我が家族が住んでいる東京武蔵野のオンボロアパートのオーナーとは知り合いである。
オーナーは、武蔵野のアパート経営の他に、杉並で理髪店と美容院、駐車場を経営していた。
オーナーからは、その理髪店、美容院がらみの仕事を年に2回いただいていた。
そのオーナーから3年前に、肝を冷やすようなことを言われた。
「来年早々、アパートをぶっ壊して、分譲地にする予定なんだよね」
それを聞いた私は、パニックになって、そのまま東京駅まで行き、新幹線に飛び乗って、熱海まで行ったのである。
現実逃避。
駅前の旅行案内所で、日帰りで温泉を堪能できる宿を紹介してもらい、温泉に入った後、昼メシを食った。
昼メシの後は、また温泉とマッサージ。
なかなか有意義な現実逃避だったと思う。
それで、その後アパートをぶっ壊す話はどうなったかというと、2年前にオーナーが体調を崩したのとオーナーの長男の猛烈な反対にあったことで、話が滞っていた。
昨日、そのオーナーに、呼ばれたので行ってきた。
事務所には、タレントの橋下環奈さんのポスターが貼ってあった。
70歳近いオーナーは、橋下環奈さんのファンだったのである。
私が操作方法を教えた、iPhoneとiPadの画像フォルダの中は、橋下環奈さんの画像ばかりだった。
オーナーには、3人のお孫さんがいたが、彼らの画像は一つもなかった。
「だってさ・・・男ばかりだから、可愛くなくてねえ。
孫のつもりで、この子を見ているんだよね」
その橋下環奈さんファンのオーナーに、いきなり言われた。
「やっぱり、1年以内にアパートぶっ壊そうと思うんだけど」
また現実逃避しようかと思った。
しかし、続けてオーナーが穏やかな顔で言ったのを聞いて何とか踏みとどまった。
「まあ、引っ越しに当たってはできる限りのことはさせてもらいますよ。それに、築30年近いアパートは耐震性が劣るからね、いつ大地震が起きるかもしれないというときに、あんなアパートに住んでもらうのは、大家としては責任放棄のような気がするんだよなあ。それがずっと気になっていてね」
確かに、いま大地震が起きたら、我々家族はきっとただでは済まないだろう。
相当なダメージを受けるに違いない。
東日本大震災の後、家具やパソコンディスク、家電などは耐震用グッズで補強したが、アパート自体は、震度4でも、sekai no owari かと思うほど揺れるのだ。
さらに、オーナーが言った。
「どうだろうね。分譲地にしたら、Mさんが買うというのは?」
いや、この年で、住宅ローンは無理ですよ。
「ご長男とかご長女が借りるということなら、何とかなるでしょ。
俺のメインバンクを紹介するからさ。便宜は最大限にはからせてもらうつもりだよ」
いや、それよりも、今のアパートを耐震設計の新しいものにリニューアルするというのは?
「そうすると、確実に家賃は上がるよ。きっと今の倍近くになるんじゃないかな」
オンボロアパートの家賃は2DKで7万2千円である。
それを我が家族は2世帯借りて、11万円にしていただいている。
格安だ。
その家賃が22万円になったら、我が家族はメシが食えなくなる。
それは、現実的ではない。
ただ、話をしているうちに、店子のことを、ここまで考えてくださる大家さんはなかなかいないだろうな、と感謝の気持ちがこみ上げてきた。
優しいんですね。
私がそう言うと、オーナーが真面目な顔で言ったのだ。
「だって、Mさんって、痩せてて貧相じゃない。
その貧しい姿が、うちのボロいアパートに似合い過ぎていて怖いんだよね。
環境が変われば、Mさんももう少しましになるんじゃないかと思ってね」
ああ・・・・・それは・・・・どうも、ありがとうございます。
(本当に優しい大家さんですこと)
オーナーは、武蔵野のアパート経営の他に、杉並で理髪店と美容院、駐車場を経営していた。
オーナーからは、その理髪店、美容院がらみの仕事を年に2回いただいていた。
そのオーナーから3年前に、肝を冷やすようなことを言われた。
「来年早々、アパートをぶっ壊して、分譲地にする予定なんだよね」
それを聞いた私は、パニックになって、そのまま東京駅まで行き、新幹線に飛び乗って、熱海まで行ったのである。
現実逃避。
駅前の旅行案内所で、日帰りで温泉を堪能できる宿を紹介してもらい、温泉に入った後、昼メシを食った。
昼メシの後は、また温泉とマッサージ。
なかなか有意義な現実逃避だったと思う。
それで、その後アパートをぶっ壊す話はどうなったかというと、2年前にオーナーが体調を崩したのとオーナーの長男の猛烈な反対にあったことで、話が滞っていた。
昨日、そのオーナーに、呼ばれたので行ってきた。
事務所には、タレントの橋下環奈さんのポスターが貼ってあった。
70歳近いオーナーは、橋下環奈さんのファンだったのである。
私が操作方法を教えた、iPhoneとiPadの画像フォルダの中は、橋下環奈さんの画像ばかりだった。
オーナーには、3人のお孫さんがいたが、彼らの画像は一つもなかった。
「だってさ・・・男ばかりだから、可愛くなくてねえ。
孫のつもりで、この子を見ているんだよね」
その橋下環奈さんファンのオーナーに、いきなり言われた。
「やっぱり、1年以内にアパートぶっ壊そうと思うんだけど」
また現実逃避しようかと思った。
しかし、続けてオーナーが穏やかな顔で言ったのを聞いて何とか踏みとどまった。
「まあ、引っ越しに当たってはできる限りのことはさせてもらいますよ。それに、築30年近いアパートは耐震性が劣るからね、いつ大地震が起きるかもしれないというときに、あんなアパートに住んでもらうのは、大家としては責任放棄のような気がするんだよなあ。それがずっと気になっていてね」
確かに、いま大地震が起きたら、我々家族はきっとただでは済まないだろう。
相当なダメージを受けるに違いない。
東日本大震災の後、家具やパソコンディスク、家電などは耐震用グッズで補強したが、アパート自体は、震度4でも、sekai no owari かと思うほど揺れるのだ。
さらに、オーナーが言った。
「どうだろうね。分譲地にしたら、Mさんが買うというのは?」
いや、この年で、住宅ローンは無理ですよ。
「ご長男とかご長女が借りるということなら、何とかなるでしょ。
俺のメインバンクを紹介するからさ。便宜は最大限にはからせてもらうつもりだよ」
いや、それよりも、今のアパートを耐震設計の新しいものにリニューアルするというのは?
「そうすると、確実に家賃は上がるよ。きっと今の倍近くになるんじゃないかな」
オンボロアパートの家賃は2DKで7万2千円である。
それを我が家族は2世帯借りて、11万円にしていただいている。
格安だ。
その家賃が22万円になったら、我が家族はメシが食えなくなる。
それは、現実的ではない。
ただ、話をしているうちに、店子のことを、ここまで考えてくださる大家さんはなかなかいないだろうな、と感謝の気持ちがこみ上げてきた。
優しいんですね。
私がそう言うと、オーナーが真面目な顔で言ったのだ。
「だって、Mさんって、痩せてて貧相じゃない。
その貧しい姿が、うちのボロいアパートに似合い過ぎていて怖いんだよね。
環境が変われば、Mさんももう少しましになるんじゃないかと思ってね」
ああ・・・・・それは・・・・どうも、ありがとうございます。
(本当に優しい大家さんですこと)