杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

広島西条酒蔵通り

2014-06-03 09:57:41 | 地酒

 5月末、広島に行ってきました。27日は東広島市の西条酒蔵通りを散策したあと、第50回(独)酒類総合研究所講演会。28日は第102回全国新酒鑑評会製造技術研究会に参加しました。酒の取材をライフワークにする者にとっては年に1度、初心に戻る大切な自主研修の場です。

 

 

 

 

 

Imgp0219  いつも講演会と鑑評会だけのトンボ帰りでしたが、今回は朝、夜行バスで広島に着いて、いつもの【てらにし珈琲】でモーニングを食べた後、西条へ直行。午後いちの講演会まで、酒蔵通りを初めて散策しました。

 

 

 

 

 

 

  ご承知の通り、広島西条は兵庫の灘、京都の伏見と並ぶ日本屈指の銘醸地。JR山陽本線西条駅の周辺に8蔵が点在し、酒蔵の白壁、赤レンガの煙突、江戸時Imgp0220代の宿場町の面影を残す御門や商家が立ち並ぶ趣きのある町です。毎年10月には『西条酒祭り』が開かれ、大いに賑わいますね。今年は10月11日(土)・12日(日)の予定。こちらをご参照ください。

 

 

 

 

 

 

 

 白牡丹酒造では棟方志功が描いた額絵が、賀茂鶴酒造では昭和の大女優山田五十鈴と田中絹代をモデルにした看板絵や文化人の【酒】の墨字を見て、ここが単なる製造産地ではなく酒が町の歴史やImgp0221 文化に昇華していた姿を実感しました。

 

 

 

 

 

 

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  賀茂鶴酒造の大吟醸特選ゴールド、4月に来日したオバマ大統領が銀座のすきやばし次郎で味わった日本酒だそうです。

 

 Imgp0227 磯自慢が洞爺湖サミットの乾杯酒に使われたときは、酒蔵や小売店がそのことをガンガン宣伝する・・・なんてことはありませんでしたが、賀茂鶴では蔵はもちろん、小売店・百貨店・土産物店の酒売り場でもオバマさんと安部さんのツーショット写真入りでガンガン宣伝していました。もちろん、使われた乾杯酒のスペックや生産量が違うし、蔵全体の生産規模や流通範囲もまったく違うので、同列に語れません。が、地酒がその土地の顔になり、文化や歴史として認知されるためには、こういう仕掛けも必要なんだろうな・・・と感じさせられます。

 

 

 

 なんですきやばし次郎で賀茂鶴?とこちらが質問する前に、蔵のガイドさんが「うちは日本で初めて大吟醸を初めて商品化した、品質最高峰を究める蔵元。大吟醸の最初のお客様が東京の高級すし店」と自信たっぷりに説明してくれました。

 

 

 

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 「静岡から来たなら、こういうの、欲しいでしょう?」と見せてくれたのが、富士山模様の白磁徳利。昔、外国人向けのノベルティとして造ったそうです。すっきりしたデザインで品があってイイですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 お昼は賀茂鶴のガイドさんが薦めてくれた駅前の居酒屋で魚ランチを食べ、午後1時から東広島市市民文化センターでの酒類総研講演会に向かいました。

 演題は以下の通り。

 

 

 

①少量飲酒の健康への影響(Jカーブ)

②お酒の中の微生物を改めて知る

③清酒の中鎖脂肪酸等分析法とその成分調査

④平成25酒造年度全国新酒鑑評会について

⑤特別講演「世界は日本酒を待っている!~南部美人の海外戦略と世界の日本酒を取り巻く現状」

 

 

 

 

 詳細は後ほど。


正雪・山影杜氏の〈現代の名工〉祝賀会

2014-05-12 22:15:21 | 地酒

 ひと月遅れのご報告です。4月14日(月)、JR静岡駅前グランディエールブケトーカイで、『正雪』の杜氏・山影純悦さんの〈卓越した技能者=現代の名工〉選出の記念祝賀会が盛大に開かれました。全国には〈現代の名工〉に選ばれた酒造り職人が何人かいらっしゃいますが、静岡県の酒蔵に務める杜氏さんでは初めて。県酒造史に残る快挙ということで、県内多くの蔵Imgp0110 元さんや杜氏さんが顔をそろえて 山影さんを祝福しました。

 

 

 『正雪』の醸造元・神沢川酒造場の望月正隆社長が山影さんに花束を贈呈し、静岡浅間木遣り保存会の皆さんが伝統の木遣り唄でお祝い。

 

