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NHK「巨大地震」で見る 阪神大震災とハイチ地震との共通点

2010年01月17日 | 地学
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 阪神淡路大地震から15年
 1995年1月17日、あの阪神・淡路大震災から15年が経った。そんな時に地球の裏側の国、ハイチ共和国を襲った巨大地震のニュースが被害の大きさを伝えてきた。1月12日の第一報では、地震の規模を示すマグニチュードがM7.0ということで、たしか阪神淡路大震災のM7.3より小さいので、失礼ながら、たいしたことはないかと思ってしまった。

 ところが、その後の報道で被害の実態が明らかになり、あのM9.3のスマトラ島沖大地震と同程度の20万人規模の死者を出す大災害となった。マグニチュードが1つ違うとエネルギーは約32倍も違うというのに、今回のハイチ地震の被害の大きさは何でだろう?そう疑問に思った人も多かったのではなかったろうか?

 実は今回のハイチ地震、あの阪神淡路大震災と同様に、活断層が起こした内陸直下型地震で、しかも震源が浅い、都市直下型地震。建物が多数崩壊、下敷きになった人も多数、死亡者が急増した。そう言えば2008年5月12日、中国で発生した四川大地震(M7.9)も同じタイプの地震で、あのときも、建物倒壊で大勢の人が下敷きになった。

 阪神大震災とハイチ地震の共通点 
 名古屋大学の山中佳子准教授は、国際的な観測網の地震計記録を基に断層が破壊した領域を推定し、カリブ海周辺で起きた過去の地震と比較。今回の震源域は、1751年~1770年に規模の大きな地震が数回発生した領域と、東西にほぼ一直線上に並んでいることがわかった。

 いずれも東西に延びる横ずれ断層の運動による地震とみられる。18世紀の地震後は大地震はなく、山中准教授は「再び活動期に入ったかもしれない。十分な警戒が必要だ」と指摘する。

 米地質調査所の解析によると、ハイチの地震は、断層の岩盤が左右にずれる「横ずれ型」で、阪神大震災と同じタイプ。震源の深さは約13キロで、阪神大震災(約15キロ)と同じく浅い直下地震だった。ともに岩盤がずれ動いた場所のすぐ近くに人口密集地があったため、被害が拡大したとみられる。(2010年1月15日  読売新聞)

 NHK「MEGAQUAKE 巨大地震」
 NHKの番組「MEGAQUAKE 巨大地震」を見ると、この他に地震の共通する部分が見えてきた。世界の地震学者たちは、阪神淡路大震災によって初めて、現代都市の地震に対する脆弱性を目の当たりにし、その惨状に強い衝撃を受けた。

 そして彼らは、もう一度、地球内部で起きていることを見つめ直すべく、綿密な観測を開始する。とくに日本では、震災後、高感度地震計などの緻密(ちみつ)な観測網が整備され、これまでわからなかった巨大地震のメカニズムや、その被害の実態が見えてきた。

 NHKスペシャル「MEGAQUAKE(メガクエイク) 巨大地震」は、そうした最新の地震研究の成果を、CGなどの映像技術を駆使してわかりやすく紹介するシリーズだ。NHKが主体となって制作し、アメリカのナショナル・ジオグラフィック・チャンネル・インターナショナルが参加する国際共同制作番組で、国際版は、166か国での放送が予定されている。

 プレート境界とアスペリティ 
 まず、地震のおおもとは何か?正解はナマズ...ではなくて、世界をおおう12枚のプレートという地盤の動きだ。日本列島とハイチ共和国のあるイスパニョーラ島のまわりのプレートを見てみよう。

 何と、日本列島もイスパニョーラ島も、プレートとプレートの境界に乗っている小さな島に過ぎない。この「プレート境界」近辺で地震が多く起きることがわかっている。

 地震が起きる場所の共通点はこれだけではない。最近の研究では、このような地震の起きるところには、「プレート境界」の中で、特に地震の起きやすい場所「地震の巣(アスペリティ)」のあることが発見されている。

 この「地震の巣」を最初に発見した人が、東北大学の松澤教授。1999年に地震予知の論文を発表。2001年までに三陸沖で大きな地震が発生する確率は99%と発表。2001年11月にM4.8の地震が発生し論文の予測どおりになった。

 なぜ、同じ場所「アスペリティ」で地震は起きるのか?調査してみると、アスペリティはプレート境界でも、特に滑りにくく、摩擦の大きい部分であった。ここに「ひずみ」がたまると地震が発生するしくみだ。

 この理論の正しいことが2001年と2004年に発生した地震で証明された。釜石沖以外にも1300のアスペリティを発見。すくなくとも数年後に発生するだろうといったレベルまで予知できるようにしたいという。  

 関東の地下にも地震の巣
 一昨年、産総研の遠田晋次主任研究員らは、関東地方周辺で1979~2004年に起きたマグニチュード(M)1以上の地震のデータ30万個で地下のプレート(板状の岩盤)の位置関係を調べた。

 その結果、陸側のプレートに、東から沈み込む太平洋プレートと南から沈み込むフィリピン海プレートに挟まれる形で、栃木県南部から神奈川県北部までの深さ40~100キロに新たな岩盤を確認。地震は、岩盤といずれかのプレートとの境界で集中して起きていた。

 地下を伝わる地震波の速さから岩盤と太平洋プレートの性質は同じと判明。岩盤は太平洋プレートの上面がはがれた断片と推定された。遠田主任研究員は、1855年のM7級の地震は岩盤と「プレートの境界」で起きたとみており「将来の首都直下地震もこの境界で起きる可能性が高い」と指摘している。(2008年10月6日03時18分  読売新聞)

 

参考HP NHKスペシャル「MEGAQUAKE 巨大地震」・産総研「首都圏直下に潜むプレートの断片と地震発生

地震発生と水―地球と水のダイナミクス

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地震の揺れを科学する―みえてきた強震動の姿
山中 浩明,岩田 知孝,佐藤 俊明,武村 雅之,香川 敬生
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2010年1月12日21時53分 ハイチ地震発生 建物損壊被害鮮明

2010年01月16日 | 地学
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 ハイチ地震被害鮮明
 2010年1月12日21時53分(現地時間 16時53分)にハイチ共和国で起こったマグニチュード(M)7.0の地震は時間がたつとともにその被害の大きさが明らかになってきた。

 16日現在、ハイチのビアンエメ内相は、既に5万人の遺体を収容しており、死者は20万人に達する可能性があるとの見方を示した。近年では22万人以上の死者・行方不明者を出した2004年12月のスマトラ沖地震による大津波被害に匹敵する大規模災害となる恐れが出てきた。

 国連の潘基文バン・キムン事務総長も同日、300万人が被災しており、100万人に緊急支援が必要だと述べた。また、国連の専門家の推計値として首都ポルトープランスを中心とする被災地域のおよそ半分の建物が損壊したとみられることを明らかにした。

「支援物資を送るのが思った以上に難しく、遅れているが、我々は可能な限り早く動かしている」また、現地では道路などの交通網が遮断されているところがあるため、空港に到着した支援物資を被災者の手元に届けることが非常に難しくなっているとし、かなりの被災者がまだ食料や水などを手にすることができていないと述べている。

 建物崩壊の原因は、コンクリートに入れる鉄筋がなかったり少なかったりで、耐震構造がもろいことにある。現在でも多くの人が建物の下敷きになっており、「生存の限界」とされる72時間を経過した。

 阪神大震災後の耐震性強化
 日本でも、1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災から、15年になろうとしている。そんな折りに起きた、カリブ海のハイチで大地震。15年前、24万棟の家屋が全半壊し、6400人に上る死者の8割は建物倒壊による圧死だった。せめてもの救いは、得られた教訓が国内の防災対策を前進させる力になったことだ。

 同じ年の12月には、耐震改修促進法が早速施行され、新耐震基準(1981年施行)を満たさない古い建物の診断や改修を進める機運が高まった。2006年には法改正され、病院や学校などの改修を加速させるため、自治体に耐震改修促進計画の策定を義務付けた。

 新潟県中越地震や岩手・宮城内陸地震、中国・四川大地震など国内外で大きな震災があるたび、備えの大切さが叫ばれ、耐震化は徐々に進んだ。

 しかし、決して十分ではない。厚生労働省の集計で病院の耐震化率の低さが明らかになった。全国8600の病院中、全建物が震度6強以上の地震に耐え得る基準を満たした施設は全体の56.2%だった。このうち、震災時の医療拠点となる災害拠点病院と救命救急センター(598施設)に限ると62.4%。10年度の目標値71.5%の達成は危うい。(河北新報 1月16日)

 ハイチの過酷な歴史・政変・災害
 中米ハイチを直撃した大地震は西半球最悪とされる貧困状態から抜けだそうともがく同国を、どん底に突き落とした。首都ポルトープランスでは、十四日も救助活動はなかなか進まず、路上には多くの死傷者が放置されたまま。衛生状況や治安の悪化は深刻で、復興の見通しは立っていない。

 19世紀初頭、中南米諸国で最初に独立を遂げたハイチは世界初の黒人共和国として脚光を浴びた。ところが、相次ぐクーデターや武力衝突で政情不安が常態化。20世紀半ば以降のデュバリエ父子による独裁政権では、約30年にわたる強権政治と腐敗により経済活動が停滞、インフラ整備も放置された。

 1990年に初の民主選挙が実施された後も政権は安定せず、2004年からは国連平和維持活動(PKO)の国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が駐留している。

 カリブ海に浮かぶハイチは山がちな地形で、かつては緑豊かな国だった。しかし、燃料用の違法伐採が横行し、現在では森林は国土のわずか2%に減少。丸裸になった山の急斜面にぜい弱な構造の住居が密集、大雨が降るたびに洪水や地滑りで甚大な被害が出る悪循環となっている。

