とても愉快で、爽快なコンゲーム、そして復讐劇。
毒を以て毒を制す作戦、一夜で読了。面白かった。
考えなくても絵が浮かび、終章まで一気に読める、久々に感じた読む楽しみだった。
* * *
時は、戦後の混乱期。
何とか財閥の末席に名を連ねている灘尾儀一朗は、米穀商の娘に目をつけた。娘を自分のものにするために悪辣な仕手戦を仕掛けた。
世間にも認められるほど手堅い商法で財を築いていた米穀商は、破産し、灘尾に囲われた娘は自殺した。
一高に通っていた長男の瀬戸俊介は、両親の死後退学し東北の寺に入ったが、姉の遺書が届いたとき、彼は復讐を決意して還俗し、大阪に戻ってくる。
そこで、父の唯一の遺品を古物商に売る。
知恵を貸したのは、偶然知り合った春日という自動車修理業の男だった。
丸山応挙の軸が一万円の値で売れた、それを元手に春日の元に身を寄せる。
春日は、詐欺師というウラの顔を持っていた。仲間は個性的な面々で、表立っては皆、修理工だった。
春日に打ち明けて、必要な資金を提供して灘尾破滅作戦が始まる。
声帯模写のミミック、情報屋のインテリ、結婚詐欺師のジゴロ、事務と料理担当の智恵。個性的な人物が活躍する。
仲間の特技を生かし、大掛かりな仕掛けで灘尾をはめることになる。
財閥の中でも末席にいる灘尾はどうにかして、政府と手を結び関西の大手財閥にのし上がりたいと思っている。
電気事業で、新しい開発をし、軍需面で遅れている政府に繋がり、受注を受けて事業を成功させたいと思っている。
そこを狙って春日達が動く。
いくら緻密に計画しても偶然の隙は出来る。
予想しなかった出来事にもであう。
* * *
計画が成功するかどうか、実行間際のスリルは、読んでいても緊張した。
最初から、寺を離れるところから、すでになにか仕掛けが有ったらしい、話の展開も予想しなかっただけに、終わりの部分では思わず手を打った。
ストーリーの進行だけに終わらない味付けがまたいい。
にほんブログ村 書評・レビュー