杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

『獺祭』の躍進と國酒から考える日本の未来

2013-05-31 20:10:15 | 地酒

 5月はブログをあまり更新できませんでしたが、過去記事に訪問してくださったみなさま、本当にありがとうございました。消耗される情報ではなくアーカイブになる記事を、と心がけてきた者として嬉しく思います。

 

 今月ギリギリになってしまいましたが、ここで溜まった酒の話題で締めたいと思います。

 

 5月16日(木)には名古屋で開かれた『東海4県21世紀國酒研究会~國酒から考える日本の未来』に参加しました。5月21日(火)・22日(水)は東広島市で開催された全国新酒鑑評会に、5月26日(日)にはホテルセンチュリー静岡で開かれた『ヴィノスやまざき創業100周年記念・2013地酒フェスティバル蔵会』に参加しました。

 

 

 『東海4県21世紀國酒研究会~國酒から考える日本の未来』は、こちらの記事でも紹介したENJOY JAPANESE KOKUSHUプロジェクトの仕掛け人・佐藤宣之さん(現・名古屋大学教授)が呼びかけた講演会。基調講演に『獺祭(だっさい)』の蔵元・櫻井博志さん、パネリストに知多の地酒『生道井(いくぢゐ)』の蔵元・原田晃宏さん、静岡経済研究所の大石人士さん、国税庁課税部酒税課長の源新英明さん、外務省大臣官房在外公館課長の植野篤志さん、名古屋大学の家森信善さん、名城大学の加藤雅士さん。

 

 仕掛け人の佐藤さんが金融庁から名古屋大学に出向中で、なおかつこのプロジェクトに愛知出身者が多いことから、東海4県を拠点とする学界からの参画をベースにし、なおかつ東海4県にこだわることなく酒造・酒販関係者をふくむステークホルダーの参画を呼びかけた会、だそうです。

 

 

 

 

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 『獺祭(だっさい)』の蔵元・櫻井博志さんは、今、日本で一番、マスコミや講演等に引っ張りだこの“勝ち組”酒造家の代表格ですね。

 

 蔵のある山口県岩国市周東町は人口300人の過疎地で、櫻井さんが社長職を継いだ1984年当時、製造石高は700石、売り上げは年9700万円、従業員は9人だったそうですが、現在は石高1.6万石、売り上げは40億円、社員は100人を超えたとか。30年前、蔵を訪ねる客は年間ゼロだったのが、今は5000人。昨年は海外からも50組のゲストを迎えたそうです。

 

 岩国市周東町って大学の友人の故郷で、岩国市に合併される前、玖珂郡周東町と表記されていた学生当時、遊びに行ったことがあるんですが、本当にのどかな田舎でした。先日、その友人と広島で久しぶりに呑んだのですが、『獺祭』の大メジャー化には地元民もビックリのようです。「今度、送っちゃるね」と言うので、「静岡市内にマークイズ静岡ってイオンみたいなショッピングモールができて、そこの酒屋が獺祭専門店になってるよ」と話したら、またまたビックリしてました。

 

 『獺祭』のこの急成長、櫻井社長の先見の明と一言で片付いてしまうのですが、最も重要なのは、地域酒造業の存在意義をしっかり自覚されていることだと思います。岩国市は山陽ベストコンビナート地帯にあり、戦後は企業誘致によって発展した地域。町の主役は工場で、飲食街の主役は大企業の工場長。地元の人々は彼らを御大臣のように扱い、従順に勤めれば生涯安定、という、悪く言えば奉公人根性のようなものが染み付いてしまったようです。工場の海外移転が進むと、こういう地域はあっという間に沈滞してしまい、近年では山口県内の半導体関連企業の倒産が大問題となっているそうです。

 

