暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

仕覆が届きました・・・

2019年04月20日 | 茶道具

       季節が進み、八重桜が満開です


三溪園「春のクロスロード茶会」が終わり、はや1週間。
そろそろ疲れも癒え(歳のせいか、なかなかでした・・・ショボン)、片づけも一段落したので茶会のことを書いておこうと思います。
先ずは茶入の仕覆から始めたいと思います。

茶会4日前の早朝、NYさまから仕覆と古帛紗が届きました。
ちょうどその日は最後の”出稽古”だったので、新調の仕覆を着た茶入で本番を想定した濃茶のお稽古が出来て、グッドタイミングでした。



去年の暮れにNYさまに薩摩焼(帖佐焼)の茶入の写真を送り、恐る恐る・・・仕覆を作っていただけないかしら? とメールしました。
すると、
その1
お仕覆の件、画像を拝見いたしました。
袋を掛けてあげたくなる茶入ですね。
1月に手術のため入院し、その後1ヶ月くらいは会社をお休みする予定があります。どうぞ、ご心配は不要です。
お渡しは、ぎりぎりになるかも知れませんが、お預かりしたいと思います。
確かに間道が合いそうですね。
実際に、裂を当ててお茶入に相談してみないとわかりませんが、楽しみにしています。      NYより



        薩摩焼(帖佐焼)の茶入

その2
昨夜、お茶入確かにお受け取りいたしました。
お茶入には、我が家で年越しをしていただき、春までゆっくりして頂こうとおねがいしてみました。
どうか、よき年をお迎えくださいませ      NY



・・・と言うわけで、手術の無事をお祈りしながら、茶入をお預けし春を迎えました。
ぶらり訪れたNYさまのブログに「初心に帰る」と題して仕覆づくりのことが書かれていました。
すぐに我が薩摩焼(帖佐焼)茶入の仕覆づくり・・・とわかり、毎回楽しみに仕覆づくりの工程(1~6まで)を拝見しました。
暁庵も以前仕覆を作ったことがあるので、NYさまと一緒に(気持ちだけ手伝って・・・)作っているような不思議な体験でした。
そして・・・何にも言わなかったけれど、術後で腕の動きが不自由だったことをこれもブログで知り、茶会に間に合うように作ってくださったNYさまの御気持に感謝でいっぱいになりました(・・・


      「シマモール」の仕覆を着た茶入

古裂コレクターでもあるNYさまが茶入と相談して選んでくださった裂地は、表地が「19世紀頃の東南アジア(明確な産地は不明)のシマモール(木綿)」、裏地は海気です。
「シマモール」がよくわかりませんでお尋ねすると、次のようなメールを頂き、なんとか茶会でもお話しできそうです。





その3
シマモールについてご説明致します。
実際に仕覆に使ったのは、モール部分ではありませんが、布端などはモールの構成になっています。モール+シマ+無地の構成です。
格子なのにシマ?と思われるかも知れませんが、格子模様も縞模様も総じて縞物と呼びます。格子は縞の一部なのです。
またこの縞物のシマは、島物のシマでもあります。
島とは、東南アジアの島から伝来したという気持ちが込められております。
そのため、シマモールと申し上げました。
これで、大丈夫でしょうか?
ぎりぎりになってしまって、申し訳ありませんでした。
本番がうまく運びますこと、こっそりお祈り致しております。    NY


NYさま
素敵な仕覆を作ってくださって、ありがとうございました!
天気にも恵まれ、皆様のお蔭で無事「クロスロード茶会」を終えることが出来ましたことをご報告し、感謝申し上げます。



茶道具こわい・・・茶碗「玉帚」

2019年01月03日 | 茶道具



  謹賀新年

いつも「暁庵の茶事クロスロード」をお読みいただき、ありがとうございます
今年もどうぞ宜しくお願いいたします




  初春の
   初子(はつね)の
    今日(けふ)の玉帚(たまははき)
  手にとるからに
    ゆらぐ玉乃緒

                  (大伴家持  万葉集 巻二十)


歌の意は、「初春の初子の今日、玉帚を手に取ると、玉が揺れて音をたてます」



昨年(2018年)12月初めのことです。
東京美術倶楽部の正札市へ出かけ、久しぶりに「茶道具こわい!」に遭遇してしまいました(汗)。
「見るだけでも勉強させて頂こう・・・」と、2階の展示室へ行った時のことでした。
その茶碗は、展示室のさらに奥の展示室にひっそりと置かれていました。
きっと気づかなかった人も多いのでは・・と思いますが、その茶碗(雲鶴青磁)が何故か気になってしまったのです。

