空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「さがしもの」 角田光代 新潮文庫

2015-05-09 | 読書


昨日読みかけた本に、文章について書いてあった。単語というレンガを積み上げたかたち、それが文章である。確かに日本語の文章はそういう構成で出来ている。そして一編の作品はその集合体で出来ている。

なぜ本を読むのか、読んだ後、なぜ勝手にいい本だ、心に残る本だと思うのだろう。

無数にある単語の中から作者が選んだ、一つ一つの言葉が好きで、出来上がった文章が好きで、そして一編の物語になった時、それがぴったり合った好きな作品になる。

好きな言葉があり好きな文章になっていて、それを読み終わると何かすっと腑に落ちた気持ちがする、その上作品に同化して溶け込む感じがする。優れた作品からは作者の言いたかった、作品に託した心が、選ばれた言葉のつながりから立ち上って、迫ってくることがある。

たまには硬質な文章が、美しい新しい造形を形作っていることがあっても、それらを読んで、言葉を越えた共感を持つことが出来たときが読書の楽しみと言うのだろう。


「さがしもの」はそういった作品だった。
一冊の本が、手に取った人たが手放した(売ってしまった)後、人の手から手に渡り、旅をする話、偶然に、旅先でめぐり合う話、一緒に暮らしていた間本棚にあった本を、別々の箱につめていく話。
本に愛着を持つ人たちの、本に寄せる思いに、自分の特別な本を思い浮かべる、本とともにあった時間を思い出す、それぞれの形が、9編の短編になって結実している。
久し振りに本を読むことを考えさせられた良書だった。

角田さんは、長編を何冊か読んで、どうも世界が合わない気持ちがしていたが、初めて本質に触れることが出来たような気がした。次からは新しい気持ちで作品が読めるだろう。いい本を読んだ。



目次

旅する本
だれか
手紙
彼と私の本棚
不幸の種
引き出しの奥
ミツザワ書店
さがしもの
初バレンタイン

中でも

「旅する本」 
日本で売った本と何度か海外の本屋で再会する。

「彼と私の本棚」
年下の彼に好きな人が出来て別れることになった。本の趣味が似ているところもあって二冊あるものもあった。二つに分けて新しい生活が始まった。私は彼と共有した時間を彼も新しい本棚の本の中に見つけるつづけるだろう。二人で買った続き物の漫画は、途中で切れたり抜けたりしてしまったけれど。

「ミツザワ書店」
本が出たら書店のおばあさんのに店に行き、昔盗んだ本の代金を返したいと思っていた。だが

「さがしもの」
入院している祖母が、本を探せといった。どこにもないというと「探し方が甘い」と怒った。遠い街の古本屋にもなかった。おばあちゃんは亡くなったが、幽霊になって催促に来た。大学生になって学生街にある古書店でよばれた気がした、そこに探していた本があった。でももうおばあちゃんは出てこない。読んでみてなぜその本だったのか、わかった気がした。

「初バレンタイン」
初めてバレンタインの贈り物を探した。チョコレート屋では殺気だった人たちに押し出され、考えあぐねて本に決めた。気に入ってもらえるだろうか。心の揺れが瑞々しい。


本が好き、読書が好き、読んで入り込んでいく魔法のような世界が好き。あとがきエッセイにはそういった角田さんの思いが詰まっている。



  
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寺田寅彦となんじゃもんじゃの花

2015-05-07 | 読書
  寺田寅彦となんじゃもんじゃ(ヒトツバタゴ)の花



 若葉のかおるある日の午後、子供らと明治神宮外苑(めいじじんぐうがいえん)を ドライブしていた。ナンジャモンジャの木はどこだろうという話が出た。昔の連兵場時代、 鳥人スミスが宙返り飛行をやって見せたころにはきわめて顕著な孤立した存在であったこの木が、 今ではちょっとどこにあるか見当がつかなくなっている。
 こんな話をしながら徐行していると、 車窓の外を通りかかった二三人の学生が大きな声で話をしている。 その話し声の中に突然「ナンジャモンジャ」という一語だけがハッキリ聞きとれた。 同じ環境の中では人間はやはり同じことを考えるものと見える。
 アラン・ポーの短編の中に、いっしょに歩いている人の思っていることを あてる男の話があるが、あれはいかにももっともらしい作り事である。 しかしまんざらのうそでもないのである。

寺田寅彦随筆集 藤棚の陰から






GWなので買い物に行くにも道が混んでいて時間がかかった。よし、と言うので最近出来た新興住宅地の中の道を通り抜けることにした。が大失敗、突き当たりになったり回っているうちにもとの道に帰ってきたり、散々苦労して見慣れた道路に出たときはほっとした。
しかし、中を通っているちょっと広い道には、白い花を一杯につけた街路樹があった。
あ!!あれこそは、長い間探していた「なんじゃもんじゃ」ではないか。図鑑で見た白い細い花びらが揺れている。車を降りると足元に白い花が散って積もっている。

今日は幸いうす曇、カードよしっ、バッテリーよしっ。ルンルンで出かけて、予備も含めて20枚ほど写してきた。

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弘川寺に「西行墳」を訪ねて 2015.04.04

2015-05-05 | 山野草
桜の季節はもうとっくに終わりましたが、やっと写真を編集しました。

南河内河南町にある弘川寺までは少し遠かったですが、どこも桜が満開で、ドライブ日和でした



 
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