 2004年のハリケーン「ジーン」では2000人以上が死亡。2008年にも、計4回のハリケーン被害で1000人以上が死亡した。

 一人当たりの国民総所得は560ドル(2007年)で、国民の7割以上が1日2ドル未満、半数以上が1ドル未満で暮らす。貧しい国民の多くが栄養失調にあり、2008年の食料危機では暴動が発生した。

 警察組織は貧弱で、誘拐や強盗などの凶悪犯罪がはびこる中、治安維持は国連に頼らざるを得ないが今回の地震で国連施設も崩壊。各国の支援が遅れれば、無政府状態に陥る恐れもある。(東京新聞 2010年1月15日)

 各国の支援
 米国は3500人の部隊、および300人の医療チームを派遣する。このうち第1陣は14日に現地入りした。米国防総省はまた、航空母艦と3隻の輸送艦艇を派遣する。

 オバマ米大統領は「米国はハイチとともにある。世界はハイチとともにある」と述べ、ハイチへの支援を約束した。

 大統領府やその他の政府機関の建物も倒壊。クリントン米国務長官はCNNに対し「地震発生前に存在した政府は、完全な状態で機能することはできなくなっている。米国は政府が再度機能し始められるよう支援する」と述べた。

 米国の他、中国や欧州各国も先遣隊や救助隊をハイチに派遣。その他の国や支援団体もテント、浄水装置、食料などを現地に送っている。ただ現地では道路や通信網なども大きく被害を受けているため、援助物資の配布も円滑に行えなていない。(中国新聞 1月16日)

 日本政府も14日、大地震に見舞われたハイチに復興費用として、500万ドル(約4億5900万円)の緊急支援を行うと発表。外務省の声明によると、政府は国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)や世界食糧計画(World Food Programme、WFP)などの国連各機関と協力し、早急に支援を実施する。

 また資金援助に加え、3000万円相当の緊急援助物資の供与も行うほか、医療分野でのニーズを把握するために調査チームを編成し、14日中にも現地に派遣する。(AFPBB news 1月14日) 

 

ハイチ目覚めたカリブの黒人共和国
佐藤 文則
凱風社

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連動して発生する巨大地震―“そのとき”は確実にやってくる (ニュートンムック)

ニュートンプレス

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過去最大級?「ベテルギウス」に超新星爆発の可能性

2010年01月15日 | 宇宙
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 スーパーノバ
 「超新星(suparnova)」というのは新星(nova)に由来するもので、新星とは、夜空に明るい星が突如輝き出し、まるで星が新しく生まれたように見えたのでこう呼ぶ。新星の原因にはいくつかある。

 1885年、アンドロメダ銀河中に、本来の新星よりはるかに明るく輝く星が現われ、それまで知られていた新星とは異なった明るいものが存在する事がわかった。これを「超新星」と呼び、supernova の語が生まれた。この超新星は「SN 1885」と名付けられている。「SN」は「超新星」を意味する "supernova" の略である。

 「超新星」の原因はなんだろうか?「超新星」は星がその終末を迎えるときの大爆発の輝きを意味する。現在まで、肉眼で見えた超新星は8つしかない。

 超新星の歴史 
 1572年11月11日にティコ・ブラーエは、カシオペア座に現れた超新星(SN 1572)を発見した。これをティコの超新星と呼ぶ。その時、この超新星は、金星よりも明るく輝いていた。この超新星爆発は、我々の銀河系内で起こり、最大光度は-4等級であった。その後1574年3月に、この星の輝きは、肉眼では見えなくなった。

 1604年10月17日、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーは、へびつかい座に現れた銀河系内の超新星(SN 1604)を見つけた。ケプラーが、この超新星を詳しく研究したので、ケプラーの超新星と呼ぶ。

 この超新星は、18か月にわたって肉眼で見ることができ、絶頂期には、みかけの等級が−2.5等で、夜空で他のどの恒星より、また金星を除く他のすべての惑星より明るかった。意外なことに、2010年現在、我々の銀河系内で観測された最後の超新星である。

 ニュートリノ天文学
 1987年には、大マゼラン雲内で超新星(SN 1987A)が発見された。地球からは16.4万光年離れているため、実際に超新星爆発が起こったのは16万年前のことである。

 超新星の明るさは5月にピークを迎え、視等級にして最大3等級となったあと、数ヵ月かけて徐々に減光した。肉眼で観測された超新星としてはSN 1604(ケプラーの超新星)以来であり、現代の天文学者にとっては初めて超新星を間近に観察する機会となった。

 このときの超新星爆発で発生したニュートリノは、日本のカミオカンデで観測され、ニュートリノ天文学の記念すべき第一歩となった。

 宇宙から飛来するニュートリノの観測例としては太陽ニュートリノの観測が1960年代から行われていたが、ニュートリノの飛来した方向、時刻、エネルギー分布が詳細に分析されたのはこの観測が初めてであり、ニュートリノ天文学を大きく飛躍させた。この成果によって東京大学名誉教授の小柴昌俊が2002年にノーベル物理学賞を受賞している。

 9番目の超新星
 何かと話題の多い超新星だが、現在まで肉眼で見えた超新星は8つしかない。今回9つ目の、しかもこれまでで最大級の超新星爆発が観測できるかもしれない。その明るさは-12等級、ほぼ満月と同じ明るさで昼間でも観察できるという。

 しかも、地球に比較的に近いので、爆発時に発生するガンマ線のため、地球のオゾン層に影響が出るかもしれない。偶然地球方向を向いて爆発した場合には、オゾン層が吹き飛ぶ可能性もあり、惑星および生命体への影響ははかりしれない。

 9番目の超新星、その正体は何だろう?

 その正体は、オリオン座の1等星「ベテルギウス」。現在、超新星爆発へ向かうと見られる兆候が観測されている。

 米航空宇宙局(NASA)が6日に公開した画像には、星の表面の盛り上がりとみられる二つの大きな白い模様が写っていた。この15年で大きさが15%減ったという報告もあり、専門家は「爆発は数万年後かもしれないが、明日でもおかしくない」と話す。もし爆発すれば、満月ほどの明るさになり、昼でも見えるようになる。

 でこぼこの赤色超巨星
 冬の大三角の一つでもあるベテルギウスは、赤色超巨星と呼ばれる巨大な星。直径は太陽の1千倍で、太陽系にあるとしたら、地球や火星はおろか木星までが覆われる大きさだ。重いため一生は短く、まだ数百万歳(太陽は46億歳)だが、すでに寿命に近い。最後は超新星爆発を起こし、ブラックホールなどになるとされる。

 地球からの距離は約600光年。地球からベテルギウスを見ると、東京から大阪に置いてあるソフトボールくらいの大きさにしか見えず、これまでは大きな望遠鏡でも点程度にしか見えなかった。だが近年は、複数の望遠鏡を組み合わせて解像度を上げることにより、その表面や周囲のガスの流れまで撮影できるようになった。

 昨年、米欧の研究者がほぼ同時に3本の論文を発表し、ベテルギウスが大量のガスを放出していることや大きさの急減が示された。ガスの放出によって星の表面が梅干しのようにでこぼこに膨らんでいるらしい。

 ただ、その後の別の観測では、大きさの変化はあまりないという報告も出ているという。3本の論文のうちの1本の著者で、独マックスプランク電波天文学研究所の大仲圭一研究員は「爆発がいつかは分からないが、死の直前を見ているのは間違いない。今まで想像するしかなかった星表面の様子も、実際に見て確かめられるようになってきた」と話す。(asahicom 2010年1月10日)

参考HP Wikipedia「超新星」「新星」

超新星1987Aに挑む―壮烈な星の最期をさぐる (ブルーバックス)
野本 陽代
講談社

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岩波講座物理の世界 元素はいかにつくられたか――超新星爆発と宇宙の化学進化

岩波書店

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1月15日西日本で「部分日食」 見えるかな?欠けたまま沈む太陽

2010年01月14日 | 宇宙
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 1月15日部分日食
 2010年1月1日、元日の早朝に起こった部分月食に続いて、1月15日夕方、関東より西の地域で太陽が欠けたまま西の空に沈んでいく部分日食(日入帯食)が起きる。この日食は、中央アフリカからモルジブ、中国にかけての地域で金環日食になる。

 日食とは、月が太陽の前を横切るために、月によって太陽の一部(または全部)が隠される現象。太陽が月によって全部隠されるときには「皆既日食」、 太陽の方が月より大きく見えるために月のまわりから太陽がはみ出して見えるときには「金環日食」、太陽の一部しか月に隠されないときには「部分日食」と呼ぶ。

 今回の部分日食は、日本全国で見ることはできない。日食が見られるのは関東より西の地域で、西に行くほど大きく欠ける。日食が見られる地域であっても様々な要因により(例:山など)日食が観察できない場合がある。

 各地の食分
 沖縄県の八重山諸島では日没直前の午後5時58分に最大61%欠け、国内で最大食を観測できる。那覇では最も欠ける時刻が日没とほぼ同時のため、最大食の観察は難しいが、日の入り前まで部分日食を十分楽しめる。(琉球新報 010年1月14日)

 山陰地方では、地平線に沈む直前の太陽が最大50%程度欠けて見える。観測時間は松江が午後4時45分から午後5時17分、鳥取が午後4時46分から午後5時13分。いずれも西南西の方向で、日の入りまで観測できる。

 今回は日の入り間際に太陽が最も欠けて見え、松江が40%、鳥取が34%欠ける。津和野町では49%となる。(山陰新報 2010年1月8日)

 欠ける割合は名古屋で16%、大阪で25%程度。西ほど大きく、九州では半分以上になる。欠け始めるのは、日没前の午後4時40分過ぎ。富山市や長野市、静岡市では日没時刻とほとんど同じで、高い山に登っても見えるかどうかはぎりぎりだ。(asahi.com 2010年1月7日)

 湘南はボーダー
 国立天文台の「星空情報」によると、ここ湘南地方は、日没直前に欠け始めるぎりぎりの場所。記録を狙って観察してみるのも面白い。

 ただし、太陽はたいへん強い光と熱を出している。夕方といっても、正しい方法で観察しないと、目を痛めたり、最悪の場合失明したりする危険性があるのでご注意を。

参考HP 国立天文台・アストロアーツ 

理科年表 平成22年 ポケット版
国立天文台
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ミトコンドリアDNAで、ウナギの産卵大回遊の謎が解けた!

