夏目漱石の『文学論』を読みました。夏目漱石は小説家になる前に、英国に留学し、その後東京帝国大学で英文学を教えます。その時の講義を本にしたものです。むずかしい内容ですが、日本には夏目漱石がいたからこそ、近代文学が生まれ、日本の文学が発展したということがよくわかる本です。
おそらく英文学の理論をもとにしているからなのだとは思いますが、内容は科学的です。有名な(F+f)にしても文学を科学的に解明しようという姿勢がよくわかります。Fは「認識」のことで、どういうものがあるかを分析、分類します。fとはそれに伴う情緒のことでこちらも分析されます。Fは個人のものでもあるし、抽象化した集合のものでもあります。社会学的な分析もなされていきます。
さまざまな科学的な分析がなされ、とても1回で理解できるものではありません。丁寧に読んできたつもりですが、それでも文体が難しく、内容的にもすっと入ってくるものではありません。じっくりと何度か読まなければ理解できないものでした。
しかし、それでも様々な知見に驚かされます。今日的な文学理論を先取りしており、しかもそれをその後小説で本人が実践しているのです。その事実を確認できたという意味でも、読む価値があるものでした。
いくつかの点でできればさらに書き残しておきたいことがあります。これは別の日に譲ります。
難解な本をとにかく読み切ったという満足感を得るとともに、その内容の偉大さに驚かされました。やはり夏目漱石は偉大です。
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