Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(201)

2017-04-08 07:33:23 | コラム
ろーあんぐ「る」→「る」ーぷ(ループ)

傑作コメディ『恋はデジャ・ブ』(93…トップ画像)のように、同じ1日が繰り返されたとしたら、どうだろう。

気象予報士のフィル(ビル・マーレイ)は、ある年の「2月2日」を繰り返し経験することになる。
「皆と」ではなく、「たったひとり」で。

同じ日を繰り返す1日目は、当然のように半信半疑。

きのうと同じ人物に、きのうとまったく同じ内容のことを話しかけられて「デジャ・ブか? こんなこともあるのか」と思う。

デジャ・ブとは仏語で、既視感の意。

2日目と3日目は「壮大なドッキリか?」と周囲を疑い、イライラが募っていく。

それにしては周囲の人物が、あまりにも自然だ。

5日目あたりで「自分だけが経験している、同じ日」であることを確信する。

「世界で、ただひとり」であることから、「世界でいちばん、きょうの天気」をいい当てられることが出来る。

さて、これを応用し、人間関係を改善することが出来るのか―という物語。

監督は『ゴーストバスターズ』(84)の一員でもある、ハロルド・ライミス。

不愛想なビル・マーレイは好演、知性が際立ち可愛げのないキャラクターが多かったアンディ・マクダウェルも、この映画にかぎっては「モノスゴ」チャーミングに見える。





自分だったら、どうだろう。

(たぶん)ずっと死ぬことがないし、失敗したことを修正出来るので、ラッキー♪ と思えるかどうか。

そう思える期間は確実に訪れると思うが、やっぱり、そのうち退屈を感じる気がする。

その感情を、皆と共有出来るのだとすれば、まだ耐えられるだろうけれど。。。


この、現実的とはいえない「時間軸を操作する物語」を総称して「ループもの」という。

loopとは、輪の形の意。同じことを繰り返す際の比喩としても用いられ、若いひとは「無限ループ」みたいなことばを使うこともある。

気をつけたいのは、タイムトラベルを扱った作品がすべて「ループもの」と呼べるわけではない、、、ということ。

「かつて起こったことの再現」がないとね。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)は、「ループもの」ではなく「タイムトラベルもの」に見えるが、クライマックス直後に、再びドク襲撃シーンが描かれていることから、ぎりぎり「ループもの」と呼べると思う。


小説で最古の「ループもの」は、SFの雄H・G・ウェルズによる『奇蹟を行う男』とされている。

時間を巻き戻す能力が備わった男の物語。

個人的には、北村薫の『ターン』を想起する。



1日を繰り返すという設定は『恋はデジャ・ブ』と同様だが、「無人状態」という背景は絶望的だなぁ。


押井守の名前を一躍有名にしたアニメーション映画、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(84)。




学園祭の前日が繰り返されるという物語。

同時上映は、たしか吉川晃司の『すかんぴんウォーク』で、自分はこっちを期待して観に行ったのだが、押井ワールドにまんまとハマった記憶あり。


じつは実写映画においては、「タイムトラベルもの」は多いが、「ループもの」は少ない。

テロ発生の8分前に時間を引き戻す『ミッション: 8ミニッツ』(2011)のような作品もあるにはあるが、
ほとんどの映画ファンが「ループもの、といえば」の問いに、『恋はデジャ・ブ』と答えるはずで。

その割には一般のひとに知られていない、もったいない映画なのである。


あすのしりとりは・・・
るー「ぷ」→「ぷ」ろれす。

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明日のコラムは・・・

『シネマしりとり「薀蓄篇」(202)』
コメント (1)
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