 そんな中、櫻井社長は、「酒蔵は、どんなに規模が小さくても地元に本社機能があり、研究開発もブランディングもマーケティングもここで出来る。日本酒のブランディングとはすなわち日本の文化を発信し、守り伝えること。地酒なら、地域の文化を担うこと。そういう使命を持つ企業は、長期的に見たら、地域にとって大きな存在意義を持つ」と考えます。

 

 

 國酒と言われる酒類は、日本に限らず、世界各国で自国内の消費量は落ち込んでいます。フランスでもワインの一人当たりの消費量は3分の1に落ちているようですが、ワインメーカーの売上高は変わりません。国内で売れない分は海外で儲けているからです。日本が恰好のターゲットですね。名だたるワインメーカーやシャンパンメーカーは、京都の店を戦略的にマーケティングしています。

 

 

 京都へよく通う私は、日本酒専門の店しか行かないのでピンとこないのですが、新感覚の和モダン店に限らず高級料亭でも、日本酒よりワインの品揃えを充実させる店が増えているようです。でも「京都の料亭を選んで来る海外のお客さんが、ワインを好き好んで飲むでしょうか。本来は和食に合う日本酒をしっかり置いてもらうべきなのに、放っておけば日本酒が入る余地はなくなります」と櫻井社長。

 

 ワインメーカーに倣って10年前から海外進出を始めた櫻井社長は、「日本で売れないからなんとか買ってくださいと頭を下げるような営業はしない。最高のものを持って行き、これが日本の文化だと堂々と胸を張る売り方をする」と腹をくくり、結局、仕込む酒全量をすべて山田錦原料の純米大吟醸規格にしてしまいました。

 

 

 私は以前、「獺祭は全量山田錦の純米大吟醸だ」と聞いた時、小さな蔵元が勝負に出たんだな、と思ったのですが、今回、製造石高1.6万石と知って聞いてビックリ。山田錦は兵庫県加東郡の特A地区の契約農家から年間4万俵購入。しかも発注したのは4.3万俵。国の減反政策のせいで需給バランスがおかしくなっているんだそうです。櫻井社長、ついこの前、安倍首相に「減反規制を何とかしてくれ、山田錦をもっと自由に作らせないと海外に売れない」と直談判されましたっけ。

 

 過去20年、二桁成長で来ており、ゆくゆくは5万石蔵を目指すとか。そうなると山田錦は20万俵必要になりますが、現在、日本全体で31万俵しかとれないそうです。山田錦は過去、全国で40万俵強、生産していた時代もあり、「栽培適地はまだまだある。新しい適地を開拓する必要もある。そうなると農業のしくみそのものを変える必要がある」と櫻井社長は明言します。

 

 

 「日本酒は最盛期には950万石売れていたが、現在は300万石にまで落ち込んだ。最盛期に二級酒を飲んでいたような消費層は、今、安いワインを飲んでいる。こういう消費者を取り戻そうとしても、並行複式発酵の日本酒は、ワインより一手間多い分、コストで勝てない。根本的に低価格アルコールとの競争には勝てない。そうなると、高付加価値品として売っていくしかない。

 ふだん低価格酒を飲む若者も、海外経験が増えていくと、國酒である日本酒のことを知っておかないとまずい、と解るようになる。彼らに日本酒の美味しさをアピールする仕掛けを、スピード感を持って展開していかなければならない」と締めくくりました。

 

 

 

 

 後半のパネルディスカッションでは、『生道井(いくぢゐ)』の蔵元・原田晃宏さんが、「海外に行くと、日本の酒造業が150年以上続く直系のファミリービジネスだということに、まず驚かれる。低価格酒と同じ土壌に乗るのは確かに厳しいため、海外展開を進め、同時に、地域の米や名城大学と共同開発したカーネーション酵母のような差別化できる技術で、オンリーワンの酒を造っていきたい」と語りました。

 

 

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 静岡経済研究所の大石人士さんは、『静岡deはしご酒』のイベント紹介をし、「今後は世界遺産登録が決まった富士山を活かす方法を考えていきたい」とアピール。

