映画『小さき麦の花』を見ました。人間が生きることの意味を考えさせる、静かだが強い作品でした。感動しました。
舞台になっている時代はほぼ現代なのだと思われます。しかし中国の貧しい農村は何十年も前と同じような生活をしています。テレビもありません。時々描かれる都会とのギャップから貧富の差の大きさを感じます。
主人公は農家の息子ヨウティエと、その男と政略的に結婚させられた女クイイン。ヨウティエは兄にいいように使われていますが、文句も言わずに兄に命じられたままの生活をします。クイインは障害をもっているのか、歩き方がたどたどしく、時々失禁してしまいます。しかし自分では失禁していることに気が付きません。
そんな夫婦ですが、お互いがお互いを理解しはじめ、静かに愛が深まっていきます。彼らはお互いのために真面目に生きます。家を作り、麦やトウモロコシを育てます。鶏を育て卵を食べることができるようになります。彼らの真面目さが実り、小さな幸せを手に入れます。静かな感動があふれてきます。
しかしその幸せは突然終わります。クイインが急死してしまうのです。
この映画でロバが重要な役割をしています。荷物を運ぶときロバが荷車を引くのです。穀物を運ぶとき、引っ越しをするときなど、様々な場面でロバがでてきます。クイインが死んだあと、ヨウティエはロバを大地に放してしまいます。彼の失望感が痛く伝わってくる場面です。ロバはどうしていいのかわからずにうろうろしています。しかしヨウティエの作った家を取り壊すとき、一瞬だけですがロバが出てきます。これはあのロバだったのではないでしょうか。この時、言葉にならない感動が押し寄せてきます。
切ない一瞬が見事に切り取られ、小さな幸せを求め愚直に生きた人たちの人生が迫ってきます。涙なくして見られない映画でした。
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