リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

やさしい大家さん

2016-07-24 08:31:00 | オヤジの日記
我が家族が住んでいる東京武蔵野のオンボロアパートのオーナーとは知り合いである。

オーナーは、武蔵野のアパート経営の他に、杉並で理髪店と美容院、駐車場を経営していた。
オーナーからは、その理髪店、美容院がらみの仕事を年に2回いただいていた。

そのオーナーから3年前に、肝を冷やすようなことを言われた。
「来年早々、アパートをぶっ壊して、分譲地にする予定なんだよね」

それを聞いた私は、パニックになって、そのまま東京駅まで行き、新幹線に飛び乗って、熱海まで行ったのである。

現実逃避。

駅前の旅行案内所で、日帰りで温泉を堪能できる宿を紹介してもらい、温泉に入った後、昼メシを食った。
昼メシの後は、また温泉とマッサージ。

なかなか有意義な現実逃避だったと思う。

それで、その後アパートをぶっ壊す話はどうなったかというと、2年前にオーナーが体調を崩したのとオーナーの長男の猛烈な反対にあったことで、話が滞っていた。


昨日、そのオーナーに、呼ばれたので行ってきた。

事務所には、タレントの橋下環奈さんのポスターが貼ってあった。
70歳近いオーナーは、橋下環奈さんのファンだったのである。

私が操作方法を教えた、iPhoneとiPadの画像フォルダの中は、橋下環奈さんの画像ばかりだった。

オーナーには、3人のお孫さんがいたが、彼らの画像は一つもなかった。

「だってさ・・・男ばかりだから、可愛くなくてねえ。
孫のつもりで、この子を見ているんだよね」


その橋下環奈さんファンのオーナーに、いきなり言われた。
「やっぱり、1年以内にアパートぶっ壊そうと思うんだけど」

また現実逃避しようかと思った。

しかし、続けてオーナーが穏やかな顔で言ったのを聞いて何とか踏みとどまった。

「まあ、引っ越しに当たってはできる限りのことはさせてもらいますよ。それに、築30年近いアパートは耐震性が劣るからね、いつ大地震が起きるかもしれないというときに、あんなアパートに住んでもらうのは、大家としては責任放棄のような気がするんだよなあ。それがずっと気になっていてね」

確かに、いま大地震が起きたら、我々家族はきっとただでは済まないだろう。
相当なダメージを受けるに違いない。

東日本大震災の後、家具やパソコンディスク、家電などは耐震用グッズで補強したが、アパート自体は、震度4でも、sekai no owari かと思うほど揺れるのだ。

さらに、オーナーが言った。
「どうだろうね。分譲地にしたら、Mさんが買うというのは?」

いや、この年で、住宅ローンは無理ですよ。

「ご長男とかご長女が借りるということなら、何とかなるでしょ。
俺のメインバンクを紹介するからさ。便宜は最大限にはからせてもらうつもりだよ」

いや、それよりも、今のアパートを耐震設計の新しいものにリニューアルするというのは?

「そうすると、確実に家賃は上がるよ。きっと今の倍近くになるんじゃないかな」

オンボロアパートの家賃は2DKで7万2千円である。
それを我が家族は2世帯借りて、11万円にしていただいている。

格安だ。

その家賃が22万円になったら、我が家族はメシが食えなくなる。
それは、現実的ではない。

ただ、話をしているうちに、店子のことを、ここまで考えてくださる大家さんはなかなかいないだろうな、と感謝の気持ちがこみ上げてきた。


優しいんですね。


私がそう言うと、オーナーが真面目な顔で言ったのだ。

「だって、Mさんって、痩せてて貧相じゃない。
その貧しい姿が、うちのボロいアパートに似合い過ぎていて怖いんだよね。
環境が変われば、Mさんももう少しましになるんじゃないかと思ってね」



ああ・・・・・それは・・・・どうも、ありがとうございます。


(本当に優しい大家さんですこと)