 冒頭で、客席に並んで座っていた神田えり子さんと私をめざとく見つけて「今日は自分の酒の師匠の女性が2人来ているので話しにくい」と言い、隣の櫻井さんの笑いを誘っていましたが、櫻井さんはどうみても、「酒の師匠の女性」って「飲み屋のママさん」だと思っただろうなあ(苦笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 外務省大臣官房在外公館課長の植野篤志さんによると―

○日本酒の海外輸出額は昨年207億円と過去最高を記録した。

○安倍内閣でもクールジャパン推進会議で、和食・メディアコンテンツ・スイーツと並んで酒類も重点項目に挙げている。

○在外公館で母国から料理人を同伴してくるのは中国と日本だけで、海外では日本の大使に招かれたら日本食と日本酒が楽しめると期待されている。

○これまでワイン一辺倒だったが、ゲストのほうから日本酒はないのか、と聴かれるようになっている。

○一千年近い歴史を持つファミリービジネスであり、コメを原料とした日本の食文化の象徴でもあり、政治家や企業人には造り酒屋出身者が多い。SONYの盛田家も酒蔵である云々、外交官にとって日本酒は外交トークのネタに事欠かない。

 

 

 

 名城大学の加藤雅士さんは「麹菌は“國菌”に認定されている」とし、日本の醸造発酵技術についての再認識・再評価を呼びかけておられました。

 

 國酒という言葉に象徴されるようなグローバルな話題で、故郷の酒をチビチビ呑んでいる自分にとっては遠い世界のような気がしましたが、会場の名城大学駅前サテライトは入室しきれない人でギッシリ。NHKの取材も入っていて熱気にあふれていました。日本酒が、経営や外交の専門家の講演のテーマになっているって、なんだかワクワクしますよね。

 

 

 なお、5月22日の全国新酒鑑評会については、【日刊いーしず】の隔週連載コラム『杯は眠らない』第9回(こちら)で紹介しましたので、ぜひご笑覧くださいませ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


沼津発・日本最高峰のお茶とお酒を味わうセミナーご案内

2013-05-17 10:31:23 | 地酒

 初夏の陽気が続いています。気分爽快!と行きたいところですが、フリーランサーにとっては年度初めのこの時期、コンペや入札で、今年度の仕事のボリュームが決まる気の重い季節でもあります。

 

 毎年頑張って成果を出し、コンペ企画審査にも打ち勝って、長年受注してきた県の仕事に、今年、とうとう落ちてしまいました。行政の場合、同一業者と継続契約するにはオンリーワンの専門領域でもない限り、なかなか難しいだろうと毎年毎年覚悟しつつ、(私がお世話になっていた制作元の)見積もりも含めた実績や企画のよさをきちんと評価されてきたと信じてきました。しかし、やはりこういう時が来たのですね。・・・残念ですが、これもフリーの宿命といえば宿命なんです。

 

 収入の柱をひとつ失ったショックもさることながら、とてもやりがいがあり、多くを学ばせてもらい、自分が生まれ住む静岡県が本当に好きになれた仕事だっただけに、他の仕事を落としたとき以上の喪失感があって、ブログの更新も滞ってしまうほど落ち込んでいました(苦笑)。

 

 

 そんなとき、県の知り合いから、県のイベントで集客に力を貸して欲しいとの連絡。このタイミングでか~と正直、心が折れそうになりましたが、こうしてブログを再開することでこのドツボから抜け出せればと、気合を入れ直して紹介させていただきます。

 

 

 

 講師の山本洋子さんは静岡酒にも造詣の深いライター&プランナーで、消費者目線でわかりやすく語ってくれると思います。地酒は、沼津の『白隠正宗』蔵元・高嶋一孝さんが直接解説をされるそうです。地酒ファンにしてみたら、1500円の内容とは思えない充実したプログラムですから、ご都合のつく方はぜひ!