2010年01月13日 | 動物
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 夏バテによい食材
 ウナギは高タンパクで、脂肪が多く含まれていながら消化にもよく、ビタミンAも豊富に含まれている。コラーゲンも多く、これは血管を柔軟にするなど生活習慣病予防にも役立つ成分になる。

 また、ウナギにはビタミンEが豊富に含まれている。ビタミンEは、若返りのビタミンともいわれ、抗酸化作用があるため、細胞の老化を防ぐ作用があり、若さを保つために働く。

 夏バテを防ぐためにウナギを食べる習慣は、日本では大変古く、万葉集にまでその痕跡をさかのぼる。人気のある食材であるが、生物としては謎の多い生物である。


 謎の多いウナギ
 紀元前の古代ギリシャ時代、アリストテレスはウナギの成魚を詳細に観察したにもかかわらず、その体内に卵や生殖器を見つけることができなかった。そこで彼は、ウナギが雌雄の生殖の結果として生まれるのではなく、泥の中から生じるのではないかと推論した。これが、有名な自然発生説である。

 その後、ウナギは、成長の過程で河を上るときはオスになり、河を下るときにメスになる、雌雄同体の生物だったことがわかった。

 レプトセファルスと呼ばれる仔魚がウナギのものだとわかったのは、18〜19世紀に入ってからのこと。20世紀初頭になり、デンマークのヨハネス・シュミット博士は北アメリカ大陸東岸に分布するアメリカウナギと、ヨーロッパや地中海沿岸に分布するヨーロッパウナギが共に北大西洋のサルガッソー海で産卵することを突き止めた(Schmidt 1923)。

 太平洋のニホンウナギの産卵場がマリアナ沖で発見されたのはそれからおよそ70年後の1991年。(Tsukamoto 1992)。そして昨年度に世界で初めて、ニホンウナギの雄の成熟個体が産卵場として想定された海域で採集された。(Chow et al. 2009)。

 2003年、ウナギの実験的な完全養殖に成功した。しかし、課題が多く、まだ量産には至っていない。また、鮭は卵を産むために河を上るのに、同じように河を上るウナギは卵は産まず、何千キロも離れたマリアナ沖の深海で産卵するのは、なぜなのか長い間謎であった。

 遡河回遊と降河回遊
 鮭は河を上って卵を産むのに、なぜ、ウナギは川を下って卵を産むのか?

 この問いに対しては、Gross らの説が有力。すなわち、「熱帯・亜熱帯では海より淡水の方が栄養(餌)が豊富で、ウナギはそれを成長に利用するために海から淡水域に回遊してくる(降河回遊)」というもの。(Gross et al. 1988)

 逆に、海の方が淡水より栄養豊富な亜寒帯や寒帯では、ウナギとは逆方向の回遊(遡河回遊)がサケのなかまで多く見られるため、Gross らの仮説は、このようなユニークな回遊行動の維持機構を、うまく説明するものとして知られている。

 しかし、これだけでは、なぜ、産卵場所をマリアナ諸島西方の深海にし、何千キロも旅をして、河を上るのか?という理由にはならない。

 ウナギの古里
 今回、東京大学海洋研究所の塚本勝巳・西田睦教授と千葉県立中央博物館の宮正樹上席研究員らの研究グループがロンドン大学の井上潤研究員らと共同で行なった詳細なDNAの遺伝子解析により、ウナギが外洋の深海に生息していた祖先から進化してきた可能性が高いことを明らかにした。

 この結果、ウナギの産卵大回遊は、餌が豊富な熱帯・亜熱帯の淡水域で十分に成長する一方で、遠い昔から慣れ親み安心して産卵のできる、しかも外敵が少ない、外洋の深海を利用するという、二つの異なる環境の特性を最大限に利用するために進化してきたものと考えられる。 

 DNA分析
 研究チームは、ニホンウナギを含むウナギ属19種に加え、アナゴ科、ウツボ科、ウミヘビ科なども含めた56種の標本を世界中から集め、細胞中に含まれるミトコンドリアのDNA全塩基配列を調べ上げた。

 この結果、これら56種は最終的には同じ祖先から枝分かれしてきたと見られるものの、ウナギ属は浅海や大陸棚に生息し外見も似ているアナゴ、ハモ、ウツボなどとは遺伝的には遠く、むしろシギウナギ、ノコバウナギ、フウセンウナギ、フクロウナギ、タンガクウナギ、ヤバネウナギなどの深海魚と近縁であることが分かった。

 これら深海魚は外洋の水深200-3,000メートルに生息している。ウナギという名がついているものの、巨大な口やくちばしのような顎(あご)を持つ体型から、これまでウナギ属とは全く遠い種と考えられていた。

 このことから、ウナギの祖先は元々深海で住んでいた可能性が高く、深海で住んでいた先祖が極端に餌の乏しい熱帯の外洋中・深層を見捨てて、餌が豊富な熱帯・亜熱帯の淡水域で成長し、しかし産卵だけは遠い昔から慣れ親しみ、しかも外敵が少ない安全な外洋の深海で行うという、生活史を獲得したと考えられる。

 

参考HP Wikipedia「ウナギ」・サイエンスポータル「ウナギの古里やはり深海
東京大学海洋研究所「
ウナギの進化的起源は深海に! 

ウナギの科学―解明された謎と驚異のバイタリティ
小沢 貴和,林 征一
恒星社厚生閣

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疲労の科学 PS「パフォーマンスステイタス」によるチェック

2010年01月12日 | 健康
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 疲労の定義とCFS
 疲労は、痛み、発熱と並んで生体の3大アラームと言われ、身体にとって生命と健康を維持する上で重要な信号のひとつである。健常者における生理的疲労は、精神あるいは身体に負荷を与えた際に作業効率(パフォーマンス)が一過性に低下した状態と定義できる。

 疲労が続く状態に慢性疲労症候群という病気がある。慢性疲労症候群(CFS)は、原因不明の強度の疲労が長期間(一般的に6ヶ月以上)に及び継続する病気。このチェックには疲労が長期にわたって続くこととや、次のような症状があることが特徴である。

 徴熱(37.2~38.3℃)、悪寒 咽頭痛 頚部、腋窩リンパ節が腫れる 原因不明の筋力低下 筋肉痛ないし不快感 軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感 頭痛 腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛 光過敏、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、混乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ 睡眠障害(過眠、不眠)

 PS「パフォーマンス・ステイタス」
 その他のチェック方法としてPS「パフォーマンス・ステイタス」によるチェック方法がある。PS値は疲労・侮怠の程度を表す値のことで、CFS患者は、PS値が3-9の間である。試してみよう。ちなみに私は4であった。
 
0 - 倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
1 - 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずるときがしばしばある。
2 - 通常の社会生活はでき、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である。
3 - 全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
4 - 全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
5 - 通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
6 - 調子のよい日には軽作業は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している。
7 - 身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である。
8 - 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。
9 - 身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

 疲労回復の方法
 一つには自然形体の治療をする。骨格、筋肉を正常にすると睡眠が良く取れて、身体の疲労が取れて行く。背骨が歪んでいると、寝ても背中が痛いので睡眠がよく取れない。

 二つ目に、良く眠る。身体を使って、疲労が取れ、体力が戻る為には一日に7時間~8時間の量を必要とする。いちどきに取れなくとも、疲れたなと思ったら、5分でも10分でも身体を横たえて休む。これで、少し回復するので、一度に沢山取れない方にお勧め。

 三つ目に、入浴。疲労が取れ、温まるお風呂の良い入り方は、首までお湯に浸かること。10分位~30分位まで入浴。本を読むとか、音楽を聞きながら、テレビを見ながら、などお好きなように。充分に温まってきたら、半身を出すのもよい。

 膝から下を湯から出しておくと、のぼせず湯当たりの防止になり、長時間入れる。特に「痛い部分」は湯に浸けておくとよい。

 最後に上がる時は、水で絞ったタオルで全身を拭く。毛穴から暖かい熱がドンドン逃げて行くのを防ぐ。せっかくお風呂に入っても夜半に寒いのは毛穴が開いたままだから。(出典:新潟市 うだ自然形体院) 

参考HP Wikipedia「疲労」・うだ自然形体院「疲労の取り方

正しいお風呂の入り方―美しいマナーと健康入浴法
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血液中に「α-MSH」が増加!慢性疲労症候群(CFS)とは何か?