 

 乾杯の音頭をとったのは『開運』の土井清愰社長です。能登杜氏四天王の一人に数えられた波瀬正吉さんがご存命だったら、現代の名工に間違いなく選ばれていたと思いますが、こうして他蔵の杜氏さんの祝賀会で、「静岡県酒Imgp0131_2 造業界の誇り」と祝辞をされる姿は、さすが土井さんです。

 

 

 

 

 まだ酒造りが終わっていない時期にもかかわらず、同郷の山影さんのお祝いにかけつけた南部杜氏の多田信男さん(磯自慢)、小田島健次さん(富士錦・萩錦)、八重樫次幸さん(富士正)、静岡県杜氏研究会会長の土田一仁さん(花の舞)も楽しそうに「正雪」を飲んでいました。

 

 

 

 不肖私めも杜氏さんたちとはかれこれ20年以上のおつきあい。といっても一度に大勢の杜氏さんたちと飲める機会はめったになく、すっかり宴会モードに突入し、2次会3次会まで盛り上っちゃいました。

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 同業他社であっても、同じ酒造りの苦労を解り合える職人同士の絆は、ほんと、素晴らしい。

 

 

 とりわけ静岡県の場合、酒どころのイメージがない、いわば“後進地域”とみなされていました。そんな地域に生まれた静岡酵母によるハイレベルの吟醸造り。酵母開発の河村傳兵衛先生が、優れた杜氏のテクニックを他蔵の杜氏に伝え、技術の共有化と向上に尽力されたことが大きかったといわれます。

 そう口で説明するのはカンタンですが、出身地やキャリアが異なる杜氏さんたちが、いかに奮起し、貪欲に技術を磨こうと努力されたか・・・そのモチベーションの高さが、静岡の酒をここまで高めたに違いありません。

 

 その中心にいたのが、山影さんであり、波瀬さんであり、多田さんたち卓越した技能の杜氏さん。これまで酵母や酒米といった素材のスペックが注目されてきましたが、現場で地道な努力を重ねてこられた職人さんたちが、こうして晴れの舞台で堂々と称賛される日が、静岡県にもようやく来たのだ・・・と感無量になりました。

 

 

 振り返ると、山影さんが祝賀会の挨拶で、賞をもらうことがどんなに励みになるかということを朴訥と語っておられたことが本当に心に残ります。

 

 静岡県には〈ふじのくに食の都仕事人〉という認定制度がありますが、サミット酒も生んだ静岡の酒の担い手である杜氏さんたちにもぜひスポットをあててほしいと思います。

 たとえば昭和61年(1986)に全国新酒鑑評会の大量入賞で、一躍全国区の評価を受けた年から30年の節目にあたる平成28年(2016)あたりに、静岡県杜氏研究会を何らかのカタチで表彰していただけないものでしょうか・・・。長年同研究会の会長も務めてこられた山影さんには、ぜひその日まで静岡県で頑張っていただきたいと願っています。

 

 

 

 

 山影さんの今回の快挙については、日刊いーしずの地酒コラム【杯は眠らない】で2回にわたって詳しく紹介しましたので、ぜひご覧ください。

 

【杯は眠らない】

 第20回 南部杜氏 (こちら

 

 第25回 杜氏の矜持 (こちら

 

 

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新年の誓い

2014-01-05 20:55:21 | 地酒

 新年も5日が過ぎてしまいました。遅ればせながら、2014年あけましておめでとうございます。

 

 

 

 年末年始は昨年同様、バイト先のお寺で掃除三昧で、休みは1日・2日だけ。今日5日でハードな2週間がようやく終わり、ヘトヘトに疲れ果て、今日はまっすぐ帰宅し、新大河ドラマ『軍師官兵衛』を見ながらビールとコンビニ弁当の味気ない夕食を終えました(官兵衛の子役の子、可愛かった! NHKはホント、いい子役を見つけますねえ)。

 

 

 ブログの更新を怠っていた合間に、いくつかお仕事がフィニッシュしました。とりあえずはそのご紹介から。

 

 

 

 

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 こちらはバイト先のお寺から依頼された記事を掲載した、臨済宗妙心寺派静岡東教区の会報『好日』。2013年12月1日発行です。

 掲載した記事は、昨年5月に取材した駿河十二薬師巡礼のレポ。こちらのブログ記事を再編集したものです。

 

 

 私の記事はさておき、『好日』には清見寺一條老大師の深いお話、静岡市井宮出身の大応国師や沼津市原出身の白隠禅師など、禅宗にこの人ありといわれた静岡県出身の名僧の伝記等が紹介されています。臨済宗妙心寺派のお寺(身近なところでは静岡駅前のサールナート宝泰寺)で無料配布していますので、ぜひお手にお取りください。私の手元にもストックがありますのでご希望の方にはお送りします!

