(後座の席中です・・・夕去り風に蝋燭を灯して)
銅鑼の合図で蹲を使い、後入りです。
野月にこだわり、夕去りの茶事風にしたかったので、雨戸を閉め、蝋燭(燭台2つ、小灯し1つ)を灯しました。
そんな私の試みを知っていたのでしょうか・・・茶事の数日前に宇和島市に住むお茶の先輩Kさまから大きな燭台が2つ送られてきました。鉄細工を趣味としているご主人が特別に作ってくださったとか・・・嬉しく有難く、早速使わせてもらいます。
ススキとシュウメイ菊を古銅桔梗口花入に生けました。庭のシュウメイ菊の蕾が1つ、今にも咲きそうでしたがなかなか咲いてくれません。毎日祈っていました。
・・・当日の朝に一輪だけ咲いてくれて、もう感激!
(ススキとシュウメイ菊)
蝋燭の灯に温かく見守られて、茶入を清め、茶杓を清めて、濃茶を茶入から掬いだし、一心不乱に濃茶を練りました。
蝋燭の元では茶碗の中はほとんど見えません。何処かで「心眼で練るのよ・・・」というN先生のお声が聞こえて来るようでした。
気持を集中し手先の感覚を研ぎ澄ませて、湯を入れ、茶筅で濃茶を練り始めると、すぐに好い薫りが立ち昇りました。濃茶は「延年の昔」(星野園詰)です。
「美味しい濃茶が練れますように・・・」と念じながら各服で4碗を練り上げ、お出ししました。正客M氏の主茶碗は黒楽(一入作)、次客KRさまは萩焼、三客Y氏は大樋焼、詰Iさまは高麗三嶋です。
「お服加減はいかがでしょうか?」「大変おいしく頂戴しています」
その声を伺って心から安堵します。
茶入は薩摩焼の胴締め(15代沈壽官作)、仕覆は能衣装裂(小林芙佐子仕立て)、茶杓は銘「無事」で後藤瑞巌師の御作です。
後炭の時に風炉中を拝見して頂きました。後炭で胴炭が上手に割れたのと、正客M氏から「胴炭が割れてご馳走ですね・・・」とお声が掛かったのが嬉しかったです。
後炭で炭を直し、薄茶になりました。
実は、薄茶が一番のご趣向で、風炉を中央に動かして茶箱の月点前で薄茶を差し上げました。お点前は半東のKTさんがつとめます。
茶箱の月点前は、茶箱の中でも一番美しいと言われており、香(白檀)を焚き、器据(きずえ)やウグイス(これに茶筅を立てる)を使ってお点前します。
器据は、茶箱の蓋とほぼ同寸の板4枚を紫の紐で綴じつけたもので、器据を広げた上に道具を置き合わせ、点前をします。器据は溜塗で秋の野月の蒔絵が描かれています。箕輪一星作です。
(野月の蒔絵の器据・・・茶箱・月点前にて)
KTさんの流暢な月点前で薄茶が4碗点てられました。薄茶は「舞の白」(星野園)です。
正客M氏に出された主茶碗は手に取ると驚くほど軽く、ギヤマン製なのがサプライズの茶碗です。
茶箱は麻葉一閑張で、高台寺蒔絵の香合、棗、茶筅筒があり、茶巾筒と振り出しは京焼です。この茶箱はKTさんが茶名拝受の折に恩師から頂いた記念の御品でした・・・。ギヤマン茶碗と茶箱の写真がなく残念です。
「秋の薔薇」 (山岡善高作)
銘「淡路」 (琴浦窯 桐山作)
次客KR様は「秋の薔薇」(山岡善高作)、三客Y様は虫明焼12カ月茶碗の1つで「紅葉」(森香泉作)、詰I様は銘「淡路」(琴浦窯、桐山作)で薄茶を差し上げました。
薄茶席では半東でしたので、社中のお客さまとお道具や入門当時の思い出などを親しくお話しできて、普段の稽古とは違う親密感や一座建立の連帯感を心地よく感じました。でも、そう感じたのは私だけで、お客さまは緊張されていたかもしれません・・・。
さて今回も、5月に立礼の茶事を始めてから5回目の茶事を無事に愉しく終えることが出来、安堵しています。
今回は社中の方がお客だったこともあっていろいろな想いが去来しますが、半東KTさん、水屋AYさん、懐石・小梶由香さんの惜しみないご協力に感謝いたします。
皆さま、ありがとうございました!