暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「どくだみ茶会」-1

2014年06月17日 | 思い出の茶事  京都編
            (写真がないので、我が家のどくだみですが・・・)

某家庭茶事の会・Kさんの「どくだみ茶会」へ招かれました(押しかけた?)。

Kさんの茶会が大好きで、何回か(4回目?)伺っていますが、
京都滞在中に親友Kさんと一緒に、もう一度行きたくなりました。
(何故何度も行きたくなるのか・・これについては後ほど書きます)
1回目2回目3回目・・・そして4回目)

・・・お願いすると、Kさんはしばらく考えてから
「折角いらっしゃるのなら、どくだみが咲く6月初旬にいらしてください。
 大好きな「どくだみ茶会」でお迎えしたいので・・・」

「どうして「どくだみ茶会」なのかしら?」
不思議に思っていると、Kさんから次のようなメールが届きました。

 
   数年前、憧れの聖フランチェスコに献茶をしたくて
   友人と2人でアッシジを訪れました。
   帰国後、畑の片隅に咲いていた「どくだみ」の花が
   急に「十字架」に見えはじめたのに驚きました~^0^

   「どくだみ」は昔から大好きだったのですが
   茶席では「禁花」とされていましたので
   ま、こっそり活けて楽しんでいたのですが(笑)
   茶友が宮城まり子さんが茶席で「どくだみ」を使われたという
   エピソードを教えてくれて以来
   私も堂々と茶花として愛用しています

   では大好きな「どくだみ」が主役のお茶会でお待ちしています  

           
              

6月6日、K邸へ伺うと、広い庭にたっぷりと水が撒かれています。
空気までひんやりと感じられる緑のアプローチを通り、玄関へ。
ご亭主のKさんが、最初に訪れた時と同じ、あの笑顔で迎えてくれました。

少し時間が早いそうで、待合でおしゃべりしていると、
5時を告げるサイレンが鳴りました。
「どうぞ、こちらから出て、ベランダの腰掛でお待ちください」

その日は天気が不安定で、時折雨が降ったそうです。
それで、全天候型の準備をしてくださって、今回はベランダの鉄の椅子が
外腰掛でした・・・こちらも重そうだけれどステキです!
夏椿が緑の枝を伸ばしている、山荘のような佇まいのベランダで、
樹木の気をいっぱい浴びながら迎え付けを待ちました。

                 

ご亭主が現われ、いよいよ迎え付けです。
無言で挨拶を交わしました(伺うのもこれが最後・・かも)。

正客のKさんに続いて、茶室へ入ったとたん、
床のお軸に圧倒されました。
白い和紙に大きく書かれた墨書が静かに力強く我が心に迫ってきます。

「洗心」
昨日、我が茶事で掛けたのと偶然同じ語句でしたが、印象が全く違いました。
書は書き手の全てを具現しているので、比較しても仕方の無いことですが・・・。
座に着いてからも、シンプルで神々しい墨書を何度も見つめました。
とても素直な気持ちになる、不思議な書です。


             「どくだみ茶会」-2へつづく


淡路島・初風炉の茶事-3

2014年05月15日 | 思い出の茶事  京都編
(つづき)
濃茶の後、障子が開け放たれました。
すると、庭の緑が眼に映り、爽やかな風が広間を吹き抜けていきます。
これぞ初風炉の醍醐味でしょうか。

後炭になり、待望の風炉中拝見です。
二文字押切の端整な灰形はいろいろなことを語りかけてくれました。
灰は少なめに入れられ、五徳の鉄柱がすっきりと襟足のよう・・・。
火床が広く取られ、小さめの風炉なので理に叶っています。
苦手な灰形に挑戦してみよう・・・よい刺激を受けました。

薄茶になり、先ほどの瀬戸水指が運び出されました。
「素」を感じる設え、墨染の衣のご亭主、背景の緑の庭、
なにか映画のワンシーンか、一幅の絵を見ているようでした。

             
                    (京都市大田神社にて)