2010年01月11日 | 健康
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 慢性疲労症候群
 疲労が抜けない毎日、スッキリしない。いつも風邪をひいているような感じだ。こんな症状のとき慢性疲労かもしれない。

 疲労は、身体にとって生命と健康を維持する上で重要な信号のひとつである。「休みなさい」と体が言っているのである。しかし、休日に休んでも何か疲れがとれた感じがしないとなると別の原因を考えてみる必要があるかも知れない。

 慢性疲労症候群(CFS)は、原因不明の強度の疲労が長期間(一般的に6ヶ月以上)に及び継続する病気である。この疾患の概念はアメリカで生まれた。英語ではChronic Fatigue and Immune Dysfunction Syndrome というので、略してCFSという。

 主な症状
 身体・精神両方に激しい疲労感が生じる。運動・精神活動によって疲労感が増すが、休息や睡眠による回復は遅い。疲労の程度には個人差があり、何とか働ける程度から寝返りも打てない者もいる。

 長期間の疲労感の他に次の症状等を呈することがある。微熱 ・咽頭痛 ・頸部あるいはリンパ節の腫張・原因不明の筋力低下 羞明 ・思考力の低下・関節障害 ・睡眠障害

 原因不明の疾患で、通常、血液検査等も含む全身の検査を受けても他の病気が見つからなく、精神疾患も当たらない場合に初めて疑われる(除外診断)病気である。しかし、詳細に検査をすると神経系、免疫系、内分泌系などに異常が認められる場合もある。

 アメリカ疾病予防センター(CDC)によると、完治は希で5〜10%であるものの、治療により改善したり、ある程度回復するとされている。日本では、約38万人(0.3%)がCFSを罹患していると推定されているが、認知度の低さにより、適切な診断を受けていないか、うつ病・神経症・更年期障害・自律神経失調症等に誤診されている患者が多いと思われる。

 厚生省診断基準案
 
厚生労働省の提案している診断基準に、次のような基準がある。
 大クライテリア(大基準) :生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヵ月以上の期間持続ないし再発を繰り返す(50%以上の期間認められること)。
 小クライテリア(小基準):1.症状クライテリア(症状基準)-(以下の症状が6ヵ月以上にわたり持続または繰り返し生ずること)
2.徴熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒 咽頭痛 頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張 原因不明の筋力低下 筋肉痛ないし不快感 軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感 頭痛 腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛
3.精神神経症状(いずれか1つ以上): 光過敏、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、混乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ 睡眠障害(過眠、不眠) 発症時、主たる症状が数時間から数日の間に出現
4.身体所見クライテリア(身体所見基準) - (少なくとも1ヵ月以上の間隔をおいて2回以上医師が確認) 微熱 非浸出性咽頭炎 リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)または圧痛

CFSと診断する場合: 大基準に加えて、小基準の「症状基準8項目」以上か、「症状基準6項目+身体基準2項目」以上を満たす
CFS疑いとする場合: 大基準に該当するが、小基準で診断基準を満たさない。(出典:Wikipedia)

 タンパク質「α-MSH」
 このように疲れが抜けないときは、慢性疲労症候群(CFS)を疑ってみる必要があるかもしれない。しかし、通常の疲労とどこが違うのだろうか? 

 原因不明の激しい疲労が半年以上も続く「慢性疲労症候群(CFS)」を診断できる血液中のたんぱく質を、大阪市立大の木山博資教授(解剖学)らが発見した。

 CFSには自覚症状を中心に判定する診断基準はあるが、血液の検査値など客観的な指標(マーカー)はなく、今回の発見は健康診断などに活用できそうだ。

 木山教授らは、5日連続の運動で極度に疲労させたラットの脳下垂体の中葉と呼ばれる部分を分析。「α-MSH」というたんぱく質が異常に分泌され、血液中のα-MSHの量も上昇していくことを突き止めた。α-MSHの分泌は神経伝達物質ドーパミンが抑制しているが、ラットでは疲労がたまるにつれドーパミン産生能力が低下していた。

 一方、CFSと診断された患者57人と、健康な30人の血液を使い、α-MSHの量も測定した。その結果、発症後5年未満の37人の平均値は健康な人に比べ、約50%も高かった。

 一晩徹夜した人の血液を調べてもα-MSHの量に変化はないことから、短期間の疲労とは関係がないこともわかった。CFS患者は潜在する人も含め、国内に200万人以上いるとされる。(2010年1月7日  読売新聞)

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「鉄鋼スラグ」を使って、海の砂漠化「磯焼け」を防げ!

2010年01月10日 | 環境保護
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 海の砂漠化
 「磯焼け」とはどんな現象だろう?浜でバーベキューをしているわけではない。

「磯焼け」はひと言でいえば「海の砂漠化」のこと。海中に海藻が減少し、海藻を餌とする生物の減少し、生態系全体に波及し、漁獲量も激減する状態を指す。最近では、単に海藻の減少のみを指す。

 この原因は何だろう?

 考えられる原因としては、ウニや小型巻貝類などの植食動物による食害、無節サンゴモの優占、海が荒れたり海底が侵食されたりすることによるもの、漂砂による傷・汚れ、日射量の減少による光合成阻害などがある。

 人間が原因とする説では、船舶の船底塗料・都市や農村から流入する河川などからの環境ホルモンによる汚染、造成などによる土砂の流入、貧栄養化現象に起因する広範囲の海域の環境の変化などがある。さらにこれらの包括的原因として、地球温暖化による海水温の上昇や海流、気候の変化なども指摘されている。

 もうひとつの原因にアイゴの食害があげられている。アイゴは海藻を好んで食べる魚で日本全国の海岸線に生息している。冬になると食欲が落ちていたが、地球温暖化による、海水温の上昇により冬になっても食欲が落ちなくなり、海藻を食べ尽くしているのではないかとも考えられてきた。

 海の砂漠化の原因 
 最近「豊かな森があるところは、海も豊かである」という言葉も、常識的になってきた。豊かな森があるところからは、海の生物に不可欠な種々の栄養素や化学成分が河川を通して海に流れていく、というのがその理由だ。

 河川の水と外洋水が混じり合うところを「沿岸海域」と呼ぶが、ここに河川からフルボ酸鉄、腐植物質、栄養素が供給されることで、沿岸の生物が育つことが分かってきた。

 現在、北海道、東北地方の日本海沿岸では、外洋水に含まれる鉄イオンの濃度とほとんど変わらないところが数多く出てきている。本来なら沿岸水の鉄イオンの濃度が高くなければならないのに、そうではなくなっている。この理由は、河川水の流入がほとんどなくなっているからで、ここでは「海の砂漠化」いわゆる「磯焼け」が起きている。

 鉄鋼スラグで海が再生
 こうした現状に対して、鉄鉱石から鉄を取り出す際に生じる副産物「鉄鋼スラグ」を使い、海洋中に不足していた鉄を補って海藻の成長を促すことに、新日本製鉄や東京大などの研究チームが成功した。

 海藻は二酸化炭素(CO2)も吸収するため、漁業の活性化に加え、地球温暖化防止に役立つ可能性があるという。

 日本各地の海岸では藻場が減少する「磯焼け」が毎年拡大。現在では沿岸約5000キロにわたって発生している。原因としてウニによる食害や海水中の鉄濃度の減少などが指摘されている。

 鉄鋼スラグと腐植土
 研究チームは5年前に鉄鋼スラグを沿岸へ埋めて鉄を人工的に補給する実験に着手した。鉄が海水に溶けやすくなるよう鉄鋼スラグ8トンを腐植土4トンと一緒に混ぜて袋詰めにし、磯焼けが発生している北海道増毛(ましけ)町の日本海沿岸に沈めた。

 その結果、海藻1本当たりの重さは何の対策も取っていない近くの場所に比べて、約8カ月間で8倍に増えたことが分かった。また、埋設場所から算出されるCO2吸収量は海藻1平方メートル当たり年間5.5キロだった。

 日本は京都議定書で年間6%の排出削減を義務付けられている。過去30年間に消失した日本沿岸の藻場のほぼ半分をこの方法で再生すれば、日本の年間排出量(約13億トン)の約0.5%に当たる700万トンを吸収することになるという。

 現在、北海道以外にも三重県や長崎県など十数地点で実験しており、効果の継続期間などを検証していく。(毎日新聞 2010年1月3日)

 鉄鋼スラグとは?
 高炉で製造された溶銑やスクラップから、靱性、加工性のある鋼にするのが製鋼工程であり、この製鋼工程で生成するのが製鋼スラグである。粗鋼1t当たり約110kg 生成する。

 この産業廃棄物を、様々な方面で再利用することが考えられている。今回紹介した海域環境改善用資材以外には、高炉セメント、コンクリート用混和材、道路用路盤材、コンクリート用粗骨材、細骨材、港湾工事用および地盤改良用資材、肥料および土壌改良用資材などがある。

 

参考HP 鉄鋼スラグ協会「鉄鋼スラグとは」・ECO JAPAN「鉄の研究が生物多様性問題を解決」・Wikipedia「磯焼け」 

磯焼けを起こすウニ―生態・利用から藻場回復まで (磯焼け対策シリーズ)
藤田 大介,桑原 久実,町口 裕二
成山堂書店

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電気炉酸化スラグ骨材を用いたコンクリートの設計・施工指針(案) (コンクリートライブラリー)

土木学会

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「環境税」と「炭素税」の違いは?フランスの炭素税に違憲判断 

2010年01月09日 | 環境保護
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 モルディブの「環境税」
 温暖化による海面上昇で国土の大半が水没するとされるインド洋の島しょ国モルディブ。同国のナシード大統領はこのほど、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)排出量が極めて少ない太陽光など再生可能エネルギーへの変換計画を発表、財源として観光客に1日3ドル(約270円)の環境税を課す考えを明らかにした。

 この場合の環境税は、環境を守るために直接徴収する税である。この税金は環境保全のために使われる。環境税にはもう一つあって、電気・ガスやガソリンなどのエネルギーに課税する方法がある。二酸化炭素の排出量に応じて税を徴収する仕組みで、税収はもちろん環境保全に使われる。

