(いつもよりもっと暗くしたい!・・・)
蝋燭の灯のもとで濃茶を練って差し上げるのが好きですが、今回はいつもよりもっと暗くしたい!と思いました。
だいぶ前になりますが、香川県直島の家プロジェクトで訪れた「南寺」(ジェームス・タレルの作品)の暗闇が心に浮かんできたのです。
真っ暗闇の中、しばらく静かに座っていると見えてくる幽かな明かり、目が闇に慣れてくるとさらに明るく感じられるという、不思議で魅力的なタレルの作品でした。お正客さまがタレルの「南寺」をよくご存じで、私の思いに反応してくれて嬉しかったです。
「南寺」のような真っ暗闇の中での席入りは無理なので、蝋燭の灯りを最小限の2つに絞りました。床の小灯しと点茶盤の南蛮人燭台です。
(床に小灯しを置きました)
(明るくするとこのような・・・お軸は「洗心」)
(後座の灯りは2つにしました)
(明るくするとこのような点茶盤の設えです)
後座のお軸は「洗心」、紫野・雲林院の藤田寛道師のお筆です。
このお軸を掛けると、清々しくも身が引き締まる思いがします。
今年1年に心に溜まった様々な悩み、葛藤、焦り、欲望などを洗い流して、新たな気持ちで新年を迎えられたら・・・と。
2つの灯の中で濃茶を練って差し上げました。
点前座は思ったより明るく、見えると思っていないので特に不便や失敗もなく濃茶を練ることが出来ました。
赤楽茶碗と黒楽茶碗を用意し、赤楽茶碗で1人分練ってお正客さまに、黒楽茶碗で2人分練って次客さまと半東AYさんに飲んでいただきましたが、「お服加減はいかがでしょうか?」 濃茶は「星授(せいじゅ)」(八女の星野園詰)です。
赤楽茶碗は長次郎の「木守」写(6代左入作、15代直入極)、黒楽茶碗は長次郎の「喝喰」写(昭楽作)です。
うす暗い闇の中で赤楽茶碗と黒楽茶碗をどのように感じられたでしょうか?
なぜ利休さんは赤楽茶碗と黒楽茶碗を長次郎に造らせたのだろうか?
・・・など、茶碗を拝見して頂きながらあれこれお話ししました。
茶入は朝鮮唐津の胴締め(鏡山窯、井上東也造)、仕覆は織部緞子です。
茶杓は銘「たんちょう(丹頂→誕生)」、紫野・藤井誠堂師の御作です。
最後に、教会の蓋置(長崎三彩)も拝見に出しました。
濃茶に続いて干菓子が運ばれ、半東AYさんのお点前で薄茶を差し上げました。暁庵が半東ですが、最初から空いている喫架に座らせていただきました。
美味しそうに点てられた薄茶を運んだり、お客様のいろいろな質問に応えたり(濃茶では遠慮してくださっていたので・・)、忙しいけれど楽しく親しく交流が深まる時間でした。
「お席に入った時からお尋ねしたかったお花のことをやっと聞けました!」と正客SKさま。きっといろいろなお心遣いをしてくださったのね・・・と胸が熱くなりました。
(赤いダリア、ユーカリ、白いピペリカム、もう1種は?。中村錦平造の釣り花入に生けました)
薄茶の茶碗は、御本三島(箱書はありませんが、一番お好みかも・・)と雲鶴青磁の馬上杯です。茶碗を代えて薄茶を楽しんでくださいました。
「半東さんが点ててくださった薄茶がとても美味しいです。お上手ですね!」と褒めてくださり、嬉しかったです
薄茶は「舞の白」(星野園)、干菓子「ホワイトクリスマス」(鶴屋吉信製)と「ともしび」(ショコラ ベル アメール(Chocolat BEL AMEL)のオランジェット)がとても好評で、こちらも半東さんのチョイスでした。
(茶器や茶碗・・・次客Yさまの礼状より掲載)
薄器と茶杓の拝見が掛かり、後は半東に任せて、暁庵は露地に足元行灯、躙り口に手燭を用意し、雨戸を1枚開けてから茶室へ戻りました。
薄器は紅毛写茶器、茶杓は濃茶と同じ「誕生(たんちょう)」です。
名残惜しく、いつまでもこのまま居てほしい・・・と思いながら、最後のご挨拶をしました。
茶道口の襖を締めると、赤い帽子をかぶった可愛いサンタクロースが廊下で待っていたので再び中へ入り、
「今ちょうど、サンタクロースがやってきたようですよ!」
あとはサンタさんにお任せして失礼しましたが、何やら歓声が上がっていたような・・・。
足元行灯が照らす露地を通リ、うす暗い待合へお戻り頂きました。
お見送りは喚鐘にて・・・。
こうして「令和6年クリスマス・飯後の茶事」が心の中に何か大きなものを残して終了しました。
SKさま、Yさま、半東AYさん、楽しい愉しい茶事をありがとうございました! まだ続きます)
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