「ゆきさん、時間大丈夫?」
「うん、全然」
「だったらもうチョット遠回りしてもいい?」
「なに?いいけど、何か用事あるの?」
「こっち行くとさ、鬼コーチの家が近いんだ、
ついでにチョット見てかない?」
「あら、知ってるの?じゃぁ行ってみよう、
そう言えば鬼コーチ今日プールに来てなかったね」
「そうだね、多分出かけてると思うけど、家の場所だけ教えてあげる」
「結構近いんだ、鬼コーチも歩いてくるんだっけ?」
「いや、車だよ、スポーツカー、乗せてもらったことあるよ」
「え~そうだったの、あの年でスポーツカーなんだ」
「おもちゃだって言ってたけどね、車が趣味みたいだった」
「そうなんだ、年とってハーレーとか乗る人もいるしね」
「
そこ曲がってすぐ橋を渡ったとこ、あの木がいっぱいある家だよ」
「はい、あっあの赤い車の所がそうかな?」
「そうそう、コペン、もう一台白のワンボックスももそう、
家にいるみたいだね、鬼コーチ」
「行ってみようか?こんにちはって」
「挨拶だけしに寄ってみよう、せっかくだし」
「でも家にいるかな?」
路上に駐車し、ふたりで玄関に向かった時だった。
突然、怒鳴り声が聞こえてきた。
「だから・・・しろって・・・だよ」
鬼コーチの声だが、こんなにトゲトゲした声は聞いたことがない。
二人は顔を見合わせた。