茶道具との出会いは恋人と出逢うような運命的なもので、その機会を逃すとその後も面影を求めて探し続ける・・・そんな経験を茶道具で何度かしたので、思い切って購入を決めました。
小堀権十郎(江戸前期の茶人、徳川幕府の旗本で名は政尹、号は篷雪。小堀遠州の三男)の書付があり、蓋裏に和歌(冒頭の和歌と写真)が書かれています。外函に遠州流茶道12世・小堀宗慶の極めがありました。

残念ながら蓋裏の和歌が読めませんで、知人に解読をお願いしました。
この和歌を完全に読み解きたいと、暮れからいろいろ調べていると、
万葉集巻二十に収録されている大伴家持の歌であることがわかりました。


 コウヤボウキ(高野箒)の花   (季節の花300)

さらに「玉帚(たまははき、たまばはきとも)」は、コウヤボウキの枝を束ね、繭玉やガラス玉を飾り付けた箒で、古代の特別な儀式に使われていたそうです。
初子(はつね)の日(正月最初の子の日)に新年の言祝ぎを占う「目利箒(めどきほうき)」として、大切な朝廷の行事「初子の儀」に使われていました。

  儀式では、天皇が手辛鋤(てからすき)で田を耕す仕種をして、豊穣と祖先を祭り、
  皇后は「玉帚」を手にして左右に揺らせながら蚕室を掃き浄めて、蚕神を祭ります。
  「玉帚」を揺らした時に、枝先の玉と玉が触れ合って、カチカチと澄んだ音をたて、
  その音の響きによって新たなる年の養蚕の吉凶を占います。

                  (参照・・・万葉植物から伝統文化を学ぶ)


天平寶宇(西暦758年)1月3日に孝謙天皇が「玉帚」を東大寺から献納され、宴が催されました。冒頭の和歌は天皇の勅を受けて官人たちが詠んだ歌の一つで、大伴家持の歌でした。
その「玉帚」は正倉院御物「子日目利箒(ねのひのめどきほうき)」として伝承され、正倉院南倉に収蔵されています。「正倉院御物図録十四」によると、箒の先に小さなガラス玉が数個残っているとか。


「子日目利箒(ねのひのめどきほうき)」
(参照・・・万葉植物から伝統文化を学ぶ)


・・・購入した雲鶴青磁茶碗ですが、小堀権十郎の書付の和歌から「玉帚(たまははき)」と呼ぶことにしました。

雲鶴(手)は高麗茶碗の一種で、高麗時代後期に作られた古格のあるものを古雲鶴、朝鮮王朝(李朝)中期以降の注文茶碗を後(のち)雲鶴と呼び分けられているそうです。
雲鶴青磁ですが、高麗青磁の後期に見られる象嵌青磁です。

茶碗は椀形、高台まわりに黄土色の土が見えます。
雲鶴青磁のかもしだす高貴な気品、落ち着いた色合いや繊細な貫入に心惹かれています。
口縁外下周りに雲鶴が黒土と白土で象嵌されていて、飛翔したり、よちよち歩いていたり、ダンス(?)している鶴たちが愛らしく見ていて飽きません・・・。
昔の茶人たちがこの茶碗を愛玩した気持ちがわかるような気がします。
今年はこの茶碗を使うぞっ~! と楽しみ・・・ 

(参考)
 茶道具こわい    2010年12月29日
 茶道具こわい in Kyoto     2014年12月18日
 楽茶碗に恋して・・・茶道具こわい in Kyoto Ⅱ    2014年12月27日


茶杓「寧」のこと

2017年08月02日 | 茶道具
           
                   ギャラリー&カフェ「寧」の表札

皆さま お暑いですね・・・


  暑中お見舞い申し上げます    
            
                   暁庵



海外旅行から帰った次の日の朝9時のことです。
時差と疲れもあって泥のように眠り込んでいました。
「姫路のKさんから電話! 留守中にも電話があったので早く出なさい・・・」とツレ。

深い深い海の底の眠りから引きずり出されるように電話に出ると、

「Kです。お帰りなさい。お疲れでしょうから手短にしますね。
 ブログの「「染谷英明-茶盌展-」・・・屋敷森の「寧」にて」を読んでびっくりしました。
 カフェ「寧」と我が家の設計士さんが同じだったご縁で、昔、行ったことがあるのです。
 エントランスにあった「寧(ねい)」の字、丁寧の寧という字。
 実はあの字に惹かれて、暁庵さんが茶会にいらした時に掛けた軸「洗心」は「寧」の筆者さんに特別に書いてもらったものなのです」
・・・と一気にKさんは興奮気味に話します。

            
            
