僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

PSSⅡ…②

2017年02月05日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

「あっイテッ、結構派手にぶつかっちゃった、ごめんなさ~い」

立ち止まってすぐに謝るユキオだが、相手はそのまま泳ぎ続けて行ってしまった。

 

「よかった、また怒られるのかと思った」

偏屈な老人に怒鳴られたことを思い返し冷や汗が出た。
相手のスイムキャップを覚えておいて気を付けようと思った。

 

歩きコースに戻って一回りしたところで
「ようっ」
と声をかけられた。見るとさっきぶつかったスイムキャップの人だ。

 

うわっ、やばっ…


「さっきはどうも済みません、痛かったでしょう?」
先に謝っとくことにこしたことはない。

「あぁ何でもない、だいたい1つのコースなのに2人泳ぐんだから
ぶつかっちゃうのは当たり前さ」
「あっ、はい、でも済みませんでした」

「どっちが悪いってこともないしな」
「そうですよね、でもすごく怒る人もいますし」

「そうみたいだねぇ、まったくなぁ」


 

ユキオは相手の寛大な反応にむしろ驚いた。

 

「みんな先輩みたいな方だといいんですけど」
「ははは、年取ると怒りっぽくなる奴もいるからな」

「先輩はおいくつなんですか?」
「俺か?71だよ、ここじゃぁ平均的だろ」

「71歳が平均なんですか?」
「いや調べた訳じゃないから分からんけどな、大体そんなもんだろ」

「それじゃぁもっと上の人も来てるんですか?」

 

男はゴーグルを目からはずして周りを見渡した。

 

「ほれ、向こうのコースでおしゃべりしてるおばさんがいるだろ、
あの黄色いキャップの人」

「えぇ、はい」
「あのおばさんは79だってさ、今で言うあらエイティーだな」

「え~っ、すごいですね、さっききれいに泳いでましたよ」
「だろ、ナベちゃんって言ってな、ここの主みたいなおばさんだな」

 

「みんな愛称で呼ぶ仲間なんですね」
「ここだけの付き合いだから、名前なんか聞いてもすぐ忘れちゃうしな」

「とっても80には見えませんけど」
「そこが女のすごいところだ、男よりずっと長生きだからな」

 

そう言って笑う男もはつらつとしている。


「先輩だって71には見えませんよ」
「そうか、んじゃいくつだ?」

「えっと10は若く見えます」
「そっか、だけど若く見えるっていうのは年寄りに言う言葉だからな」

「そうなんですか?」
「君は若く見えるなんて言われないだろ?もともと若いんだから」

「あぁ、まぁそうですね、ここでは若造ですね」
「おれも仕事辞めてもう10年だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
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