2011年11月発行だから、話も新しい。それでも490ページは長いので、話は相当多岐に亘る、登場人物も多いのかと思ったが、まったく見当はずれで読みやすかった。
読みにくい名前に慣れたということもある。
* * *
ミレーデ・ルンゴー事件を解決して、特捜部Qのカール警部補は名前を知られるようになっている。
ノルウェーから視察団がくるということで、地下の部屋を整えるのに大童、そこに新人のパンク頭の女性ロースが配属されてくる。一癖ある彼女もカールにとって悩みの種になりそうだった。が、なぜかアサドとは気が合い、カールの課題も軽くこなす。なかなか有能なところがあった。
今回の特捜部Qは、富裕な家庭の師弟が通う寄宿学校で20年前に起きた事件を調べる。
犯人は10年前に自首して収監されている。しかしカールの机の上にはどこからか来たのか分厚い事件関連ファイルがあり、犯人にもいささか疑問がある。
この事件は根が深いように感じられた。
20年前に兄妹が殺され、家庭は崩壊した。妹のボーイフレンドは警察官になっていた。
当時の家を訪れたカールは廃屋を調べ、事件から手を引こうとした。犯人は自首しているのだ、アサドは言った「理解できません。」「だって被害者のために何か出来るのはわたしたちだけではありませんか。」
寄宿学校の卒業生たちは、それぞれ事業で成功し、親から譲られた以上の名声を得、社会の上層部に大きな影響力を持つようになっていた。
現在でも、当時の事件に関わった5人が集まって、余暇は広大な土地に建つ別荘で過ごし、株取引で成功したウルレクが、世界規模で集めた猛獣や鳥などを放して狩り、そこでさまざまな犯罪隠匿の相談をしていた。
彼らは寄宿生時代から、弱者を見つけて殴打し死に切れないものには大金を渡して口を封じ、死んだものは密かに処分していた。
寄宿生仲間にキミーという女性がいた。彼女はグループの中でおとりになって被害者をおびき寄せ、罪の意識なく最後には死ぬほどの暴行を加える役だった。
しかし、仲間に犯され妊娠する、子供に愛情が芽生え始めたころに、妊娠を封じたい仲間に暴行を受け流産する。その後、その恨みから身を隠し、仲間を狙い始める。
使いきれない財産を犯罪に使い、異常な性癖を満足させてきたグループをカールたちは追う。
キミーも狙っている。
カールは類似の事件から手がかりをつかむ。
邪魔者は仲間でも殺す犯人たち。犯罪捜査は徐々に絞られ、「Q]とキミーは命の危険を感じつつ最後の戦いに臨む。
* * *
文中に交互に現れる犯罪者たちの現在と、カールたち特捜部の捜査。
社会では学閥になっている、寄宿生たちのかばいあう関係は、警察の中まで及んでいて妨害に会い、捜査は難航する。
猟奇的なおぞましい話が延々と続き、このシリーズを読み始めたのは選択ミスではないかと思うほどだった。
今回はこの点で少し私的な評価が下がる。でもあと一作出ている。やはり締めとして読んでおこうかなと思っている。
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