暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

東京教室の初釜・・・左足を引きずって

2016年02月05日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古

 境内のしだれ梅がほころんで・・・

1月27日に東京教室の初釜・初稽古へ出かけました。

・・・・当日まで「東京まで行けるかしら?」と案じていました。
Hさまの茶事の数日後から左足が痛くなり、一時は歩くのも大変でした。
「炬燵でテレビ」の安静状態(?)を心掛け、気合だけで東京へ出かけました。
H駅の階段をやっとこさ登り、10分足らずの東京教室までの道のりを遠く遠く感じながら・・・。

でも、東京教室の初釜へ初めて参加できて良かった!です。
だいぶ記憶が薄れていますが、記憶に留めておきたい初釜でした。

床のお軸は初釜らしく一富士、二鷹、三茄子の画賛ですが、面白いことに鷹の画はなく
「一ヶ蒼鷹画不来」という禅問答のような賛があり、松月老人(大徳寺418世・宙宝宗宇の号)筆です。

   

年頭のご挨拶を交わし、恒例のS先生のお点前で濃茶を頂戴しました。
主菓子は花びら餅(川端道喜製)、わざわざ京都から運んできてくださったのです。
「どうぞ菓子楊枝で切らずにかぶりついてください。
 道喜さんの花びら餅も以前より変わってきました。
 もっと大きかったし、味噌餡が流れるほど柔らかったのですが・・・」とS先生。
それでも餅の柔らかさや味噌餡の味わいがだんぜん違い、一同感激して頂戴しました。

今日は年に一回、先生のお点前を拝見できる日でもあります。
足運び、姿勢、袱紗捌き、間合い、流れるような所作、皆、息を呑んでみつめています。
広口の茶入から緑色の濃茶がさらさらと流れ落ちる様子が絵のようで、
足のことなどすっかり忘れ、別世界に居るような心地で眺めていました。


                          
島台茶碗で2服濃茶が点てられました。
丁寧に練られた濃茶は香り好く、まろやかな甘みが口の中でとろけるようです。
濃茶は福寿園の「栄松の昔」、初めてかも・・・です。

島台茶碗とは、茶道大辞典によると
「井戸形に開き、内面に金銀の箔を置いた楽茶碗。縁起を祝う茶事に重ね茶碗として用いる」
表千家七代如心斎が最初に好まれ、楽家七代長入作の赤楽茶碗を本歌としています。
なぜか表千家の初釜に島台は使われず、裏千家では必ず使われているとのことです。
裏千家では玄々斎好みの楽家十一代慶入作の三都(さんと)という3つの楽茶碗を重ねた島台を使うことがあり、
三都とは都・吾妻・浪花(みやこ・あづま・なにわ)を指しています。

お持ち出しくださった島台茶碗は、玄々斎お好みの銘「鶴亀(だったような?)」(本歌は長入作)を慶入が写したもので、
金銀の箔のある赤楽茶碗、六角形の高台が亀を表わしています。



茶入、茶杓、仕覆、薄器を拝見させて頂きました。
茶入は遠州七窯の一つ、膳所焼の広口茶入、仕覆も素敵で気になっていました。
渋く金が残る古金襴と吉野間道の古裂で片身代りの仕立て、裏地はカピタン裂です。
玄々斎手づくりの茶杓・銘「花箙(はなえびら)」と再会できて感無量でした・・・。
薄器は、坐忘斎御家元好みの「都る亀」(つるかめ)棗(近左作)です。


 裏千家のつぼつぼ紋 (ピンボケですが・・)

濃茶の後は員茶之式、S先生も参加され全員で薄茶を頂き、点前をしました。
いつもの十種香札ではなく、Iさんがお持ち出しくださった俳聖かるたを使いました。
初釜らしい華やかな晴れ着で点前座へ座る、お一人お一人の薄茶点前にうっとりしていると、
詠み手の美しい声がBGMみたいに響きます。

「(なんて素敵な初釜なんだろう・・・なんて平和で幸せなひと時なんだろう・・・)」
みんな心の中でそんな思いを噛みしめていたに違いありません。
紅白の豆菓子が京都・吉田神社の福桝に入れられ、魚河岸銘茶という香ばしい薄茶が新鮮でした。
員茶之式で、お隣のIBさんに薄茶を運んで頂いたりしながらも何とかお点前が出来て良かった・・・・(ほっ!) 