                    屋敷森のカフェ「寧」にて

「洗心」・・・もちろん覚えていますが、
確か筆者は障害のある方ということだったけれど、その字はなんの穢れも慾もなく、心が洗われるようだった・・・と、半分眠っている頭の中でかろうじて思い出しました)

「驚くやら嬉しいやら・・・暁庵さんとはやっぱりご縁があるのですねぇ・・・。
 このことをどうしてもお伝えしたくて・・・お疲れのところごめんなさい」
こうしてKさんからの電話が終わり、再び深い眠りに落ちていきました。 

           
                なぜか? 屋敷森の「寧」には猫の道しるべがあちこちに        

数日後、ギャラリー&カフェ「寧」で個展をされた染谷英明氏へ電話しました。
「スウェーデンから帰りましたので、そろそろ茶碗を送ってくださいませ。
それから・・・と、Kさんからの電話のことをお話しし、
ギャラリー&カフェ「寧」とKさん、見知らぬ「寧」の筆者さんとのご縁を感じて、「中心人物たる染谷氏に「寧」という銘の茶杓を削って欲しい」とお願いしました。
個展の時に染谷氏自作の茶杓を見せて頂いて、いつか是非お願い出来たら・・・と思っていたので。
染谷氏が私の勝手な依頼に快く応じてくださって、もう感謝感激!です。

7月の半ば、不思議なご縁に導かれるように茶碗と茶杓「寧」が我が家へやって来ました。
筒に「寧」と書かれ、素敵な布にくるまれています。
煤竹の華奢な作りの茶杓は一目で気に入り、茶碗とぴったりお似合いです。 

              
                    8月16日の五山の送り火 「大文字」         

急に茶事がしたくなり、8月16日に「大文字 夕去りの茶事」をすることを決意しました。
スウェーデンから帰国後、もう、だらだらと「ネブタ(?)」のように過ごしておりまして、猛反省もあり、かねて念願の茶事に取り組むことにしたのです。
(8月の茶事は暑さを理由に避けていました・・・2014年8月の秋待つ撫子の茶事以来かも?)
はじめてのテーマですが、遠く京都の五山の送り火に思いを馳せながら、縁のあった亡き人達をしのびたいと思っております。
私の消夏法とダイエット(?)にお付き合いくださいますお客さまへ、もうなんとお礼を申し上げたらよいやら・・・感謝の一言でございます。 

今は暑さと相談しながらゆっくり茶事支度を楽しんでいます・・・茶杓「寧」に見守られながら。 



「染谷英明-茶盌展-」・・・屋敷森の「寧」にて

2017年06月18日 | 茶道具

 「染谷英明-茶盌展-」 6月10日(土)~21日(水)
    ギャラリー&カフェ「寧(ねい)」への木洩れ日のアプローチ



 「寧(ねい)」のエントランスの表札
 
昨秋の韓国旅行で知り合った染谷英明氏から
「染谷英明-茶盌展-」(主に井戸茶盌を展示いたします)という案内の葉書が届きました。
6月16日(金)にFさんとギャラリー&カフェ「寧(ねい)」(埼玉県伊奈町大針635-4)へ出かけました。
大宮駅でニューシャトルに乗り換え、伊奈中央駅で下車、迷って炎天下をうろうろしたあげく、染谷氏に車で迎えに来て頂きました・・・。

ギャラリー&カフェ「寧」は宮崎駿監督のアニメ「となりのトトロ」に登場するような屋敷森に囲まれた場所にありました。
その入口に立った時から個性的な表札や道案内の猫たち、緑あふれるアプローチや古木に心が躍り、
「なんて素敵な場所なのだろう! ここで個展をするなんて、どんな茶盌と出会えるのかしら?」と。
それまでは、「どうして大宮ではなくこんな辺鄙なところで個展をするのかしら?」
と道に迷い汗だくになりながら思っていたのですが・・・。


   100年椿のパワーを感じる、見事なコブの造形


    母屋のギャラリー

母屋がギャラリー、所々に花が飾られ、その花入も染谷英明作でした。
染谷さんは高校時代から絵を画いていましたが、定年退職後に作陶を始められたそうです。
根津美術館で開かれた特別展で織田有楽斎所有と伝わる大井戸茶碗「有楽」に感動し、
後に心の中で細かく再現できるほど見つめ尽したそうですが、
これを機に全く経験のなかった焼き物に取り組み始めました。