 日本では主に、こちらの方で導入が検討されている。つまり、エネルギーに直接課税することで、節約することを奨励したり、地球温暖化への関心を高めたり、省エネ・低燃費型の製品や車を購入させる効果を狙っている。

 炭素税と化石燃料
 日本で検討されている環境税は、炭素税とほぼ同じ意味がある。炭素税はCO2を排出する、化石燃料に直接課税する税。税により価格を引き上げることにより、その需要を抑え、その税収を環境対策に利用することにより、地球温暖化の原因である二酸化炭素 (CO2) 排出量を抑えることを目的としている。

 対象となる化石燃料は、石炭・石油・天然ガス及びそれから由来するガソリン(揮発油)、軽油、灯油及び重油などの燃料である。

 二酸化炭素 (CO2) 排出削減に努力した企業や個人が得をし、努力を怠った企業や個人はそれなりの負担をすることになるという、低炭素社会実現への努力が報われるという仕組みでもある。

 フランスの炭素税に「待った」
 フランスのサルコジ政権が、地球温暖化対策の目玉として打ち出した「炭素税」導入をめぐって苦境に立たされている。仏の憲法会議が2009年末に新税を違憲だと判断したためで、政権側は内容を再検討することにしているが、地球温暖化防止を訴えてきた政権にとって大きな痛手になりそうだ。

 企業や個人が排出する二酸化炭素(CO2)などに課税する「炭素税」は同年9月、サルコジ大統領が2010年初めからの導入を提案。CO2など温室効果ガスの排出量1トンあたり17ユーロ(約2300円)の課税が予定された。

 だが、新法の合憲性などを判断する憲法会議(識者など約10人で構成)は12月29日、新税について(1)石油精製など仏の約1000事業所のほか、航空・運輸産業などが課税を免除・軽減される(2)このため仏工業界が排出するCO2の約9割が課税されない--などの可能性を指摘。「新税は不公平で、地球温暖化対策にもならない」と違憲判断を下した。

 大企業に有利な炭素税
 これに対しサルコジ政権は5日、法案の再検討を表明。「炭素税は温暖化防止に必要だ」とする一方で、再検討後の税制では「大手企業にも課税するが、経済活動の支障にならない額にする」などの方針を打ち出した。

 だが、フランスでは、課税対象の差別化は「税の前の平等の精神に反する」という意見が強い。炭素税には、大統領の支持母体「国民運動連合」から野党までが反発しており、世論調査でも国民の3分の2が否定的だ。政権側は7月の施行を目指すが、一般国民の反発と、新税による負担増を拒否する産業界の間で立ち往生した形だ。

 炭素税は、フィンランドが1990年に初めて導入。他の北欧諸国やオランダ、英国、ドイツなども同様の税制を導入した。日本でも導入に向けた検討案が出されている。(毎日新聞 ‎2010年1月5日‎)

 世界の動向
 地球温暖化の対策として最も本質的な手法とも言われ、欧州のいくつかの国々で炭素税の導入が検討されている。スウェーデン、オランダ、ドイツ、イギリスなどでは既に導入されており、これらの国はいずれも温室効果ガス排出量削減を実現している(京都議定書#各国の取組状況を参照)ことから、導入を検討中の国においても高い効果が期待されている。

 これらの国では化石燃料に課税することが一般的だが、1990年代より様々な環境税を実施しているスウェーデンでは再生可能エネルギーに対する減免・還付等を行っている。

 また、直接的に温室効果ガスに課税する方法でなくとも、ガソリン・軽油などの自動車燃料や原油、石炭など特定の商品(化石燃料)に物品税(個別消費税)として課税することで、事実上の環境税として機能しているものもある。一方、アメリカでは導入への検討はほとんどされておらず、ガソリン税も安い。

 日本でも導入が提唱され、与野党で、温度差はあるものの、議論は進められている。日本経団連では、エネルギー課税は既に過重である等として新規の環境税の導入は反対している。一方で、既存エネルギー課税の環境対策への転用を認めている。

 2008年9月には、道路特定財源の一般財源化に伴い、既存のエネルギー課税と組み合わせて、使途を環境対策に組み替える考えを示し、容認に転じている。(出典:Wikipedia)

 

環境税―税財政改革と持続可能な福祉社会
足立 治郎
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クリストファーフレイヴィン,ワールドウォッチ研究所
ワールドウォッチジャパン

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カピパラ?いいえ特定外来種「ヌートリア」 農作物被害増加中

2010年01月08日 | 環境問題
科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学情報を、くわしく調べやさしく解説!毎日5分!読むだけで、みるみる科学がわかる!
 同じ水辺に住むネズミ
 パッと見るとカピバラを思い出した。カピバラは、南アメリカ東部アマゾン川流域を中心とした、温暖な水辺に生息する。 ネズミ目(齧歯類:げっしるい)中最大種であり、カピパラ科に分類される。モルモットに近いネズミのなかまである。

 カピバラは、体長105~135cm、体重35~65kgにまで成長する。5cm以上にもなるタワシのような硬い体毛に覆われている。泳ぎが得意で、前足後足には蜘蛛の巣状の水かきがついている。群れを成して泳ぎ、捕食動物から身を隠すために水中に5分以上潜ることができる。鼻先だけを水上に出して眠ることもある。

 一方、ヌートリアも、ネズミ目(齧歯類:げっしるい)、ヌートリア科に属する哺乳類の一種。やはり、南アメリカを原産地とする。体長は尾をふくめ70~100cm、体重5-9kgの大型の齧歯類であるが、カピバラよりひとまわり小さい。

 やはり、水辺で生活するのはカピバラに似る。泳ぎが得意で5分以上潜水することもある。体つきはドブネズミなどに似るが、耳が小さく、後ろ足には水かきがある。オレンジ色の大きな前歯も特徴的。また、水上でも授乳できるよう、乳首がやや背中寄りについている。

 ヌートリアは尾が長いことや、大きさを見るとカピバラと違うことがわかるが、その他はカピバラと似ている。しかし、こちらの方は、近年増加している、アライグマ、マングースなどと同じ、特定外来生物に指定される害獣である。

 50超す自治体がヌートリア対策 
 農産物被害が相次いでいるヌートリア。体長は50~60センチにもなる(兵庫県森林  動物研究センター提供) 南米原産で巨大なネズミの仲間「ヌートリア」による農作物被害が、少なくとも中部以西の10府県で確認され、兵庫など9府県の50を超える自治体が、外来生物法に基づく防除計画を策定したことが28日、環境省や農林水産省のまとめで分かった。

 ヌートリアは、イネや野菜をエサに季節を問わず繁殖。特に兵庫県は全国の被害額の3分の1を占め、捕獲費用の半額補助制度を設けるなど対応に躍起になっているが、“ネズミ算式”の増加に頭を痛めている。

 ヌートリアは、戦時中に防寒用の毛皮をとるため国内で頻繁に飼育されていたが、戦後は需要が急減し、しだいに野生化したという。

 農水省によると、農産物被害額は平成13年度は7100万円だったが、20年度は1億2400万円に増加し、最も被害が大きい兵庫県では約4300万円を占めている。ここ数年の被害は、兵庫をはじめ岐阜や大阪、鳥取など10府県に及んでいるという。

 平成17年に「特定外来生物」に指定
 兵庫県によると、県内の被害額は13年度は約2600万円だったが、この7年間で約1.7倍に急増。生態を調査している兵庫県森林動物研究センター(丹波市)によると、河川流域に生息するヌートリアは、県南部の加古川流域からこの10年間ほどで一挙に北部まで広がり、「ほぼすべての河川流域で確認されている」という。

 固いものでも強い咀嚼(そしゃく)力で食べるため、キャベツやニンジンなど野菜の被害が相次いでいる。

 国は、ヌートリアなど外来種防除のため平成17年に外来生物法を制定。同法に基づく防除計画では、都道府県の許可を受けなくても捕獲や防除ができることなどから、農産物被害に悩む自治体が相次いで計画を策定。環境省によると、防除計画は、12月中旬までに大阪府と岡山県、さらに7県の52市町が策定し、特に兵庫県では41市町のうち24市町に上っている。

 ヌートリアの捕獲方法は、巨大なねずみ捕りのような「ハコわな」と呼ばれる器具を使うのが一般的。ただし、出産が年2、3回でそのたびに数匹を産むため、捕獲を続けても次々と生息域を拡大しているとみられている。

 兵庫県森林動物研究センターの小林敏郎森林動物専門員は「文字通り『ネズミ算式』に広がっており、農産物被害だけでなく生態系を乱すため、地域から排除する必要がある」と話している。(産経ニュース 2009.12.28)

 ヌートリアとは何か?
 ヌートリア(海狸鼠・沼狸)は、ネズミ目(齧歯目)ヌートリア科に属する、哺乳類の一種。南アメリカを原産地とするが、毛皮を取るために移入したものが野生化し、現在、北アメリカ、ヨーロッパ、日本を含むアジアに帰化して分布する。

 頭胴長40-60cm、尾長30-45cm、体重5-9kgの大型の齧歯類である。水辺の生活に適応しており、泳ぎが得意で5分以上潜水することもある。体つきはドブネズミなどに似るが、耳が小さく、後ろ足には水かきがある。オレンジ色の大きな前歯も特徴的。また、水上でも授乳できるよう、乳首がやや背中寄りについている。