和やかにいろいろなお話が飛び交いました。
茶の修行、卒業茶会、黄梅院の茶会など、興味津々で伺いました。
薄茶が点ち、干菓子3種を頂きながら、茶碗を替えて二服味わいました。

主茶碗は高麗堅手、歪みがあり、手取りも好く、好みの茶碗でした。
替の、フランス製カフェボールで二服目を頂戴しました。
西洋アンティークに凝っていた時期があったとか・・・遊び心が嬉しいです。
三碗目は尾戸焼、業平菱の模様が珍しい、小振りの茶碗でした。
四椀目は萩、三輪寿雪(休雪)作、手取りも雰囲気もさすがですが、
特に茶碗の内側が・・・。

どの茶碗もそれぞれ違う魅力があり、「一服ずつ頂きたい・・・」
皆、そう思ったに違いありません。

              
                 (ちいさなサクランボが・・・疏水にて)

最後に、薄茶の茶杓を記しておきます。
「幾千代」とは大違い、座りの悪い茶杓で、置くとそっぽを向いてしまいます。
ご亭主のお話では横を向いてしまう「うたたね」という名杓があるそうですが、
こちらの銘は「たいへい」。
今まで避けていた座りの悪い茶杓が急に愛おしくなりました。

のどかな初風炉にふさわしい茶杓銘で、茶事の幕が閉まりました。

さりげなく、ステキなおもてなしをしてくださったご亭主さま、
素晴らしい相客の皆様とのご縁に感謝いたします。

書きながら、四国遍路を思い出し、胸が張り裂けそうになりました・・・。
「そうだ! 私はこういう出会いを求めて(茶の湯という)遍路の旅へ出たのだ」

                                        

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淡路島・初風炉の茶事-2

2014年05月14日 | 思い出の茶事  京都編
                  (庭の灯籠と井戸・・・貴重な1枚)
(つづき)
風炉になると、準備が大変!
灰を細かな篩でふるい、風炉に底土器を置き、灰を入れ、五徳を据えます。
釜を選び、釣り合いを見てから、心を正して初めての灰形をつくります
・・・そんなことを思いながら、初炭手前を拝見しました。

小振りの風炉は大樋焼五代・勘兵衛造、
釜は越前芦屋の霰真形釜、霰の先端が摩耗し、
文様(桔梗)の一部が抜けていて、時代を経た味わいに魅せられます。
越前芦屋釜は室町から桃山に盛んに造られたそうですが、
この釜の湯で御茶を頂くのですから、古釜好き血が騒ぐというものです

半年ぶりの風炉初炭手前が新鮮でした。
ご亭主はさらさらと点前を進め、炭を置いていきます。
香合を拝見すると、四方錫縁の漆器で江戸時代の作とか、
蓋表に迫力ある波頭と蛇籠の蒔絵がありました。
お香は白檀でしょうか・・・はつなつの爽やかな薫りです。

お菓子が運ばれました。
手付の菱形重の内にも波文様があり、うず潮で名高い鳴門海峡がすぐ近くです。
菓子銘は「落し文」、海峡を渡った徳島市の富士屋製です。
黒餡を白餡で包み、緑色の葉にくるまれて虫の卵らしきものが1つ・・・。
美味しく頂戴し、腰掛待合へ中立しました。

             
            (京都市・今熊野神社の大楠)

クスノキでしょうか、
隣りの神社に聳えたつ大木を背景に緑の庭が広がっています。
若葉から紅葉している楓があり、Sさまが「野村モミジ」と教えてくれました。
七つ打たれた銅鑼の響きに心を寄せ、後座の席入です。

床にシマアシと白の華鬘草(鯛釣り草とも)がすっきりと生けられ、
花入が魅力的でした。
形は扁古のようでもあり、ガラス、それとも陶器かしら?
あとでイギリスの女流陶芸家・ルーシーリーの作品と知りました。
暗い中に杢目が水面の輪のように現われて来る敷板も魔法のよう、
不思議なサプライズのある空間でした。

             
                  (御神木・・・今熊野神社大楠)