 

 

 

 

 

 

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 昨年末には、JA静岡経済連の情報誌『スマイル』50号が発行されました。今回は特選和牛静岡そだちの特集。静岡駅前・江川町交差点のセブンイレブン上にオープンした経済連直営店【駿河の肉処静岡そだち】を大々的にフューチャーしました。

 

 

 私はこの店に取材で2回、家族で1回行きましたが、「ミスジ」「ハネシタ」「とも三角」「カイノミ」等など聞き慣れない希少部位に出会い、肉料理の奥深さをしみじみ感じました。

 

 

 表紙の写真は肩甲骨の内側にある「ミスジ」。派手な霜降りですが意外にサッパリしていて、塩かワサビでさらっと食べるのがgood! たまにしか入手しないみたいですが、運よく出会えたら逃さず味見してみてください。

 

 

 『スマイル』は県内主要JA、ファーマーズマーケット等で無料配布中です。こちらも私の手元にストックがありますので、ご希望の方はご一報ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今日1月5日(日)付け中日新聞朝刊。なんと1面トップに私が飲んでる写真がデカデカ載ってしまいました(焦)。天下の新聞メディアの1面が、年齢(51)ってしっかりクレジットされてる年増の呑ん兵衛がニタニタ飲んでる写真でいいんだろうかと心配になりました(苦笑)が、中日新聞では世界無形文化遺産に和食が登録されたことを記念し、1月3日から“地産地食うまし国しずおか”という特集を1面で掲載中。3日は浜名湖の養殖カキ、4日は特選和牛静岡そだち、そして5日は静岡酵母の酒を紹介しています。

 

 

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 昨年11月末、中日新聞報道部記者の木原育子さんから突然メールをいただき、企画の趣旨をうかがい、静岡の酒について一からレクチャーすることに。岡部町の地酒バー・イーハトーヴォに案内し、限られた時間の中でも可能なかぎり、静岡吟醸の真髄に触れてもらおうと、イーハトーヴォの後藤さんと一緒に懇切丁寧にお話しました。そして何種類か試飲してもらい、制作中の映画『吟醸王国しずおか』パイロット版を見てもらい、私が過去に書いた記事を参考資料にお渡ししました。

 

 

 現場取材先については、いくつか候補を上げ、「仕込み時期の取材は思い通りにいかないかもしれないが、静岡酵母の記事を書くなら、なんといっても現場で酵母と対峙する蔵元と、静岡酵母生みの親の河村傳兵衛さんは外せない。蔵元は河村さんの愛弟子である喜久醉の青島孝さんがベスト」とプレッシャーをかけ、木原さんは何度かトライをして取材に成功。こちらが推したポイントをしっかりとらえ、なおかつ選び抜いた言葉と短い文節の合間から、彼女が何を感じたがしっかり伝わる素敵な記事に仕上げてくれました。

 

 

 

 

 私は“黒子の船頭”に徹するつもりでしたが、「一般の人が和やかに飲んでいる画が欲しい」といわれ、たまたま直近で予定していたニュービジネス協議会茶道研究会の茶懐石忘年会に、急遽、しずおか地酒研究会のメンバーを加え、茶懐石の店『御所丸』で撮影してもらいました。茶懐石については、こちらのブログで詳しく報告しています。

 

 

 

 

 

 新聞のよくあるお正月特集の賑やかし程度だと思って撮ってもらった写真が、まさか本紙の1面トップに載るとは、今朝、バイトに行く前にコンビニに立ち寄って手にした瞬間、(昨年の流行語ですが)じぇじぇ!と叫びそうになりました。コンビニの店員さんに顔を見られたときも、アホみたいに緊張してしまい(苦笑)、ホントはありったけの部数を買えばよかったのを、1部しか買わずにそそくさと出てきてしまいました。お寺の奥さんが、お寺の事務室にあるコピー機でA3カラーコピーをたくさんしてくれましたので、中日新聞を買いそびれた方はご一報ください(笑)。

 

 

 

 

 

 