 半水性で、池沼や流れの弱い河川の岸辺の土手などに巣穴を掘り、普通は雌雄のペアで生活をする。結氷するような寒冷地では生息できない。

 主食はマコモやホテイアオイなどの水生植物の葉や地下茎である。明け方と夕方に活発な採餌のための徘徊行動が見られ、日中は巣穴で休息していることが多い。雌は定住的で、雄に比べて行動範囲は狭い。若い個体は新しい縄張りを求めて移出する。

 季節を問わず繁殖し、年に2、3回出産をする。妊娠期間は約4ヶ月で、平均5匹の子を産む。十分に発達してから産まれるため、丸一日後には泳げるようになり、3日後くらいには早くも成体と同じ餌を摂り始める。その後約半年で性成熟する。寿命は5-8年程度。

 ヌートリアと人間
 ヌートリアは丈夫で育てやすく、柔らかい上質な毛皮が安価に入手できるため、第二次世界大戦ごろには、軍隊の防寒服用として世界各国で飼育された。日本では1939年にフランスから150頭が輸入され、飼育が奨励された。このころは軍隊の「勝利」にかけて「沼狸」(しょうり)と呼ばれ、1944年ごろには、日本全国で4万頭が飼育されていた。

 終戦後、毛皮の需要が激減したことに伴い、その多くが野外に放逐された。また、1950年代の毛皮ブームでは本種の飼育が流行したが、その後の毛皮価格の暴落に伴い、このときも多数が野に放たれ、野生化している。これらの子孫が各地で定着し、西日本各地(広島県、岡山県、島根県、香川県と近畿・東海の各府県)に分布が拡大していたが、千葉県や静岡県の一部でも生息が確認されており、今後も拡大すると考えられる。特に岡山県にはかなりの数が生息しており、年間約800-2000頭もが害獣として捕獲・駆除されている。

 日本では侵略的外来種として問題になっており、イネやオオムギ、葉野菜などに対する食害のほか、絶滅危惧種に指定されているベッコウトンボの生息地を壊滅させるなど、在来種の生態系への影響も深刻である。さらに、本種の巣穴は複雑に入り組んでいて深く、水田の畦が破壊される原因にもなっている。2005年6月には、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)によって特定外来生物に指定されており、50を超える地方自治体が同法に基づく防除計画を策定している。

 1970年代のイギリスでは、10年がかりで約100万頭を駆除し根絶に成功した。寒冷下では尾の凍傷から感染し死に至ることがしばしばある。これが原因でスカンディナビアでは絶滅している。(Wikipedia) 

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「ヒッグス粒子」と「ダークマター」は同じもの?新宇宙理論誕生!

2010年01月07日 | 物理
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 世界の成り立ちに挑む
 物質を細かくしていくと分子や原子になることは誰もが知っている。原子は、さらに原子核と電子に分かれる。原子核は陽子と中性子に分かれ、陽子や中性子はクォークとレプトンでできている。ここまでは聞いたことがあるかも知れない。

 さらに先端科学では、なぜ、世界にはたらく力には3種類あるのか。なぜすべての物質に重さがあるのかという問いに答を出そうとしている。これらを説明する粒子としてグルーオンやウィークホゾン、ヒッグス粒子などを考えだした。このうちヒッグス粒子だけは未だに発見されていない。

 普通の人にとっては、どんな力があろうと、質量があろうがなかろうが、どうでもいいことかも知れない。しかし、この世界の成り立ちに関係するしくみを、人が考えられることが素晴らしいことであり、日本人の得意な分野で、ノーベル物理学賞で何人も受賞者を生み出したのが、この素粒子物理学の世界なのだ。

 自発的対称性の破れと相転移
 2008年にノーベル物理学賞を受賞した、南部氏の受賞した研究「自発的対称性の破れ」によると、質量が生まれたのも自発的対称性が破れて相転移が起きたからだという。

 もとはクォークもレプトンも質量はなかったが、ビッグバン直後に現れたヒッグス粒子が崩壊してヒッグス場をつくると、これにクォークやレプトンは反応して、質量が生じ、動きが遅くなる。ただ光子のみがこれに反応せず、質量はないという。

 例えて言えば、百メートル12秒で走れる人でも、プールの中では水の抵抗を受けてゆっくりしか走れない。この水の役割をするのがヒッグス粒子だ。

 「自発的対称性の破れ」では、このように一見、常識では考えられない現象が起きる。これを「相転移」というが、身近な例をあげると、磁力のない鉄が、磁界の中で突然磁力を持つようになったり、物質を低温にすると、超伝導現象が見られたりするのが「相転移」である。

 ヒッグス粒子とダークマター
 さて、未だに発見されていない、ヒッグス粒子とともに、発見されていないものとして、宇宙の1/3を占めるといわれるダークマターがある。 

 先日、大阪大の細谷裕教授が、ノーベル賞を受賞した南部陽一郎博士の理論からその存在が予測されたヒッグス粒子が、宇宙を満たす謎の暗黒物質(ダークマター)と同じものであるという新理論をまとめた。

 “二つの粒子”は、物理学の最重要テーマで、世界中で発見を競っている。暗黒物質は安定していて壊れないが、ヒッグスは現在の「標準理論」ではすぐに壊れるとされており、新理論はこれまでの定説を覆す。証明されれば宇宙は私たちの感覚を超えて5次元以上あることになり、宇宙観を大きく変える。

 ヒッグス粒子は崩壊するか?
 ヒッグスは、質量の起源とされ、普段は姿を現さないが、他の粒子の動きを妨げることで、質量が生まれるとされる。

 一方、衛星の観測などから宇宙は、光を出さず安定した暗黒物質で満ちていると予想されている。細谷教授は、宇宙が時間と空間の4次元ではなく、5次元以上であると考え、様々な粒子が力を及ぼしあう理論を考えた。その結果「ヒッグスは崩壊せず、電荷を持たない安定した存在」となった。

 欧州にある世界最大の加速器(LHC)では最大の課題としてヒッグスの検出実験が行われる。ヒッグスが不安定なら、崩壊時に観測が可能だが、細谷理論のように安定だと観測できないという。ただ、新たな実験手法で検証は可能という。

 一方、暗黒物質候補も2009年末、「発見の可能性」が報告されたが、細谷理論と矛盾しないという。

 細谷教授は昨年8月に欧州の物理学誌に新理論を発表。秋に来日した南部博士にも説明した。南部博士は「今まで誰も気づかなかった見方で、十分あり得る」と評価したという。

 小林富雄・東京大教授(素粒子実験)の話「美しく素晴らしいアイデア。数年で新理論を検証できる可能性がある」(2010年1月5日  読売新聞)

 ヒッグス場とヒッグス粒子
 ヒッグス粒子とはヒッグス場を説明するために考え出された。ヒッグス場とは、1964年にエディンバラ大学のピーター・ウェア・ヒッグスによって提唱された、素粒子の質量獲得に関する理論に現れる場についての仮説である。ヒッグス場によって質量を獲得するメカニズムをヒッグス機構と呼ぶ。

 ヒッグス機構では、宇宙の初期の状態においてはすべての素粒子は自由に動きまわることができ質量がなかったが、自発的対称性の破れが生じて真空に相転移が起こり、真空にヒッグス場の真空期待値が生じることによってほとんどの素粒子がそれに当たって抵抗を受けることになったとする。

 これが素粒子の動きにくさ、すなわち質量となる。質量の大きさとは宇宙全体に広がったヒッグス場と物質との相互作用の強さであり、ヒッグス場というプールの中に物質が沈んでいるから質量を獲得できると見なすのである。

 ヒッグス粒子と加速器LHC
 光子はヒッグス場からの抵抗を受けないため相転移後の宇宙でも自由に動きまわることができ質量がゼロであると考える。では、ヒッグス場は本当に存在するのだろうか?

 電磁場が存在すれば光子があるように、ヒッグズ場が存在すればヒッグス粒子が最低1種類あるはず。ヒッグス粒子の性質は理論でよく予言されているので、どのような方法で発見するかはわかっている。

 これまでの実験でまだ発見されていないので、ヒッグス粒子は114 GeV より重いはず。理論の予言もまた間接的実験結果も、ヒッグス粒子は 1000 GeV (1兆電子ボルト)より低い領域に存在すると強く示唆している。

 とくに 200 GeV より低い事がかなりの程度の確率で示唆されている。このエネルギー領域には次世代の加速器LHC(スイスで建設、2009年11月再開)やILC(計画中)で到達できるので、ここ10年以内にヒッグス粒子は発見される可能性が非常に高い。

 標準理論とは?
 素粒子物理学の三つの基本的な力すなわち強い力、弱い力、電磁力を記述する理論である。正確には、強い力の量子色力学と、弱い力、電磁力のワインバーグ・サラム理論、南部博士の理論、小林・益川理論を合わせたものなどが基礎になっている。

 それは場の量子論的方法で記述されているため、量子力学と特殊相対性理論の両方と整合している。今までのところ、三つの力に関するほとんどすべての実験結果は標準模型による予言と一致する。ただし、ニュートリノは質量ゼロの粒子として定義しているため、ニュートリノ振動などの実験結果を説明するためには修正が必要である。

 したがって、標準理論は基本的な力の完全な理論ではない。その理由として、先の三つの力の統一ができていない(大統一理論、超対称大統一理論を参照せよ)ことがあげられる。さらに、重力について何も記述していないことも大きな問題である。


参考HP Wikipedia「ヒッグス粒子」・キッズサイエンティス「やさしい物理教室 

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バラの次はチューリップ?青い花に「鉄」が必要なことを発見!

