は「かなりの精度で着地点を割り出せた。回収に不安はない」と自信を見せる。
(東京新聞 2010年1月19日)

 世界初「イオンエンジン」搭載
 「はやぶさ」の電気推進エンジン(イオンエンジン)は、マイクロ波を使ってプラズマを作るのが大きな特徴である。イオン化した推進剤のキセノンガスを、強力な電場で加速、高速で噴射させることによって推進力を得る。

 燃料と酸化剤を燃焼させる化学推進エンジンと比べると、推進力は小さいが、非常に燃費がよく長時間加速し続けることができる。また、イオンエンジンの加速電極板に、耐久性にすぐれた炭素の複合材を使用し、従来に比べて3倍ほど寿命を長くした。このイオンエンジンの実用化に成功したのは、「はやぶさ」が世界で初めてである。

 イオンエンジンは新しいシステムなので、それぞれの部品をすべて自分たちの技術で作り上げるのが大変難しい。地球と小惑星の往復には何年もかかるから、14,000時間の宇宙作動耐久性を確保するのが、「はやぶさ」用のイオンエンジンを完成させるための条件であった。

 そのために、その時間を上回る作動時間を証明する必要があり、私たちは、18,000時間の耐久試験を2回行いました。1年間は365日で約9,000時間ですから、連続して2年かかるということになる。また、耐久試験は、エンジンを真空装置に入れ、コンピュータによる完全自動運転で行われたが、この自動運転システムを作るのも苦労した。

 当然、最初からうまくいくはずがなく、コンピュータのプログラムが間違っていると途中で装置が止まってしまった。途中で止まってしまっては耐久試験にならない。最初のうちは、いつコンピュータが止まるか分からないため、何ヶ月も研究室に泊り込んだこともある。日曜でも夜中でも関係なく、装置に何か異常が見られたら電話がかかってきて、あわてて研究室に飛んで行くことも何度かあった。お正月も夏休みもなしで連続試験を実施し、最初の耐久試験を終えたのは1999年のことであった。その時が大変嬉しかったのを覚えている。(出典:JAXA 田中 均)


参考HP JAXA「はやぶさ、地球への旅へ出発~最後のチャレンジ~」 

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