「いい加減に言うこと・・・って、全く何回・・・ば気が済むんだ」
「・・・・・」
鬼コーチの言う「婆さん」に言っているようだ。
「婆さん」とは鬼コーチの母親で97歳、隔日にデイケアの施設に
通っていると聞いているが、今日は休みの日なのかも知れない。
何か会話をしているようだが、ユキオ達には聞き取れない。
玄関に近づいたが激しい声にチャイムを押すのをためらった。
「臭いから取り替えろよ、パンツはけって言ってるんだよ」
「パンツはいてるよ」
「それじゃない、俺が渡した紙パンツだよ、置いといただろ」
「知らないよ」
「知らないよじゃない、渡したろ、あれだよ」
「・・・・・」
「朝からまた漏らしたろ、それ履いてれば漏らしてもいいんだよ」
「漏らしてなんかないよ」
「分かんねぇのか、いいから取り替えてパンツ履いてこい」
「汚れてないよぅ」
「こないだも臭いと思ったらしてたろ」
「なんだい」
「うんこ漏らしたろ、その時のパンツどうした?」
「そんなの知らないよ」
「トイレの便器にべっとり付いてたよ、拭いといたけどな」
「知らないよ」
「もういいけど汚れたら隠すのやめろよ、どこへやったんだ」
「そんなことしてないよ」
「してるから言ってんだよ」
「なんだい人をバカにして」