三島由紀夫の『美しい星』はSFというよりは、思想小説であり、後半の討論は『カラマーゾフの兄弟』のような迫力がありました。読み応えがありました。
先日ドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs.東大全共闘』を見たので、久しぶりに三島由紀夫を読んでみようと『美しい星』を読みました。
『美しい星』は三島由紀夫のSF作品として有名です。しかし、読んでみるとSFとして読みと安っぽい作品でした。あまりに無理な設定ですし、物語もあまり展開しません。本当にこんな世界がありうるかもしれないというSF的なリアリティが感じられません。
しかし、この作品はSFではないのです。思想小説です。人間の視点を異化し、地球の外の生命体が地球を見たらどう見えるのか、そして今の地球の姿に対してどう行動すべきかを描いた作品なのです。地球の人間について意見をぶつけ合う、第8章と第9章の討論は迫力があります。
新型コロナウイルスに侵されている現在の地球における人間の姿を見ていると、今こそ思想が必要なのではないかと思います。今読むべき本なのかもしれません。