僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

PSS…⑫

2017年02月01日 | ケータイ小説「パトスと…」

イラスト=samantha french

 

 

 

 

 

何度同じことを話しても嫌な気分になるどころか、繰り返しを楽しんでさえいた。
もちろんそのことを指摘したり、とがめたりしないように心がけた。

父には散々に言って、ほとんどいじめにも似た苦い思い出があったからだ。


 

「だからそうじゃないっていつも言ってるだろう、それはさっき聞いた、
何回同じことやってんだ、昨日も言ったよそれ、
ったくボケがが進んでるって言ってるんだよ」

その都度苦虫をかみつぶしたような顔をして、聞いてないと言い訳を繰り返していた。

ユキオが何度も暴言をぶつけたのは、壊れていく父を見ているのが悲しかったからだ。


やがて反論も言い訳もしなくなり、うつむくだけになった。

 

しぼんだような顔でベッドに横たわったまま、
毎日を同じように夢うつつに繰り返すようになってしまったと気づいた頃
やっと父の苦しみを少し理解することができるようになった。

もっと他の言葉が無かったのか考えられるようになった時、
父はもうほとんど言葉を失っていた。


 

「やっぱりあの人変でしょう?」

ゆきさんは顔をしかめながら言った。

「認知症だと思うよ、認知症ってそういうものだから大丈夫、
危ない人じゃないから、そうですかそうですかって返事してればいいんだよ」

「でも若い女の子がかわいそうだし…」

「今度また若い娘が狙われてたら、僕が行くから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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