東京新聞の首都圏購読者40万世帯に配布されるタブロイド新聞『暮らすめいと』2012年12月号が発行されました。久しぶりに巻頭見開きの特集・鉄道の旅コーナーを担当し、久能山東照宮と生まれ故郷清水の見どころを紹介させてもらいました。
久能山東照宮をじっくり取材したのは、2007年の映画『朝鮮通信使』のロケ以来。案内してくれた権禰宜さんに当時の事を話したら、「覚えています、寒い日でしたよね~」と懐かしんでくれました。本殿内で、御神体の家康公に報告する・・・という趣旨で、林隆三さんに通信使の日記を朗読していただいたんです!
あれから本殿の塗り替え作業があり、国宝指定となり、参拝客の増加はもちろん、最近ではスペイン国王から贈られた家康の洋時計が話題沸騰中。ロケ当時とは一味違う、華やいだ雰囲気に包まれていました。洋時計のこと、家康の外交実績の一例として映画で取り上げてもよかったな・・・と今になって反省しています。洋時計についてはこちらの記事もご参照を。
グルメコーナーでは、どの店を取り上げるか本当に悩みました。今回取り上げた日本平~久能山~三保~清水エリアには県外観光客向けの新しいグルメスポットが数多くあり、甲乙つけがたいところ。最終的には、申し訳ないくらい趣味と独断で、JR清水駅近くの河良(かわよし)さんを選びました。夜しかやっていないし、ご存知の方はお解かりだと思いますが、店主の河本さんは、どちらかといえば職人気質で一本気で、隅々まで行き届いた接客サービスができる・・・というタイプではありません(河本さんゴメンナサイ)。
それでも、彼が提供する料理の素晴らしさと静岡の酒に対する深い愛情は、私が知る限り、“静岡県代表”として首都圏読者に情報提供するのに最適だと判断しました。加えて、店の紹介写真の中に、静岡の酒瓶をズラリ並べることで、酒のPRにもなるし、首都圏のこだわり酒徒ならばラインナップを見て興味を示す可能性大!・・・と目論んだわけです(河良の詳しい紹介はこちらを)。
東京新聞の購読者しか読めない情報紙ですが、お知り合いに購読者がいたらぜひよろしくお願いします!
以下、本文(ノーカット版)を再掲します。
風景をアートにしたホテル、徳川家康が眠る国宝・久能山東照宮へ<o:p></o:p>
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JR東静岡駅から日本平ホテル・ロープウエイ行きのバスに乗り、約20分。まずは今年9月にリニューアルオープンした日本平ホテルのラウンジで長時間移動の疲れをほぐした。ロビー真正面のテラスラウンジは、全面ガラス張りの向こうに富士山と清水港の絶景が広がる。まるで風景画のような美しさに息を呑む。それも道理で、ホテルは”風景美術館=日本平“をコンセプトにした設計とのこと。風景を楽しむだけでも価値がある。◇日本平ホテルTEL054-335-1131<o:p></o:p>
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日本平山頂と久能山東照宮を結ぶロープウエイで5分足らず。今回の旅のお目当てである久能山東照宮へ到着した。<o:p></o:p>
東照宮といえば首都圏では日光東照宮だが、久能山東照宮は日光よりも19年前に建立された。1616年4月、静岡・駿府城で75年の生涯を閉じた徳川家康は「遺体を駿河の久能山に葬り、葬礼は江戸増上寺で行い、位牌は三河の大樹寺に立て、一周忌を過ぎたら下野の日光山に勧請して関八州の鎮守となる」と言い遺した。これを受け、二代将軍秀忠の命で宰相頼将卿を総奉行、名工・中井大和守正清を大工棟梁としてわずか1年7ヶ月という短期間で造営された。桃山時代の技法を取り入れた権現造、総漆塗、極彩色の社殿は江戸初期の代表的な建造物として知られ、400年余の今も創建当時の堂々たる姿を伝える。
名古屋城、二条城、仁和寺など中井大和守正清が手がけた建造物の多くが国宝に指定されており、また久能山東照宮が中井の生前最後の作品であることから、平成22年12月、静岡県内の建造物では初めて国宝に指定された。御神体は家康本人、両脇に鎮座する相殿はなんと豊臣秀吉と織田信長。やはり歴史を動かしたこの三傑か・・・と感慨深かった。<o:p></o:p>
国宝指定を機に参拝客も激増した。取材に訪れた日も平日ながら団体客で賑わっていた。09年の富士山静岡空港の開港で、家康人気の高い中国・韓国の観光客も増えたという。拝殿の際は、先般の領土問題が長引かなければ、と祈らずにはいられなかった。◇拝殿参拝料大人500円<o:p></o:p>
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家康の洋時計が伝える海を越えた国際親善<o:p></o:p>
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久能山東照宮社殿の奥には、神廟(家康の墓)がある。埋葬時はこじんまりしたほこらだったが、3代将軍家光が高さ5・5m、外回り8mの堂々とした石塔に造り替えた。廟は家康の遺言により、生まれ故郷の岡崎や京都のある西を向いている。
楼門まで戻り、脇にある久能山東照宮博物館を見学した。徳川歴代将軍ゆかりの宝物2千余点を有する日本屈指の歴史博物館。中でも話題になっているのが、徳川家康がスペイン国王フェリペ三世から贈られた洋時計である。
江戸幕府成立間もない1610年、スペイン領フィリピンの提督が乗った船が千葉県御宿海岸沖で遭難し、地元漁民が献身的に救護した。助かった乗組員は家康が三浦按針に作らせた帆船でメキシコまで送り届けた。その返礼に贈られたものである。家康はこの時計を大名お抱えの職人たちに見せ、これがきっかけで日本のからくり歯車の技術が発展したともい
われる。
今年5月、イギリス大英博物館の古時計専門家に鑑定してもらったところ、制作当事(1581年)のほぼ原型のまま、今も鐘の音が鳴る世界でも類のない時計であることが判明。ヨーロッパ技術発展史における貴重な遺産であると太鼓判を押された。博物館ではいつでも見られるので、東照宮を訪ねた際は必見である。