茶碗が運ばれ、濃茶点前が始まりました。
水指は瀬戸一重口、不識を思わせる、どっしりとゆるぎない佇まい、
初茶事の際に購入したという思い出の水指でした・・・。
茶杓が大きく、茶入の蓋に持たせかけて置かれました。
茶碗に茶杓を渡し、三杓掬いだし無しで、茶入をまわして茶が入ります。

十分に練られた濃茶を美味しく頂戴しましたが、
5名分には茶の量が少ないように思い、少々遠慮を・・・。
茶銘は奥西緑芳園「慶雲」です。

濃茶の茶碗は黒楽、
長次郎を思わせる茶碗でしたが、宗味窯とのこと。
お尋ねすると、長次郎の死後、工房を引き継ぎ、守っていた楽焼の
職人たち(田中宗味を含む)の作を総じて宗味窯というそうです。

             
                    (京都市・大田神社の杜若)

拝見をお願いし、もうびっくり!でした。    
茶入は古瀬戸肩衝、仕覆は金剛金襴です。

茶杓は、ほっそりした茶入と対照的で大きく、初めて見る形でした。
白竹でしょうか、舟の櫂を思わせる荒々しい形に削られています。
とてもインパクトがあり、超モダンにも見える茶杓でした。
これだけ大きいと、掬いだし無しもうなづけます。

茶杓銘は「幾千代」(ええっ!これが・・・)
光格天皇が削った茶杓「幾千代」を玄々斎が写しを何本か削ったそうで、
そのうちの一本、もちろん本歌です。
のちほど玄々斎自筆の筒(竹を二つに割って、中に墨書)も見せて頂きました。

4月のS先生の稽古で和巾があり、茶杓「幾千代」も話題に出ていたので、
とても嬉しい実物とのお出会いでした(ご亭主さま、アリガトウ!)。
幾千代にこの茶事を忘れることはないでしょう・・・。                 


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淡路島・初風炉の茶事-1

2014年05月13日 | 思い出の茶事  京都編
               京都・等持院にて(・・・写真がないので)

5月9日、、淡路島のT氏より初風炉の茶事へお招き頂きました。
昨年12月に続いて二度目ですが、もう一度風炉の時期に伺いたい・・・
というリクエストに応えてくださったのでした。
・・・それで責任上、その場で正客のお役を受けることになり(汗!)、
相客はOさま、Sさま、Kさま、K氏でした。

待合に達磨大師の水墨画が掛けられていました。
無駄のない衣の筆さばきの妙、こちらを向いている眼光が鋭く、
立っている達磨大師です。
「惺・・? う~ん、どなたの御作かしら?」
名前が読み取れなかったので、後の楽しみとしました。

明時代の赤絵汲出しで、甘茶を戴きました。
ご亭主は真言宗寺院の若住職です。
本堂にお詣りすると花まつりの設えがあり、お釈迦様に甘茶をお掛けしました
・・・こちらの花まつりは月遅れだそうです。

前回とは違う広間へ席入すると、八畳でも棚を使用せず、
古釜と風炉だけが空間を占め、シンプルで清々しい初風炉の設えです。

挨拶の後、達磨画についてお尋ねすると、
なんと!松花堂昭乗の画でした。
4月に八幡市松花堂庭園の「史跡 松花堂」を訪ねたばかりだったので、
とても嬉しく、侘び茶の原点のような草庵茶室を思い出しました。

              
                     松花堂昭乗(さん・・・だと思う)
本床のお軸は
「一華開五葉」
一休禅師を思い出させるような、迫力のある爽快な書は、
黄檗宗万福寺五世・高泉性とん(こうせんしょうとん)の書でした。

「一華開五葉(いっか ごようを ひらく)
 結果自然成(けっかしぜんになる)」
印度より中国に禅を伝えた「達磨大師」が、
弟子の慧可に自分の教えを伝えるために与えた伝法の偈の一節で、
「心華が開けば(仏性に目覚めると)やがて自然に仏果菩提の実を結ぶ」
ということでしょうか。
待合でお逢いした達磨大師の眼光鋭いお顔が脳裏に浮かびます。