 新聞掲載は自分の仕事ではなく、むしろ、貧乏ライターが自分の取材ストックをマスコミに無償提供したかたちで、掃除のバイトをしながら、「自分は何をやってんだろう・・・」と虚しくなったりもしましたが、木原さんの記事を何度も読み返しているうちに、20年前に熱くなっていた頃の思いがよみがえり、「当時も、何の見返りもないのに私を導いてくれた人がたくさんいた。今度は自分が次なる世代の取材者たちに何かをバトンタッチする番なのだ」と深く感じ入りました。

 

 

 木原さんにはいろんな思いを聞いてもらいましたが、彼女が記事の最後に選んでくれた私の言葉は「酒は鏡」でした。技と心を映し出す鏡。青島さんにとって静岡酵母の酒が鏡であるならば、私にとっての鏡は、やはり「書いて伝えるもの」。

 

 

 午年の一年、この言葉を自らに課し、奮い立たせ、努力してまいります。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 


四国ぶらりバス旅(その1)~高知の“土佐の日”

2013-10-07 11:12:00 | 地酒

 10月3日から5日まで四国をバス旅してきました。2日夜22時に静岡発の夜行バスで神戸まで行き、3日朝7時50分発高知行きに乗り換えて昼12時前に到着。バス旅は慣れてるけど、こんな長時間乗りっ放しってのは初めて。さすがに腰が辛かったけど、四国に行くのは初めてで、明石Imgp1719~鳴門大橋を渡る時は、妙にワクワクし、当たり前だけど「日本の道ってつながっているんだな~」と感動しちゃいました。

 

 

 

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 今回の四国行きの第一目的は、3日13時から高知県立県民文化ホールで開かれた『第9回新事業創出全国フォーラム in Kochi 』。経産省の外郭団体・中小企業基盤整備機構と公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会が主催する年に1度のニュービジネスフォーラムで、毎年各地のニュービジネス協議会が主管・運営し、各地で開催しています。今年は高知、来年は静岡で開催するので、来年のPRを兼ね、静岡県ニュービジネス協議会でも20人が高知入りしたました。

 

 

 静岡のほかの会員さんは、みなさん企業オーナーや重役さんたちですから飛行機や新幹線でゆったり高知入り。貧乏ライターの私だけが長時間だけど格安のバス旅、というわけです

 

 

 

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 会場入りする前、バスの終点が、河田小龍(大河ドラマ『龍馬伝』でリリー・フランキーさんが演じてましたね)の碑&はりまや橋近くだったので、記念写真。

 

 

 「観るとガッカリするよ」と言われていたはりまや橋、橋そのものは、時代劇のセットレベル(失礼!)ですが、“はりまや橋”という地名は駅名や道路標識にもあるし、何より高知を真っ先にイメージさせるブランドそのものになっている。Imgp1724・・・考えてみれば凄いことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 第9回新事業創出全国フォーラムでは、毎年、全国各地のニュービジネス協議会から推薦を受けた企業の中から、【ニッポン新事業創出大賞】を選ぶコンペティションがあります。

 今回は全国から36社がエントリーされ、12社が入賞。静岡県ニュービジネス協議会からは、LEDよりも長寿命で8割省エネという高効率照明「エネプライト」を開発した㈱TOSMO(磐田市)を推薦し、見事、アントレプレナー部門優秀賞を受賞しました。

 

 

 また新事業を支援する団体・個人を表彰する支援部門で、富士市産業支援センターf-Bizの小出宗昭センター長が優秀賞を受賞しました。小出さん、残念ながら会場にはお見えになってませんでした。

 

 

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 大賞(最優秀賞)は、高知県土佐市の廣瀬製紙㈱。世界一薄い超薄葉不織布を造る技術を持ち、これを濾過フィルター膜に応用し、多くの製造現場で活用されているそうです。1958年に創業した会社がこの新事業に取り組み始めたのが2009年。50年目にしてベンチャーに挑み、新規の雇用拡大やグローバル連携を実現させた企業の姿勢そのものも、高く評価されたようです。

 

 

 基調講演では、高知県立坂本龍馬記念館の森健志郎館長が『今、なぜ龍馬か?』と題し、グローバルな視点を持った人材育成の重要性を、パネルディスカッションでは高知県民総幸福度GKH(Gross Kochi Hapiness)のニュービジネスにおける視点について坂本家9代目当主・坂本登氏と企業人たちが語り合いました。私はその後の大懇親会の静岡プレゼン準備のため、聞きそびれてしまいましたが・・・。

 

 