 

 

 

 

沼津発・日本最高峰のお茶とお酒を味わうセミナー

静岡県はお茶や魚などの食材が豊富にあり、お米の消費量も日本一の“和食文化先進県”。さらに、全国に知られる吟醸酒王国です。若者にその魅力を伝えるため、若くして社長になった生産者にその工夫と技を伺いながら、お茶と地酒、またそれぞれに合う食を考えるセミナーを開催します。

 

◇主催  県茶業農産課、県東部農林事務所

 

◇日時  平成25年5月25日(土)午後1時から午後5時30分まで

 

◇集合  JR沼津駅北口 午後1時

 

◇会場  山二園(沼津市中沢田)、千本プラザ(沼津市本字千本)

 

◇対象  20歳以上の学生、食と農に関心のある人、青年農業士 等 40人

 

◇概要
コーディネーター・講師  山本 洋子氏
(地域食ブランドアドバイザー、酒食ジャーナリスト)

 

 鳥取県境港市生まれ。㈱オレンジページ・雑誌編集長を経て独立し、地域食ブランドのアドバイザー、酒食ジャーナリストとして全国行脚中。「感動と勇気を与える地方のお宝探し」がライフワーク。「1日1合純米酒、田んぼの未来を燗がえる!」がモットー。著書『純米酒BOOK』ほか。ホームページはこちら

 

プログラム
・ 茶工場、茶園見学、お茶の煎れ方について(山二園代表 後藤 義博氏から)
・ 講演「おいしい!感動をつくる仕事 沼津から考える日本のお茶とお酒」
・ 試飲(お茶とスイーツ、地酒とつまみのマッチング)

 

 

申込方法
・募集〆切 5月20日(月) 定員になり次第締め切ります。
・参加料 1,500円(学生は1,000円 学生証を持参)
・申込方法  こちらを参照。
・受付完了後、参加票と講師からの事前課題(アンケート)をお送りします。

 

申込み・問合せ先
静岡県 経済産業部 茶業農産課(水田農業班)
Tel 054-221-3249  Fax 054-221-2299


バラと地酒とアワビと新茶

2013-04-30 11:36:14 | 地酒

 連休前半、お天気に恵まれましたね。私は3日間とも仕事がらみであちこち出かけました。久しぶりにきれいなモノ・美味しいモノにありつけてHAPPYな連休でした!

 

 

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 4月27日(土)は、かみかわ陽子ラジオシェイクの収録で、ゲストに、静岡市の安倍奥・油山のバラ生産者鈴木雄介さんをお招きしました

 鈴木さんが作った深紅のバラ『ヌーベルヴァーグ』は、今年の関東東海花の博覧会(花卉の品質コンテストでは日本で最も権威があるといわれる品評会)で、最高賞(農林水産大臣賞)を受賞しました。そのヌーベルヴァーグを、4月20日に新宿御苑で行われた安倍総理主催の桜をみる会で、陽子さんが総理に直接プレゼントしたんですね。そんな経緯でゲスト出演と相成りました。

 

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 22歳で、両親のバラづくりを継ごうと家業に入り、現在34歳の鈴木さん。栽培が難しいといわれるヌーベルヴァーグに挑戦して5年目の快挙だそうです。ニュージーランドで育種された品種で、色は黒味がかった赤・花びらがギザギザになっているのが特徴です。最近のバラのトレンドは、どちらかといえば、淡い中間色やパステルカラーなんだそうですが、あえてトレンドに背を向け、直球勝負で挑んだのが奏功したんですね。家業を継ごうと思ったきっかけを「両親が、とても楽しそうに、イキイキとバラを作っていたから」と明快なお答え。こういう若い後継者が身近にいるって、なんだかこちらも勇気付けられるような気がします。

 

 

