教育出版の『新編現代文B』に「〈害虫〉の誕生」という教材があります。そのテーマは「近代」です。この教材を使って現代文評論の定番である「近代」批判について語っています。
現代文の評論文の多くは「近代」がテーマとなっています。「近代」というのは日本では明治維新以降の時代のことを言う。「近代」と「現代」を分ける考え方もあるのですが、ここでは明治維新以降、今にいたるまでという意味で「近代」という言葉を使っていると考えます。
「近代」とはヨーロッパの合理的思想です。科学がその根本にあり、科学的な真実からすべてのものが演繹的に説明できるという考え方です。「近代」は科学至上主義を生み、その結果、学歴至上主義、経済至上主義などを生んだ。「近代」の考え方は今を生きる私たちの「常識」となり、われわれはその「常識」を疑おうとしない。しかし、もしかしたらその「常識」はこの100年~200年だけのものなのではないか。「常識」は、長い歴史から見れば何の「常識」でもないのではないか。これが高校の「現代文」に出てくる多くの評論文のテーマです。
この「〈害虫〉の誕生」という評論文は「近代」以前の日本人には人間が駆除すべき「害虫」はなかったころを根拠をあげて説明し、「人間にとって有害な虫をひとくくりにして総称する「害虫」というカテゴリーは、日本においては近代の産物である。」としめくくっています。「近代」を相対的に見ることによって、やはり「近代」の姿をあきらかにしようとしているのです。
この教材は「近代」とは何かについて考えるために、「近代」を相対化していくという意味においてわりといい教材だと思います。
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