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 18時30分から三翠園(土佐藩山内家下屋敷跡)で開かれた土佐の日代懇親会。“本物の豊かさ”や“出会いによる感動”、さらに“環境との共生”を実感できる県として全国に情報発信し、GKHを物差しに、土佐ならではのこだわりの人・物との出会いや交流を活性化するため、10月3日を「土佐の日」と定め、記念事業として2007年より毎年高知市で開催している交流イベントで、今年は新事業創出全国フォーラムと共同開催。よさこい踊りで賑やかに開幕しました。

 

 

 

 ちなみに「大懇親会」とは、自由民権運動のとき、板垣退助や若き牧野富太郎たち運動家が、デモ行進のあと、当時の陽暉楼や周辺の河原で語り、宴会を催したときの呼び名だそうです。

 

 

 

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 大懇親会会場には、さすが土佐の日、高知県内各市町村から集まった郷土料理や旬の食材が集まり、地酒で乾杯。酒のイベントじゃないのに、乾杯は燗酒&お猪口でやるんですね。さすが酒豪県!

 

 

 

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 静岡県ニュービジネス協議会からの参加組は、会長の鴇田勝彦さん(TOKAI)、副会長の曽根正弘さん(テレビ静岡)、実行委員会の原田道子さん(総合ビジネスプレイン道)以下20名が壇上に上がり、富士山世界文化遺産のDVDを流し、静岡県観光&来年の全国フォーラムのPRを盛大に行いました。

 

 

 

 

 

ふじっぴーは高知の財界の皆さんにも大うけで、 Imgp1769_2
坂本登さんも大喜び。私としては、ふじっぴーの“変身方法”を直に見られて興味津々(笑)。

 

 鴇田会長も、日本ニュービジネス協議会連合会の池田会長(アルビレックス新潟会長)から「静岡の熱意に感動した」と激励されて上機嫌。新潟の銘酒『今代司』を手土産にいただき、会員さんの手から手へと回り、最後になぜか私のところへ。静岡まで後生大事に持ち帰る羽目になりました(苦笑)。

 

 

 

 

 

 二次会では、静岡組一同で高知城ライトアップの眺めが楽しめる高知の老舗クラブへ。私は途中、一人でこっそり離脱し、地酒が呑める居酒屋へ。すでに23時を過ぎ、ガイドブックに載っていた店がクローズしており、店のスタッフさんにずうずうしく、地酒が呑める深夜営業の店はないかと訊ね、教えてもらった『ぼくさん』という地酒バーへ。

 

 

 カウンターに座っていた男性3人が呑んでいたのは、なんと、初亀の【滝上】。静岡人が飛び込んできたので3人もビックリし、マスターを交えて地酒談議で大盛り上がり。手土産代わりにカバンに詰めていた高砂誉富士の300ml瓶を空けちゃいました。Imgp1776
 

 

 

 さすがに夜行バスでほとんど寝てないのと宴会疲れで眠気が廻ってきたところに、後から6人ほどお客さんがやってきて混み合ってきたため、杯はあまり進みませんでしたが、地酒を愛する人同士だったからでしょうか、短い時間でしたが本当に密度の濃い楽しいひとときでした。

 

 やっぱり旅先で、故郷の酒が大事に呑まれているシーンに出遭うと文句無く感動してしまいますね。静岡へ戻った6日、藤枝地酒フェスでお会いした初亀の橋本社長にさっそくご報告しちゃいました。

 

 高知の酒、やっぱり吟醸以上の特定名称酒で限定流通されているものは、状態がよく、きれいでした。静岡で呑む高知の酒は、静岡の酒販店が静岡酒との違いを意識した商品をセレクトするせいか、香味の重い酒が多いんですが、地元高知のこういう店でそろえるラインナップは、ちゃんと酒杯が進むノド越しスッキリの酒が多い。個人的には『豊の梅』がよかったですね。(つづく)


地酒ライターのスタンス

2013-09-18 10:26:09 | 地酒

 気が付けば9月も半ば。ここしばらく、デスクに座ってじっくりモノを考える時間がとれず、ついつい更新が滞ってしまいました。

 

 当たり前ですが、フリーで仕事をとるためには、家でじっとしてる間はありません。今までのように運に恵まれ、黙っていてもお仕事の口が入ってきた時代とは明らかに変わりました。来た仕事は選ばず何でも受けられる気力体力も、昔のようには無くて、受けた仕事はギャラと経費の範疇でこなせばいいという気持ちとも違う。後に残るものだし、やっぱり自分のキャリアに恥じない仕事をしたい・・・。

