空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「一瞬の光」 白石一文 角川文庫

2014-12-24 | 読書

大手企業の出世頭として嘱望されていた橋田浩介は、派閥抗争に破れた。それはトップに君臨して会社を牽引していた人物の裏切りだった。彼の手腕を認めた反対派の誘いがあったが、彼はそれまでの闘志も意欲も失ってしまっていた。
面接官として出会いバーで二度目の出会いをした香折が、男に絡まれているたのを助けたことでかかわりが出来る。
辞表を出した後も、複雑な生い立ちをした香折が気にかかり、何かと面倒を見る羽目になる。
浩介には上司の縁続きの女として完璧な彼女、瑠衣がいた。人が振り返る美しさと聡明さを持ち絶品の料理まで作る。ひたすら愛し続けてくれる彼女はいたが、孤独で人生を投げたような香折が常に気になっていた。

彼は、辞表を出した後でも、理想的な家庭を築けそうな瑠衣との人生を選べば、社内でも安定して昇進していけただろう。別の道を選んでもそれでも着いて行くと瑠衣はいっていた。

作者は瑠衣の美しさ純粋な愛情を浩介にぶつけてくる。そして親と兄からDVを置け続け、欝に悩み、今でもおびえて暮らす香折が常に心にある浩介を書く、女として愛しているのではない、瑠衣を置いてでも香折には手を差し伸べねばと思っている。

エリートとして抜擢された地位が揺らぎ、会社経営の暗部を見てしまった、確かに現代社会には明るい面は少ない、彼はそれを是として飲み込んできたが、わが身に及んだ深い人間不信の感情は、拠って立ってきた大きな柱を微塵に砕くものだった。

生活はそう純粋な温室で育つようなものではない、濁った水に揉まれていると、澄んだ流れに出会うこともある。

読者としては、孤独な戦いをしてきた浩介に瑠衣という贈り物をささげたくなる。香折は兄に襲われ人事不省から回復しても意識がいつ戻るかわからない。浩介に関わって欲しくないと読みながら思う。

浩介の決断は作者の書くという姿勢が見える。

非の打ち所のない瑠衣と傷だらけの香折、どちらに寄り添って生きるか。感動的な幕切れを書いた、白石という作家が世に出た読み甲斐のある作品だった。

社内の抗争、政治がらみで経営の深部までの話は浩介の立場を現すものだろうが、結果的に人間性を探るものならもう少し簡単でもいいような気がした。

たがそれは欲張りな感想で、この作家のものをもう少し読んでみたくなった。







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