 番組内では、私からも松下明弘さんの【ロジカルな田んぼ】について紹介コメントを入れさせてもらいました。オンエアは連休明けの5月7日(火)18時30分からFM-Hi (76.9) です。静岡・清水・藤枝の一部エリアしか聴けないんですが、聴ける人はお願いしますね♪

 

 

 

 

 

 28日(日)は、下田自酒倶楽部が企画販売するご当地酒『黎明(れいめい)』の新酒お披露目会に参加するため、友人を伴い、電車で下田まで遠征しました。お昼に着いて、まずは駅のそばにある蕎麦処【いし塚】に。以前、アットエス地酒が飲める店(こちら)で紹介させてもらって以来、下田で國香が飲める貴重な店としてすっかりファンになりました。

 

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 私の地酒取材歴の中でもベスト5に入る!國香×いし塚の蕎麦味噌コラボ。あまり日本酒を飲みつけない友人も、スイスイ味わってました。いただいたのは國香特別純米でしたが、他の蔵の凡庸な純米大吟を完全に凌駕する素晴らしい味わい!。繊細な香味が絶妙に調和し、私が何より蔵元・松尾さんの酒らしいと感じる、ノド越しがストンと落ちる、そのさばけの良さが見事に表現されていました。この酒質を純米酒クラスで発揮できるとは、実に恐るべき蔵元杜氏だ・・・と改めて敬服、というか、本当に「出会えてよかったぁ」と心から感動する酒質です。

 

 今、國香は特約店でも品切れ状態で、ファンはやきもきしていますが、松尾さんには過度なプレッシャーを与えず、ご自身がトコトン納得する酒だけを造り続けてほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

 下田自酒倶楽部のご当地酒『黎明』は、過去記事(こちら)でも紹介したとおり、下田で育てたキヌヒカリを原料に、富士高砂酒造に製造委託した純米吟醸です。一時期、沼津の『白隠正宗』高嶋酒造で造ったこともありましたが、今は高砂さんに戻ったようです。下田市内の酒販店仲間が会員を募り、地域で買い支え、下田の新たな観光特産品に育てていこうと頑張っています。事務局を預かる下田ケーブルテレビの渡邉社長がなかなかのアイディアマンで、女子力を活用Dsc_0164して“黎明ガールズ”に田植えや稲刈りのPR隊になってもらおうと準備していて、私のような耳年増のオバサンには、若い女子たちへの地酒指南ぐらいしか手伝う余地はありませんが、下田では、楠山市長はじめ、大切にしていきたい、いろいろな酒縁があるので、出来る限りのお手伝いをと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

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 この日は水産会社の社長さんが、アワビの刺身盛りをドーンと差し入れてくれました。コリコリとした黒アワビ、マイルドな白アワビ、アワビの肝など等・・・ふだんの飲酒生活では考えられない贅沢な酒肴が並び、ホント、眼が白黒状態でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 29日(月)は、天竜茶の太田昌孝さんの出品茶摘み取り作業を取材に行きました。天竜の太田さん・・・知ってる人にはおなじみ、静岡県いや日本を代表するお茶作りの名人ですね。昨年の全国茶品評会普通煎茶4キロの部で最高賞(農林水産大臣賞)受賞をはじめ、数々の受賞歴を誇り、2008年の北海道洞爺湖サミットでは太田さんのお茶が各国首脳にふるまわれました。太田さんの最高級茶を水で抽出したお茶をワインボトルに詰めた『MASA』は、高級ギフトとして有名百貨店等で注目されています。

 

 

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 この時期は各マスコミの取材も殺到していて、TBS、テレビ東京、朝日新聞にニアミスしました。私のようなローカルライターが取材に来ました~と言っても、お茶摘み支援隊の皆さんはどこ吹く風で、「写真はこういう角度で撮りなさい」とご指南くださるおばちゃんも(笑)。取材慣れした方々のおかげでスムーズに進みました。

 

 

 