 

 会社経営者に取材すると、企業の寿命はとりあえず30年、と聞きます。自分もあとちょっとでライター稼業30年。スタンスを変えずにいくか、ガラッと変えるか、潮時が近いのかな、と感じる今日この頃です。

 

 

 

 このところ、酒の会に、一消費者として参加する機会が増えました。今までは取材者もしくは酒の会の主宰者として、一歩引いたスタンスで参加することが多かったのですが、最近は純粋に、きき酒を楽しむことを第一義に参加しています。

 

 自分は長いこと、自分より年上や目上の立場の人に酒を語る機会が多く、若輩者だとなめられないよう理論武装し、書く記事も客観性を重視してきました。ようするに背伸びし、突っ張ってきたんですね。

 

 

 いつからか、酒の会で出会う人たちが、自分より年下や、最近、地酒の美味しさに目覚めた若い人が多くなってきました。書く記事にも、静岡酵母や静岡吟醸の解説よりも、日本酒そのものの味わい方や楽しみ方が求められるようになった。あまちゃんの小ネタのように「わかるやつだけ、わかればいい」路線で行くか、「一人でも多くの人にわかってもらえるように」書くか、酒の記事は、署名記事で書くことが多いので、よけいにプレッシャーを感じるようになりました。後世に残したいと考えている映画「吟醸王国しずおか」の編集も、わかりやすさを第一義とするか、極力加工せずにありのままをつなげるべきか、今また、大きく思案しているところです。

 

 

 

 そんな中、偶然の出会いがありました。

 ひとつは、Imgp16769月15日に開かれた清水の篠田酒店さんの恒例【蔵元を囲むしのだ日本酒の会】で出会った、盲目のギタリスト服部こうじさん(掛川市出身)。特別支援学校の音楽科出身のプロで、ソロCDやジャズピアニスト前田憲男さんとのライブCDも発表しています。

 

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 去年から清水でギター教室を開校したそうで、篠田さんがその生徒さん。教室を提供したのが、いつもニュービジネス協議会茶道研究会に来てくださる建築家の森美佐枝さん。昨年3月26日付け静岡新聞で服部さんの記事を書いたのが、地酒研にも時々来てくださる橋爪充さん。しのだ日本酒の会2
次会で、目の前でリクエストしてイーグルスの「ホテルカリフォルニア」を生演奏してもらったときは、酒の味が変わるんじゃないかと思うほど感動しました。

 

 

 

 

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 9月17日は、沼津で介護職就活セミナーの同行取材。現場訪問で訪れたNPO法人マムの障害児ケアホームで、理事長の川端恵美さんが企業メセナ例として紹介したのが、純米吟醸「TOMO」。川端さんの障害を持つ娘さんがラベルを描き、沼津市内の酒販店の仲介で、京都伏見の山本本家で委託醸造してもらったそうです。

 

 川端さん曰く「福祉に目を向けてくれるのは、関連業者か障害者を抱える家族しかいない状況を打破しようと、積極的にイベントを開いて一般企業の協賛を得る努力をし、今のところ商品化にこぎつけたのがこの酒」とのこと。「私自身がおサケ、好きなのよぉ~」と快活に笑います。私が「伏見の酒なんですねえ」と残念がったところ、「沼津の蔵元さんで原料米から育ててオリジナル酒を造るプロジェクトも企画してるの」とニッコリ。

 

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 障害者と日本酒・・・つながるとしても、ごく稀な例だろうと思っていたことに、立て続けに出会ったことで、「日本酒は地域社会になくてはならない存在」ということ、「障害者(を取り巻く環境)は特別な存在じゃない」ということ、そして「自分が見聞きしてきた酒の世界は、まだまだ狭い」ことを強く感じました。

 

 

 

 

 

 この先、自分がどういう切り口で酒の記事や映像を送り出すべきか、未だ答えは出ていませんが、この先も地元で暮らしていく上は、地域のあらゆる人々と酒とのつながりを丁寧に紡いでいけたらいいなあと思っています。

 

 

 

 

 

 とりあえず、先週末に更新した日刊いーしずの地酒コラム【杯は眠らない】。酒米と誉富士のディープな解説記事で、前回の酒のイベント案内記事よりもはるかに手間がかかったのに、反応はイマイチなのが哀しいです。「わかるやつだけわかればいい」は、やっぱり、あまちゃんのように分母の大きな世界に通じる台詞かな(苦笑)。