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「儚い羊たちの祝宴」 米澤穂信 新潮文庫

2014-12-10 | 読書


日常のダークな部分に少しずつ足を踏み入れていくような展開で、特異な世界が重い。

名家の女子が入る学校に「バベルの会」という読書サークルがある。入会の目的は違うが、一つのよりどころにはなっている。
5編の短編をつなぐキーワードになっているが、それが重要であったりなかったりしながらそれぞれを繋いでいる。

身内に不幸がありまして
<夕日の日記>広大な屋敷に住むお嬢様が大学生になっり「バベルの会」に入った。会は夏休みに蓼科高原の別荘で読書会が行われていた。お嬢様はとても楽しみにしていると言っていたが、毎年その日の前になると不幸な事件が起きるのだった。

北の館の罪人
屋敷の北に別館があり、そこに家督の相続を嫌った長男が住んでいた。火事に遭い身寄りのなくなった異父妹が世話をすることになった。別懇は外出が出来ない造りになっていたが、妹は許されて鍵を開けて出ることが出来た、長男の画材などを頼まれて買ってきていた。長男は引きこもって青い絵を描き心身をすり減らして死んだ。

山荘秘聞

山荘の管理人になった、隅々まで完璧に保って一年が過ぎた。全てに不足はなかったが、誰も尋ねてこなかった。接待には自信があったし接待のマナーも身についていた。前職では、子供の友達が泊りがけで来たり、接待する客もあった。誰も来ない冬だった、散歩に出て、滑落して倒れている男を助けた。山岳会の捜査メンバーがやって来た。やっと完璧な世話をすることが出来る。

玉野五十鈴の誉れ

男子の世継ぎに恵まれない家だった。跡継ぎとされる純香は淋しく暮らしていたが、世話係の玉野五十鈴が来た。同じ年だったが、彼女は全てに出来がよく知識も深かった。頼りになる友人になり、学校にもついて来ていいことになった。
しかし入り婿の父の実家で犯罪が置き父は家を出された。再婚した母は男の子を産んでから、純果は厄介者になり、五十鈴は台所係にされてしまった。
だがすくすく育っていた弟が事故で死んだ。

儚い羊たちの晩餐

荒れたサンルームに入ってみると、荒れたテーブルの上に一冊の本が置いてあり開いてみた。「バベルの会」を除名された鞠絵という名の女の子が書いたものだった。
父親は世間体を気にする俗物だったので、客をもてなすために料理人を雇った。「夏」という女性は若かったが腕がよく料理は絶品だった。だが大量の食材を仕入れ、より抜きの部分だけを使うというやり方だった。けちだった父は客に自慢するために眼をつむっていた。
アルミスタン羊料理の食材探しに、蓼科に出かけていた「夏」が帰ってきた。その羊は唇を食べるのだという。

訪問者は読み終わった本を伏せて椅子を立った。そのとき「バベルの会」の後継者が生まれたのだった。


日常の中にうまく組み込まれた恐怖が最後に不気味な形になって話が終わる。解説によると、伏線は様々なミステリの一部を思い出させるような形で、アルミスタンの羊というのもミステリファンならピンと来るのだそうだ。
知らなくても楽しめるそうなのだが、私はピンとこなかった、それでも十分面白く恐ろしかった。


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