Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

映画監督別10傑(52)熊井啓

2019-06-03 00:10:00 | コラム
~熊井啓のキャリア10傑~

にっかつ撮影所で、晩年の熊井啓監督に会ったことがある。

A定食を孤食していた。
孤食しているひとのなかには「話しかけないでオーラ」を出しているひとも居るが、熊井さんはちがった(ように見えた)。

だから話しかけてみたんだ、新作の撮影か編集ですかと。

すると、「いやいや。ここが好きだから、用もないのに食べに来るんだよ。定食そのものは、たいして美味くもないけどね」と笑った。

こんな経験があるから、「社会派」一色の訃報に違和感を抱いた。

社会性の強い映画は撮っていたが、本人は笑いながら毒の吐ける親しみ易いひとだったのだ、、、って。

そういうことを書いてくれているライターがひとりも居なくて、これじゃあ生真面目な映画監督としか認識されないじゃないか!! と納得がいかなかった。

作品だってね、単に重いだけじゃなく娯楽要素もきちんと盛り込まれているのだから、映画を学ぶ学生だけが観る教科書にしちゃいけないと思うんだな。。。


(1)『海と毒薬』(86)

最も脂がのっていたころに撮った、熊井映画の最高傑作。

米兵捕虜を臨床実験の被験者としていた「九州大学生体解剖事件」に材を取った、遠藤周作の名著を映画化。

※奥田瑛二は現在と同じ顔をしているが、渡辺謙の顔がぜんぜんちがう!



(2)『帝銀事件 死刑囚』(64)

監督デビュー作。



12人が殺害された「帝銀事件」を徹底取材、実録風に物語を展開しながらも平沢死刑囚の冤罪を支持した創りは批判も浴びた。

(3)『黒部の太陽』(68)

最もポピュラーな熊井映画といっていいでしょう。

なんといっても、三船敏郎と石原裕次郎という二大スターが共演したビッグバジェットだから。

外国映画にたとえていうと、ポール・ニューマンとスティーブ・マックィーンが共演した『タワーリング・インフェルノ』(74)みたいなものかな。

(4)『忍ぶ川』(72)

栗原小巻の可憐さを眺めているだけで飽きないが、物語そのものも、若い男女の恋愛を優しい視点で見つめつづけキュンとさせてくれる。

(5)『深い河』(95)

遠藤周作、晩年の代表作の映画化。

じつは物語そのものははっきりとは覚えていないのだが、秋吉久美子がふだんの演技とはちがう一面を見せていて驚いたことだけは覚えている。



(6)『千利休 本覺坊遺文』(89)

井上靖の小説を映画化。

この年は勅使河原宏による『利休』も公開されたが、映画としては熊井版のほうが「断然」よかった。

ただ、利休を演じた三國連太郎は、熊井版の三船より似合っていたと思うけれど。

(7)『サンダカン八番娼館 望郷』(74)

いわゆる「からゆきさん」の半生を丹念に描き、知られざる近代アジア史を照らす。

こういうのこそ、映画を学ぶ子たち以外にも観てほしいんだ。



(8)『日本の黒い夏─冤罪』(2001)

「松本サリン事件」を通報した河野義行氏が、いかに「第一容疑者」にされたかを多角的に検証していく。

熊井版の『それでもボクはやってない』(2006)を観たかったかも、、、と思う。

(9)『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』(81)

「国鉄三大ミステリー事件」のひとつ、国鉄総裁が死亡した「下山事件」の謎を新聞記者の視点で描く。

菊島隆三による脚本が冴えわたり、一級の娯楽作としても完成されている。



(10)『愛する』(97)

新生日活の第1回作品であり、自分が熊井監督に会ったのは、それから2年後くらいだったと記憶する。

遠藤周作の『わたしが・棄てた・女』を映画化したものだが、はっきりいえば成功作とはいえない。

いえないが、なんだか憎めない作品だったりするのよね。

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明日のコラムは・・・

『PFP』
コメント
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