 太田さんの茶園を訪ねるのは2回目。前回訪ねたときは、朝日新聞の記者とバッティングしてしまって、十分なお話が聞けなかったところ、奥様があれこれサポートしてくださいました。そこで、お礼も兼ねて、下田で調達したキンメダイの干物を差し入れ。「山では手に入らないわねえ~」と、とても喜んでいただきました。

 

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 すべて手摘みの出品茶摘み取りには、近隣から100人の助っ人が集まります。その方々の食事やおやつの世話をはじめ、摘葉や精揉に必要な道具の手入れや準備はすべて奥様の仕事。気がつくと、奥様は玄関の上がり場でハァ~っと息をついて疲れたご様子でした。この日はアテにしていた親戚が急病で来れなくなり、本当にお一人で大変だったそうです。・・・でも名人を支える妻というのは気丈ですね。

 太田さんは「お茶は自分の子どもより可愛い」と口癖のようにおっしゃる人ですが、確かに太田さんのお茶も、奥様との二人三脚で産まれるものだと実感しました。

 

 

 

 

 帰り道、遠州森町一宮駅近くを通り、久しぶりに入鹿ハムさんに立ち寄りました。國香酒造の仕込み水を使って作るハムやベーコンとして何度か取材させてもらった店です。「このところ松尾さんがお忙しいのでお水をもらいに行くの、遠慮しているんですよ」と申し訳なさそうにおっしゃっていましたが、なんのなんの、この店のロースハムも、石塚さんの蕎麦味噌に負けないくらい、私的には、ベスト・オブ・國香の酒肴です。

 

 それにしても、静岡県は東西南北、なんと、食の豊かな県だろうと、改めてしみじみ感動します。と同時に、世に溢れるグルメ情報の洪水の中、こういう豊かさを的確に伝えるにはどうしたらいいんだろうと、改めてグズグズ悩んでしまいます・・・。

 


酒粕の効能と活用

2013-03-15 15:30:03 | 地酒

 今日はカンタンな業務連絡です。すみません。

 

 eしずおかのコラムサイト『日刊いーしず』に月2回連載中の地酒コラム「杯は眠らない」の第5回が本日UPとなりました。今回は、ちょうど今の時期に楽しめる搾りたて限定酒のイロハと、酒粕の効能や活用方法について紹介しました。

 

 

 今年はいつにも増してあちこちで酒粕をいただく機会が多く、いつにも増して、どう消費しようか頭を悩ませていたところ。試しに、毎朝飲む豆乳+バナナスムージーを、バナナの代わりに吟醸酒粕+ハチミツにしてみたところ、意外にイケました。しかもおまけにお通じが実にスムーズPhoto
に・・・。

 調べてみたら、2年ぐらい前にNHKのためしてガッテンで酒粕の新しい有効成分として注目された「レジスタントプロテイン」というのが効いたみたいです(なぜお通じがよくなったかは「杯を眠らない」をご参照ください)。

 

 

 酒粕自体は淡白な味なので、たぶん、お味噌とかバターとかハチミツなど、他のトロトロ甘味を加えたら、味がグ~ンとふくらむと思います。独り身の私は料理レパートリーに乏しく、いろいろ作って試す機会も少ないので、料理好きのみなさま、ぜひいろんな酒粕料理を考案し、私に教えてくださいね。


文化創造アルカ&奈良の伝統酒呑み比べ

2012-12-04 17:45:54 | 地酒

 12月1日~2日の京都奈良報告つづきです。1日は京都で宿が取れず、奈良のビジネスホテルに泊まることにしました。そして以前、お世話になった奈良の文化情報誌『あかい奈良』の編集長・倉橋みどりさんに久しぶりにお会いすることに。

 

 