              
                   京都市蹴上浄水場のつつじ

でも、ご亭主は穏やかに門外漢の私たちにも解り易くお話を進め、
手づくりの懐石を運び出してくださいました。

一文字は少々アルデンテでしたが、
私たちは高野山から朝届けられたという、絶妙な胡麻豆腐、真蒸の煮物碗、
しっかりしたお味の白和え、トマトの冷菜、淡路島特産のコノコなどに
舌鼓を打ちながら、見事に完食しました(御馳走様でした・・・)。
                                   

           淡路島・初風炉の茶事-2へつづく

             

正午の茶事-風吹南岸柳 (2)

2014年04月20日 | 思い出の茶事  京都編
                  散り椿   府立植物園にて
(つづき)
銅鑼の音を聴くのも茶事の楽しみの一つです。
音色と間合いの良さが好ましく、Yさまの日頃の精進が伺えました。

後座の床に、白い鯛釣り草と紅い椿が春の歓びを謳い上げていました。
美しく自然釉がかかる花入は伊賀焼の旅枕でしょうか。
誰が袖棚にたっぷりした染付の水指が爽やかに映えています。

           
                    鯛釣り草と紅い椿

黒の楽茶碗が運び出され、濃茶点前が始まりました。
袱紗捌きの衣擦れの音に心地好く耳を傾けていると、
ゆらゆらと釣り釜が揺らいで、なにやら眠気が・・・。

佳い薫りがして来て、眠りの谷底から覚醒しました。
湯を汲み、しっかりと練ってくださった濃茶の美味しかったこと!
湯の温度も熱すぎず、たっぷりと頂戴しました。
茶銘は錦上の昔、詰は柳桜園です。

前席のお菓子は、白と黄色のきんとん、黄身餡が珍しく新鮮でした。
ご亭主の手づくりの一品でした。

           
                   菜の花畑

黒の楽茶碗を手に取ると、釉薬が二重掛けされているのでしょうか。
なだれが胴を一巡りして、独特の景色を作り出しています。
窯元は玉藻焼(たまもやき)、作者は初代・氏家常平でした。

香川県高松市にある高松城は海に面していて、玉藻城と呼ばれています。
柿本人麻呂が讃岐の国の枕詞に「玉藻よし」と詠んだことから、
このあたりは玉藻の浦と呼ばれ、名の由来となったそうです。

私にとって玉藻焼は懐かしい思い出があります。
四国遍路の折、玉藻城へ寄って、疲れた足を休めたことがありました。
そのことが忘れられず、玉藻焼の赤楽茶碗を入手し、今も愛用しています。

玉藻焼の黒楽で濃茶をいただけたことに嬉しいご縁を感じました・・・。
茶入は朝日焼の肩衝、粋な縞模様の仕覆は青木間道です。
茶杓は、方谷文雅和尚作の銘「華衣(はなごろも)」、
中節から下の景色が古代衣裳の「裳(も)」を連想させるステキな花衣です。

           

煮えが落ちてきたところで、後炭となりました。
釣り釜の初炭も久しぶりでしたが、後炭はさらにご無沙汰しています。
釣り釜が上げられると、炭が綺麗に流れていて、五徳がないせいか、
残り火の姿は一段と胸に迫るものがありました。
炭がご亭主の意のままに選び置かれ、輪胴止めでした。

この時の後炭の風情に心惹かれ、いつかしてみたい・・と思います。

           
                六角堂(頂法寺)の柳

すぐに煮えがついてきて、薄茶になりました。
干菓子は野菜の砂糖漬け、ハス、サツマイモ、人参、柚子など5種、
これも手づくりです。
ステキな薄茶茶碗が次々と登場し、干菓子をモリモリ賞味しながら、
2服ずつ美味しく頂戴しました。
最後にご自服して頂き、はやお別れの時が近づいて来ました・・・。

相客のMさま、Sさまと愉しく過ごさせて頂きましたが、
ご亭主から懐石のヒントやお点前の刺激をたくさん頂戴しました。
お心こもるおもてなしに感謝しております。                      
                                 

                          
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