        染谷英明氏の作品


「井戸茶盌のマチエール(肌合い)に魅せられて」
苦節12年間、ひたすら井戸茶盌を極めたい!と向き合ってきたそうです。
ギャラリーには今年の春に釜焚きした作品が並べられ、釜焚きの2回目(1回目は全滅?)にやっと自分で腑に落ちる井戸茶盌ができた気がしているとか。
展示品を観る間に、染谷氏から作陶への熱い思いを伺ったり、作品の感想を述べたり、抹茶とお菓子を御馳走になったり・・・とても充実した時間でした。


 染谷英明氏 (井戸茶盌や半泥子作品の話が尽きません)


 ピンボケですが、暁庵お気に入りの井戸茶盌


井戸茶盌の他にも楽茶碗、水指、ぐい飲みや汲み出しなども展示されていました。
渾身の井戸茶盌は一つ一つ個性が違い魅力的でしたが、白楽茶碗が1個だけあり、一目見た時から気になりました。
本阿弥光悦の「不二山」長次郎の赤楽「白鷺」を連想する雰囲気のある茶碗です。
白釉に黒っぽい灰釉がかかり、素朴かつモダンな味わいに惹かれ、この茶碗で濃茶を点てて喫んでみたくなりました。


   ユニークなカフェ「寧」への道案内


   「寧」のカフェでランチを頂きました

その後に「寧」のカフェで頂いた野菜料理のランチ、デザート(オレンジチーズケーキ)、珈琲も美味しかったです。
6月21日まで「寧」(埼玉県伊奈町大針635-4 TEL:048-723-7371)にて開催中です。
よろしかったら是非ご高覧くださいまし。

染谷さん! 来年も「寧」で個展を開催してくださいね。楽しみにしています。


同期生からの志野の汲み出し

2016年08月27日 | 茶道具

    思い思いの表情が個性的で愉しい・・・


夜毎のBGMが蝉しぐれから虫の音に変わってまいりました。
少し長めの夏休みをとっていましたが、8月24日から自宅稽古が再開です。
ブログも夏休み状態でしたが、お蔭様で、第3回お茶サロンも満席となり、御礼申し上げます。
お茶サロンでは、秋野を駆けめぐる風のささやきに皆で耳を傾けたい・・・と思いを巡らせています。

        


 24日の夜、電話が鳴りました。
思いがけず大学の同期生のA君からでした。
「遅くなっちゃったけれど、去年の同期会で頼まれた志野の汲み出しが出来上がったので送ります」
「えっ! 覚えていてくれたのね。 ありがとう!」 
嬉しくって飛び上ってしまいました。

昨年11月15日に静岡県掛川市で開催された同期会のことを思い出しました。
何十年ぶりかで参加したA君は二十数名の参加者全員に自作の志野ぐい飲みを配ってくれたのでした。
その時、たまたま宴席が近かったので
「今、お茶を頑張っているのだけれど、茶事に使う汲み出しを作ってくれないかしら?」
と気軽に頼んでしまったのです。
それを忘れずに・・・それだけでも感激でしたが・・・。

26日に汲み出しが到着。
開けてみると、5個ずつ2セットの汲み出しが大切に梱包されて入っていました。
そして、手紙が・・・忘れたくないので記しておきます。

 A君からの手紙
昨年の同期会で依頼のあった志野の汲み出し湯呑、やっと焼きあがりましたので、お送りします。
通常の焼き物(酸化或いは還元)はほぼ一日の焼成で済みます。
志野焼の場合はその三倍の三日ほどかけて焼成します。

私の属しているクラブでは、10年位前までは年に7回位は志野焼をクラブ員が主体となって焼いておりました。
ところがクラブ員の老齢化と体力の衰えにより、数年前からはプロの陶芸家に焼成を委託するようになりました。
他人任せのためもあり、各人の思い描いた焼き上がりが期待できなくなったためか、
だんだんと作陶する会員も減り、作品もなかなか数が揃わなくなり、
年に1回焼成できるかどうかといった状態になりました。





  白釉薬の向こうにある文様や指あとに温かさを感じて・・・

今回3種の志野の釉薬を使って60個ほど窯に入れてもらいましたが、出来上がりはいまいちといった状態でしたが、何とか2種2セット確保できました。
形、大きさ、色合い、それぞれ若干の不揃いがあるかもしれませんが、手作りであることを考慮いただき、ご容赦ください。
アサガオ型の湯呑の胴には、「○○○」(暁庵の姓)と下手な字ではありますが隠し柄として入れさせていただきました。
ご愛用くだされば幸いです。       Aより



  くずし字の隠し柄・・・読み難いのがまた好し


手紙で作陶の御苦労の一端を知ることができ、おもわず涙が出て来ました

A君のご厚意がありがたく、一回でも多く茶事に使いたいもの・・・とウズウズしています。