S先生、皆さま、どうぞ本年も宜しくお導き下さいませ。  


萩遊居の茶事へ

2016年02月02日 | 思い出の茶事
                    

18日に降った残雪が所々に見られる21日に茶事へ伺いました。

むらさき茶会でご案内をお願いした茶友Hさまのお招きでした。
横浜へ帰ってから初めての茶事のお招きだったので、心が飛び立つような思いです。
・・・同時に、先にお招きできずに申し訳なく思いながら、
総勢5名(Iさま、Kさま、Aさま、Oさま)で萩遊居へ押しかけました。

あたたかな香煎で冷えた体を温め、茶室・萩遊居へ席入です。
マンションの一室を改造した三畳台目の茶室ですが、創意工夫して作られていて、
伺うたびに発見があり、新たな感動を覚えます。

躙り口から席入すると、壁床に
「松 無古今色」、大亀老師筆が掛けられていました。
向切の炉に好ましい風情の釜が掛けられており、あとでお尋ねするのが楽しみです。

                    
                            藪椿 (季節の花300)

ご挨拶を交わし、初炭手前となりました。
釜は真形、般若勘渓造。
シンプルな形と釜肌ですが、深遠な思考の淵へいざなう趣きです。
炉縁へ近寄ると、一斉に感嘆の声が・・・「あっ!」「まぁ~!」「綺麗!」

ほの暗い炉中に今まさに咲き誇っている菊のように炭が明々と浮かびあがっています。
今までにこんなに美しい菊炭を見たことがあったでしょうか?
この一瞬に懸けたご亭主の心意気を感じながら、皆で魅入りました。
そして、私も今度の聴雪の茶会でこの一瞬を大事にしよう・・・と良き刺激を頂戴したのです。

久しぶりに拝見する向切の炭手前が新鮮でした。
炭の置き方は本勝手と同じですが、炭の組み方は逆勝手、羽根(右羽)や香合の位置がいつもと違い、頭の中がパズル状態です。
最後に、御手製の白鳥の座箒がサラサラと舞い納め、一同またも垂涎のまなざしで見守りました。
布袋香合(大樋焼)を古帛紗に乗せて拝見させて頂きました。
練香は花暦(薫玉堂)です。

別室にて向付、点心と煮物椀、そしてカラスミ(絶品!)で一献、美味しく完食しました。
主菓子は「雪餅」(Hさま製)です。

                        
                             蕗の薹 (季節の花300)

後座へ席入すると、壁床にミズキと蜀江(椿)が竹一重切に生けられ、
大ぶりの釜から湯気が勢いよく立ち上り、濃茶への期待が膨らみます。
私(正客だった・・)のすぐ横で、茶碗、茶入などが整然と並べ清められ、
緑の抹茶が回し出され、茶が練られ、茶香が・・・。

その様子は自分が点前をしているような臨場感があり、亭主と客がとても近く、自ずと親しみが増すものでした。
その昔、台子から台目向切の点前へ移行していった様子が興味深く想像されます。
濃茶が出され、はっと我に返ります。
口に含むとまろやかな味と芳醇な香りが広がっていきました。
客五人でアツアツの濃茶と素晴らしい時空間を共有でき、言葉にならないくらい幸せでした。

続いて三種の干菓子で薄茶をワイワイ楽しみ、あっという間に幸せな時間が過ぎていきました。
居心地抜群の萩遊居にて完成度の高いHさまのおもてなしに感激し、今回も良き刺激をたくさん頂戴しました。
拙い正客ですが、気心の知れたご連客さまに助けられて一座建立でき、感無量です。 
Hさま、ご連客さま、ありがとうございます。これからも仲良くお付き合い下さいませ。

                                (明日は節分の日に