 『あかい奈良』は奈良で活動するライター、フォトグラファー、デザイナー、そして印刷会社が広告ナシ・ノーギャラで発行していた文化情報誌。そのクオリティの高さは、奈良、京都をはじめ、東京国立博物館ミュージアムショップでも常設販売されていた等で証明されていました。歴史好きのライターとしては手弁当でも編集に関わりたい!と私も遠路はるばる取材に参加させていただき、そのつど、みどりさんのお宅に泊めていただいたりして、本当にお世話になりました(こちらを参照してください)。

 

 

 みどりさんは、『あかい奈良』が休刊になった後、自ら『NPO法人文化創造アルカ』を立ち上げ、新たな文化情報発信活動を始めました。こちらの記事でも紹介したとおり、奈良きたまちの古民家を拠点に、歴史や生活文化等をテーマにした講座やイベントを開催。雑誌で発信していた情報を具体的に見せて語って体験してもらうというわけです。自分が地酒研究会を始めたときのモチベーションに近いものを感じ、“同志”として心から頼もしく思いました。

 

 

 みどりさんとは1日夜、近鉄奈良駅近くの鍋料理の店で、大和地鶏の吟醸塩出汁鍋というのをいただきながら、旧交を温めました。アルカではさっそく以下のような講座を企画中です。興味のある方はHPでチェックしてみてください!

 

 

シリーズ奈良きたまち学

 

*奈良きたまちは、奈良時代から現在まで長い時間を重ね、さまざまな歴史の足跡とともに人々が暮らしています。「奈良きたまち学」とは、どこからどこまでが奈良きたまちなのか、このまちの魅力をどう整理し、発信していくべきか、歴史的・地理的に考えていくことです。

 

 

平城宮跡保存運動のはじまり

 

第1回 溝辺文昭さんに聞く「嘉十郎と文四郎」

 

■日時 12月16日(日) 13時15分~15時30分

 

■場所 空海寺(奈良市雑司町167)

 

■会費 2000円(文化創造アルカ会員は1500円。即日入会可)

 

 

 

第2回 平城宮跡保存運動の歴史

 

■講師 吉川聡氏(奈良文化財研究所歴史研究室長)

 

■日時 1月20日(日) 13時15分~15時30分

 

■場所 空海寺

 

■会費 2000円(同)

 

 

 さてさて、久しぶりの奈良だったので、新大宮のホテルまでぶらぶら夜歩きしようと三条通りを散策。みどりさんに教えてもらった『大和酒の店&チョットBar 酒商のより奈良三条店』を訪ねました。場所は三条通りのホテルフジタ奈良のまん前です。

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 メニューや酒棚のラインナップを見て「アタリ!」と心の中でガッツポーズ(笑)。菩提酛、水酛(生酛)、生酛どぶろく、山廃酛、速醸酛と、室町時代から近代にかけての酛造りを一度に呑み比べできるなんて、菩提酛の発祥(奈良正暦寺)の地ならではのレアな体験です。カウンターに立つおかみさん(おたぬきさん)も豊富な酒の知識を披露し、いろいろチョイスしてくれました。

 

 このサイズで1杯300~400円で呑み比べできるのも酒党にはありがたいサービス。つまみは乾きモノ(ナッツ)だったけど、これが酸度の高い伝統酒にはぴったり合うんですね。静岡吟醸では体験できない味わいでした。

 

 

 歴史が深く、文化を大切にする人々が暮らす街で、美味しい地酒を手軽に呑める。イマドキの“大人旅”にはベストな条件が揃っているんじゃないでしょうか。奈良には勝てないまでも、駿府静岡だって掘り起こせばいろいろな魅力があるはず。まず創らなきゃならないのが、街中で、気軽に地酒が試飲できる場所! 前夜、静岡発の夜行バスに乗る前に駅南銀座の『湧登』で磯自慢と初亀の新酒しぼりたてをひっかけたのですが、ホント、街中や駅の近くでちょこっと呑める店がどんなにありがたいか・・・とりあえずは年末ジャンボに賭けてみるか(苦笑)。