2010年01月06日 | ライフサイエンス
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 青色色素「デルフィニジン」
 サントリーが開発した青いバラ、よく見ると青と言うより藤色に近い。これは青い色素の中にわずかに赤い色素が含まれているから。白いバラに青い色素を水に混ぜ、水を吸収させた方が真っ青になる。この方法はスイトピーなどでもおこなわれている。

 遺伝子組換えにより青くなったバラの成功後、キクやユリでも青色遺伝子を組み込んで青くすることが試みられている。キクでは青色色素「デルフィニジン」が75%発色させることに成功している。だが色は紫色で、やはりツユクサや、アジサイのような真っ青にはならない。

 カーネーションやバラでは、ほぼ100%「デルフィニジン」が発現しているのになぜ100%の青にならないのだろうか?

 青色色素だけでは青くならない 
 実は花の色は色素だけで決まらない。青い色が発色するためには鉄などの金属イオンの存在、酸性かアルカリ性か、アントシアニンとはたらき合う助色素の有無など様々な条件が関係するという。例えばヒマラヤの青いケシは、デルフィニジンがなくても空のように青くなる。

 チューリップで有名な富山県と名古屋大の研究グループが、チューリップを青くするには、鉄が多く含まれることが重要であることを発見した。チューリップには赤や白、黄色の花はあっても青い花はない。だが、花の奥の部分だけは青い品種があり、青くなるには細胞内に鉄が多く含まれることがわかった。さまざまな花を青くする品種改良につながる可能性を秘めた成果だ。

 富山県で生まれたチューリップ「紫水晶」は、花びらの上部は紫色だが、底の部分は青色。両方の細胞を比べたら、赤や青の色を出すアントシアニン色素の種類や量、酸性度(pH)には、ほとんど差がなかった。ただ、青色の細胞では、細胞内に含まれている鉄イオンの量が、紫色の細胞より25倍も多かった。

 鉄を運ぶタンパク質「Vit1」発見!
 グループは青色細胞で働いている遺伝子から、鉄を運ぶたんぱく質「Vit1」を見つけた。Vit1の働きは、細胞が青くなる前に最も高くなっていた。運び込まれた鉄は色素と結合して、青を発色したとみられた。Vit1の遺伝子を紫色細胞に入れると、その細胞だけ青くすることにも成功した。

 「チューリップでは、花を青くするのに鉄が関係していると考えられる」と富山県農林水産総合技術センター園芸研究所の桃井千巳・主任研究員。吉田久美・名古屋大准教授は「花で鉄がどのように運ばれているかを初めて明らかにできた。この仕組みをうまく活用すれば、他の植物でもきれいな青い花を咲かせられる可能性がある」と話す。(asahi.com 2009年12月30日)

 花の4つの色素とは?
 植物は花粉を運んでくれる虫や鳥を呼び寄せるためにさまざまな工夫をしている。花の色もその工夫のひとつで、虫や鳥にアピールするようにさまざまな色の花がある。

 それでは、色が見える花には、どのような色素が存在しているか?花の色素は大きく分けて4種類あり、フラボノイド、ベタレイン、カロテノイド、クロロフィルがある。

 なかでもフラボノイドにはさまざまな化学構造を持った色素があり、花の色に重要な役割を担っている。フラボノイドの一種である淡黄色のカルコンはコスモスの、オーロンはキンギョソウの黄色をになう色素である。

 緑色の花もある
 また、ほとんどの橙赤色~紫色~青色の花に蓄積しているアントシアニンもフラボノイドの一種。アントシアニンを生合成しないサボテンやオシロイバナにも赤色や紫色の花がありますが、これらの花にはベタレインが蓄積している。

 ユリなどの鮮明な黄色や橙色をになうのはカロテノイド。クロロフィルは、シュンランやクリスマスローズなどの緑色をになっている。

 これらの色素の量が多いと花の色は濃くなり、クロユリのように黒っぽく見える場合がある。また、複数の色素が重なって存在することで、パンジーのように部分的に褐色や黒色に見えたりもする。

 さらに色素のほかに、表皮細胞の形や液胞中に含まれる金属イオンやpHの違いも花の色に影響する。

 花の色は千差万別で、植物種や品種によってさまざま。皆さんもいろいろな花の色を見比べてみてはいかがでしょうか。(花き研究所 新形質花き開発研究チーム 野田 尚信)

参考HP 花き研究所「決めるのは色素」・朝日新聞「青色遺伝子バラ 2009.12.22」

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遺伝子組換え 青バラ「アプローズ」開発!花言葉は「夢かなう」

2010年01月05日 | ライフサイエンス

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 「不可能」の代名詞
 青いバラが注目を浴びている。市販されている青いバラには、白バラを染料で青く染めたものもあるが、遺伝子組み換えによる、青いバラ「アプローズ」はサントリーフラワーズが開発し、昨年2009年11月3日から販売開始になった。1本2000円~3000円で売られているが、珍しさから人気を集めている。

 「青いバラ」は、過去800年の品種改良の歴史の中で、多くの育種家が挑んできた夢だった。青いバラの開発はこれまで成功しておらず、英語では「不可能」の代名詞とも言われていた。

 純粋な青さを湛えたバラを作り出すことは世界中の育種家の夢であり、各国で品種改良競争が行われてきた。1957年アメリカのフィッシャーが「スターリング・シルバー」を出し、「青バラ」の決定版といわれた。その後、タンタウが一層青い「ブルームーン」を発表。コルデスが「ケルナーカーニバル」を出し、フランスのメイアンは「シャルル・ドゴール」を発表と熾烈な品種改良競争を展開した。

 日本でも、青いバラに対する挑戦は盛んで、2008年現在、一般的な交配による品種改良で最も青に近いとされる品種は、岐阜県の河本バラ園が2002年に発表した「ブルーヘブン」、アマチュア育成家である小林森治が1992年に発表した「青龍」や2006年に発表した「ターンブルー」等が挙げられる。

 サントリーの挑戦「夢かなう」
 1990年「最先端のバイオテクノロジーの遺伝子組換え技術を用いれば可能になるはず」。夢への挑戦が始まった。以来、14年の年月を経て、2004年にようやく開発に成功することになる。

 1991年まず、ペチュニアの青色遺伝子を取り出すことに成功。

 1995年にはこの遺伝子を入れた青いカーネーションの開発に成功する。ところがこの遺伝子をバラに入れたところ、どうしても青くならなかった。そこで、今度は、いろいろな植物から青色遺伝子を取得し、それぞれをバラに導入することにした。

 1996年には、パンジー由来の青色遺伝子を導入したバラが青い色素「デルフィニジン」を作ることがわかった。色の変化が見られ、研究レベルでは大きなステップアップだったが、この段階では、まだ青いと呼べるものではなかった。そこで今度は様々な品種のバラに、青色遺伝子を導入してみた。

 2004年、より多くの品種に遺伝子を導入した結果、ついに青いバラが誕生した。

 しかし、それでもまだ販売はできなかった。一般に栽培したり、販売するためには、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法)に基づき、農林水産省と環境省から認可を得る必要があった。

 さまざまな実験を行い、今回開発したバラが生物多様性に影響しないことを示し、2008年1月31日に認可を得、2009年11月3日販売の日を迎えた。人工的に生み出された物故に、当初花言葉は、「不可能・有り得ない」であったが、「夢かなう」に改められての発売となった。

 交配育種でも青バラの可能性
 従来、青い色素をもつ原種バラは発見されていなかったため、従来の原種を元にした交配育種法では青バラ作出は不可能とされてきた。そのため現在の園芸品種にも青色といえる品種は存在しない。

 また「青バラ」と呼ばれる品種は、主に赤バラから赤い色素を抜くという手法で、紫や藤色に近づけようとしたものである。しかし、最近の研究で青い色素を持たないとされてきたバラから、バラ独自の青い色素が発見された(「青龍」を始めとするいくつかの青バラより)。これはバラ独自のもののため、「ロザシアニン」と命名された。

 しかし、この色素を持つ「青龍」は花粉をほとんど出さない為に交配親としては不向きとされており、遺伝子操作に頼らない青バラへの道は依然険しく長い道のりのままではある。だが、「ロザシアニン」の発見は純粋な青バラ作出を目指す育種家にとって一つの希望を示したといえる。(出典:Wikipedia)

 関連するニュース
「夢かなう」青いバラ、サントリー開発


 バイオ技術を活用してサントリーが世界で初めて開発した「青いバラ」が、11月3日から首都圏や京阪神などの約100軒の生花店で売り出される。花びらに青い色素を含ませたバラで、濃厚な甘い香りがする。1本2千~3千円程度。

 バラには青い色素をつくる能力がない。このため、青色をつくる遺伝子をパンジーから採り入れ、2004年に開発に成功した。花びらは薄紫色に近いが、赤みを抑える工夫を重ねたという。

 青いバラは「不可能の代名詞」とも言われてきた。発売元のサントリーフラワーズは、英語で喝采の意味である「アプローズ」の商品名で売り出す。開発に着手してから約20年かけて発売に至ったこともあり、花言葉は「夢かなう」とした。

 当初は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、京都、愛知の1都2府5県で発売。取扱店一覧はhttp://www.suntorybluerose.com/shop/に。インターネットでは12月に香水とのセットを1万円程度で発売する。(asahi.com 2009年10月21日)  

参考HP Wikipedia「青いバラ」・サントリー「世界初バイオテクノロジーで青いバラ 

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今年の干支「トラ」100年で20分の1に激減 絶滅危惧種を守れ!