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博物館を後にし、岐路は、久能海岸まで1159段の石段を下った。海に面した一ノ門は、元旦の初日の出スポットとして地元でも有名だ。明るい日差しと潮風を全身に受けると、ここを安住の地に選んだ家康公の、泰平を願う真摯な気持ちが理解できた気がした。
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温泉<o:p></o:p>
三保はごろも温泉天女の湯<o:p></o:p>
日本平と並ぶ富士山の景勝地三保半島の名旅館『三保園ホテル』で、地区では初めて、2006年に天然温泉が開湯した。自家源泉掛け流し。海に近いため、塩分やミネラル分が豊富。入浴と昼食がセットになった日帰りコース(3500円・4200円)も人気がある。ホテルのすぐそばにある羽衣の松も必見。■日帰り入浴/大人500円(タオル別料金)■受付時間11時~21時■静岡県静岡市清水区三保2108 三保園ホテル内■TEL054‐334‐0111<o:p></o:p>
http:.//www.mihoen.jp■交通/JR清水駅よりバス「三保本町」下車、ホテルより送迎あり。<o:p></o:p>
■温泉データ<o:p></o:p>
○泉質/ナトリウム塩化物強塩温泉○泉温26・5℃○適応症/神経痛、筋肉痛、五十肩、冷え症、慢性消化器病、疲労回復。<o:p></o:p>
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味彩<o:p></o:p>
割烹居酒屋『河良(かわよし)』<o:p></o:p>
JR清水駅から徒歩7~8分、清水税務署の裏手にある小さな割烹居酒屋。主人が駿河湾の桜海老、黒鯛、清水両河内の里の味など地元食材を手間隙かけて本格的な会席一品に仕上げ、しかもほとんどが500~800円というリーズナブルさ。料理に合わせて自慢の静岡の酒をチョイスしてくれる。筆者は日本酒の取材を続けて25年になるが、酒と料理の食べ合わせに関しては日本屈指の店といってよい。<o:p></o:p>
■静岡県静岡市清水区江尻東1丁目5-6 TEL054-367-9990 17時30分~23時30分 日曜定休 *予約すれば日中や日曜もOK<o:p></o:p>
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おみやげ<o:p></o:p>
久能山東照宮謹製 東照公の遺訓扇<o:p></o:p>
「人の一生は重荷を負て遠き道をゆくが如し・・・」で名高い家康の遺訓が書かれた扇。2000円●久能山東照宮社務所/TEL054‐237-2438<o:p></o:p>
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国宝久能山東照宮献上米・JA御殿場こしひかり<o:p></o:p>
富士山のお膝元御殿場は静岡県屈指の米どころ。久能山東照宮の国宝指定記念にJA御殿場から限定発売された。450g500円●久能山東照宮社務所/TEL054‐237-2438<o:p></o:p>
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万年青(おもと)<o:p></o:p>
久能山東照宮の社殿装飾にも描かれた日本の伝統的な観葉植物。万年青々として縁起が良いことから、家康公は江戸入城の際にも持参したという。社務所前に日本おもと協会の展示即売コーナーがある。一鉢1000円~●久能山東照宮社務所/TEL054‐237-2438<o:p></o:p>
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河良の特製桜えびおにぎり
割烹居酒屋河良の隠れ人気メニュー。衣を着けて繊細に揚げた桜えびをごはんに混ぜ、ひと口大に握った。土産用は8個750円●河良/TEL054-367-9990<o:p></o:p>
交通費(品川―東静岡(清水)往復5880円<o:p></o:p>
首都圏から静岡方面までJRの在来線を利用する際は熱海で乗り換えとなる。接続はスムーズだ。JR東静岡駅から日本平方面へのバスは本数が少ないので事前に問い合わせを。なお日本平ロープウエイは12月10日から23日まで設備点検で運休となるため、久能山東照宮にはJR清水駅からバスで久能山下まで行き、1159段の石段を登る。◇しずてつジャストライン(バス)0120―012―990。◇日本平ロープウエイ054―334―2026<o:p></o:p>
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久能山東照宮博物館<o:p></o:p>
久能山東照宮が所蔵するすべての宝物類を保存展示。徳川歴代将軍の鎧、兜、刀剣、書画類など500件2千余点を数え、国宝・重要文化財185件を有する。なお平成25年2月20日から9月30日まで改築工事で休館となるので要注意。○9時~16時○入館料一般400円(社殿参拝共通券800円)○無休○久能山東照宮社務所電話054‐237‐2438<o:p></o:p>
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龍華寺<o:p></o:p>
久能山東照宮よりバスかタクシーで約10分、家康の側室お万の猶子・日近大僧都が開いた日蓮宗の寺。富士山を愛した僧都らしい観富の庭で知られる。「滝口入道」の文豪高山樗牛もこの地に眠る。庭園の大蘇鉄と大サボテンは国の天然記念物。○拝観料300円○TEL054‐334‐2858<o:p></o:p>
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鉄舟寺<o:p></o:p>
飛鳥時代に藤原家出身の久能忠仁が久能山に建立。奈良時代に行基が久能寺と号して栄えたが、武田信玄が久能山に築城するために移転し、江戸後期以降は衰退。明治になり、静岡藩に勤めた旧幕臣の山岡鉄舟が再興し、鉄舟寺と改めた。龍華寺から歩いて10分○拝観料300円○TEL054-334-1203<o:p></o:p>
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