2010年01月04日 | 動物
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 生物多様性条約
 名古屋市で2010年にCOP10が開かれる。COPというと、コペンハーゲンで開催されたCOP15を思い出す。この場合のCOPは「気候変動に関する国際連合枠組条約」のことであるが、名古屋で開かれるのは「生物多様性条約第10回締約国会議」。COPは国際間に条約のある締約国会議(Conference of Parties)のこと。他には、ラムサール条約についてのCOPもある。

 名古屋の「生物多様性条約第10回締約国会議」では、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)やラムサール条約のように、特定の行為や特定の生息地のみを対象とするのではなく、野生生物保護の枠組みを広げ、地球上の生物の多様性を包括的に保全することを目的にする。また、生物多様性の保全だけでなく、「持続可能な利用」を明記していることも特徴の一つである。

 さて、今年の干支である「トラ」はご存じのように絶滅危惧種である。これまで、バリトラ、ジャワトラ、カスピトラなどの種がすでに絶滅している。他のトラはどうなっているだろうか?

 激減100年で20分の1
 アジアを中心に世界各地で生息する野生のトラが、20世紀初頭に比べ推定で3~5%程度にまで激減している。国際自然保護連合(IUCN)や世界自然保護基金(WWF)などがまとめた。WWFは3月まで、ホームページ(http://www.wwf.or.jp/da/)でトラがすむ森林の保全を目的とした寄付を募る。

 WWFなどによると、20世紀の初めには世界で約10万頭のトラが生息していたが、現在は推定で3千~5千頭とみられるという。トラには中国南部からインド周辺に生息するベンガルトラや、極東ロシアに生息するアムールトラなどの亜種があるが、いずれも絶滅の危機に直面している。バリトラやカスピトラ、ジャワトラは、すでに絶滅したと考えられている。

 トラが激減した原因は、毛皮をとったり剥製をつくったりするための狩猟とともに、トラの生息地となる森林の破壊が考えられている。野生生物取引の監視団体トラフィックイーストアジアジャパン(東京都港区)は「東南アジアを中心に、今も密猟や生息地の破壊が続いている」と指摘、「中国などにはトラの骨を薬の原料として用いる習慣がまだ残っており、密猟を誘発する一因になっているようだ。

 野生のトラの頭数は、いまや米国と中国で飼育されている数よりも少ない」としている。(asahi.com 2009.1.1)

 トラとは何か?
 トラは、哺乳類ネコ目(食肉目)ネコ科ヒョウ属に分類される食肉類。全長・体重は、北に分布する亜種の方が大型になる傾向がある(ベルクマンの法則)。また、メスよりもオスの方が大型になる。現存する種はシベリアトラ、アモイトラ、インドシナトラ、ベンガルトラ、スマトラトラがいる。

 森林や藪地などに生息する。地表棲。夜行性だが、昼間に活動することもある。群れは形成せず、繁殖期以外は単独で生活する。オスは数十平方キロメートル、メスは20平方キロメートルにもなる縄張り(縄張りの規模は獲物の量などで変動がある)を形成して生活し、オスの縄張りの中に複数のメスの縄張りが含まれることもある。縄張りの中を頻繁に徘徊し、糞や爪跡を残す、尿を撒くなどして縄張りを主張する。温暖な地域に生息する個体は避暑のため水浴びを好み、泳ぎも上手く、泳いで獲物を追跡することもある。

 食性は動物食で、主に哺乳類(小型から中型のシカ、イノシシ)などを食べるが、大型のシカやガウル、アジアゾウやサイの幼獣などの大型の獲物、昆虫や果実、種子を食べることもある。家畜や人間を捕食することもある。縄張りを徘徊し獲物を探す。獲物を発見すると茂みなどに身を隠し近距離まで忍び寄る。その後獲物に向かい跳躍して距離を詰め、獲物の側面や背面に肉薄した状態から前肢で獲物を押さえつける。小型の獲物に対しては咽頭部を噛み続けることにより窒息死させ、大型の獲物は頸部に噛みつき倒す。獲物は茂みの中等に運んでから食べる。大型の獲物は数日に分けて食べる。

 絶滅危惧種を救え!
 開発による生息地の破壊、薬用や毛皮用の乱獲、害獣としての駆除などにより生息数は激減している。19世紀における生息数は約100,000頭と推定され、20世紀に入ると3亜種が絶滅し1970年代における生息数は約5,000頭と推定された。亜種ごとの生息数に関する調査では

亜種シベリアトラの1998年における生息数は360-460頭(1994年における飼育個体は632頭)と推定
亜種アモイトラの1999年における生息数は20-30頭と推定
亜種インドシナトラの1999年における生息数は1,025-1,785頭と推定
基亜種の1999年における生息数は2,797-4715頭と推定
本種のために自然保護区を指定したり、獲物も含めた生態に関する調査などの保護対策が行われている。(出典:Wikipedia) 

 

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発見!日本列島の真下で「太平洋プレート」二分裂!

2010年01月03日 | 地学

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 日本の真下で何が起きているか?
 去年、2009年の6月、太平洋プレートが日本の真下地下約300kmに沈み込んだところで、真っ二つに分裂していることが海洋研究開発機構の調査で明らかになった。地震がおきるしくみや、地球内部のしくみにはまだわかっていないことが多いが、その謎の1つが解明された。

 日本海溝と伊豆小笠原海溝は両者の接合部でくの字に曲がっている。潜り込む方向が同じでないためプレートが堅さを保っている限り、どこかで2つに割れることは予想できたが、これまで確かめられていなかった。高温高圧下でも海洋プレートが割れたり避けたりする性質を保っていることを示した点で今回の発見は意義がある。

 同機構地球内部ダイナミクス領域地球深部構造研究チームの大林政行主任研究員らは、地震波の到達時間や波形から地球内部の3次元速度構造を求める地震波トモグラフィーを用いて、地下の構造を調べた。

 日本列島周辺の地下は、深さ約410キロまでが上部マントル層で、その下に遷移マントル層、さらにその下に下部マントル層があることが分かっている。潜り込んだ太平洋プレートは下部マントルの部分で潜り込みをやめて水平方向に向きを変え遷移マントル層内に滞留することを、大林主任研究員らはこれまでの研究で突き止めている。

 今回初めて確認されたプレートの亀裂が見られる深さ約350キロ付近の応力を地震波の波形から調べたところ、水平方向の張力がかかっていることが分かった。これはプレートの亀裂が現在でも進行していることを示している、と研究者たちは言っている。(サイエンスポータル 2009年6月1日)

 地震波トモグラフィーとは何か?
 それにしても地下300~600kmの世界を調べた「地震波トモグラフィー」とはどんな方法だろう?

 地震波トモグラフィーとは、地震波の伝播時間を用いて地球内部の3次元速度構造を求める手法のことである。

 具体的には、ある地点で地震が発生したとした場合、震源については、地球上に設置された各地震計が測定したデータを解析することによって震源域がある程度の精度(地震の規模によって、震源域が拡がるため)で同定される。この地震波をコンピュータを用いて解析することによって、地球の断層写真を構成する技術のことである。現在のところ、地球内部を数十キロメートルから数百キロメートル(300km)の格子で撮影したのと同じ程度の精度である。

 地震波の伝わる速度は、地球内部の温度差や物質の成分の違いによって変化する。P波の伝わる速度が1%違えば、約100度の温度差があると考えられ、P波の伝わるのが遅い部分は高温で、早い部分は低温であると考えられ、それらを画像化することによって地球内部の構造を明らかにしようと試みられている。

 プルームテクトニクスの発見
 日本付近では、太平洋プレートの沈み込みによって上部マントルと下部マントルの間にスラブが発生していること、また沈み込んだプレートが「メガリス」となって下部マントル内に沈み込んで、コールドプルームになる一方、太平洋にスーパーホットプルームが発生し、タヒチやハワイがホットスポットになっていることなどはプルームテクトニクスの「証拠写真」として注目されている。

 マントルに沈み込んだスラブは、深く沈み込む前に、上部・下部マントル遷移層内に一旦滞留する(スタグナントスラブ)傾向があることは知られていた。日本海溝や伊豆小笠原海溝から沈み込んだスラブもこうした傾向にあり深さ660kmの上部-下部マントル境界の上でほぼ水平に滞留している。

 スラブの滞留とそれに続く下部マントルへの崩落の過程は表層プレートの運動史を理解する鍵であると考えられているが、スタグナントスラブ自体の力学的性質やスラブが滞留するときどんなことが起こるのかはこれまで分かっていなかった。

 スタグナントスラブとは何か?
 西太平洋域の地震観測網のデータを解析する等で地震波トモグラフィーの分解能を向上させたところ、日本海溝-伊豆小笠原海溝会合点下でスラブを示す地震波高速異常に鮮明な間隙があることを見出した。

 間隙は近畿地方下深さおよそ300kmから黄海下深さおよそ700kmにわたり見られた。この間隙はスラブの中で発生するはずの深発地震の空白域と一致し、スラブの裂け目を意味している。

 日本海溝と伊豆小笠原海溝は「く」の字型に曲がってつながっており、スラブもまた「く」の字型に沈み込んでいる。そのようなスラブがマントル遷移層に突入して水平に曲がるためには、会合点でスラブは裂けて隙間を作るか、液体のように流れて遷移層に溜まるかのどちらかである。

 今回のスラブの亀裂の発見は、マントル遷移層内でスラブは流れたりせず、地表のプレートと同じように割れたり裂けたりすることを示したもので、スタグナントスラブの力学的性質を観測から明らかにしたものである。

 また地震波形の解析から、深さ350km亀裂の先端付近ではスラブ内の応力場が沈み込む方向に平行な圧縮場である周囲と異なり、水平方向の張力場であることが示され、これは現在でもスラブの亀裂が進行していることを表している。

参考HP 海洋研究開発機構 「世界初!太平洋海洋プレートに亀裂を発見!」  ・Wikipedia「プレートテクトニクス」「プルームテクトニクス」

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