杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

ふじのくに世界に誇れる地元食材との出会い

2013-08-30 19:07:57 | 地酒

 やっと涼しくなったと思ったら、今日はまた猛暑に逆戻り。本日、日刊いーしず地酒コラム【杯は眠らない】に、涼しくなったことを前提に「秋上がりの季節」という記事をUPしたのに、アテが外れてしまいました・・・。今年の8月は結局「暑い!」でフィニッシュしそうですね。記事では9月の県内地酒イベントスケジュールを掲載しましたので、ぜひ参加してくださいね!

 

 

 今日は、先週参加した地酒イベントの報告です。

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 御殿場市新橋にある割烹『みなみ妙見』は、しずおか地酒研究会会員店として長いおつきあいの店。昨年、母親と一緒に行ったときは、話の流れで、ご主人池谷浩通さんのお母様の親友が、私の母の田舎(伊豆・修善寺)の幼馴染みだったことが判明し、その場でその親友を店に呼んでくださって、五十年?ぶりぐらいに再会した、なんてこともありました。今年7月の土用の丑には、家族全員でうなぎを食べに行き、すっかりお世話になったばかりです。

 

 その、みなみ妙見さんで、SBS学苑沼津校一日講座『ふじのくに世界に誇れる地元食材との出会い~静岡県内産うなぎと銘酒白隠正宗』というイベントが、8月24日(土)に開催されました。

 

 

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 池谷さんが県産うなぎ、御殿場わさび、長泉産長ネギ、県産新米なつしづか等、県産食材を駆使したコース料理を紹介し、『白隠正宗』の蔵元杜氏・高嶋一孝さんが純米にごり、蔵付き酵母純米、生酛熟成3種を紹介するという贅沢なラインナップ(これで会費6000円は破格!)。

 

 

 

 

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 うなぎに生酛熟成という組み合わせは、試飲時、あまり食物を採らない自分の胃袋には、ちょっぴりヘビーだったんですが、高嶋さんの酒は、食材との食べ合わせや酒の温度によって、ハッとするような変化を見せ、食べずに呑むor呑まずに食べるのが無性にモッタイナイと思わせてくれました。

 

 

 

 

 『白隠正宗』はオール純米酒の蔵になったため、出された酒もすべて純米酒。一般に、純米酒・純米吟醸酒は、醸造アルコールを添加した普通酒・本醸造酒・吟醸酒よりも食中酒向きというイメージを持ちます。

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  ただ、私の試飲能力では、アルコールの強さが全面に出る純米酒と、おだやかに仕上げたアル添酒では、どちらが食中酒向きかは判断がつきません。今回試飲したオール純米酒の中にも、アル添したようなキレやカドがあり、燗を付けてやわらかくすると純米らしくなる酒もありました。

 

 

 後から添加して調整できるアル添酒と比べ、アルコールを自然発酵させる純米酒は、ある意味、難しい酒でもあります。開封するタイミング、温度、一緒に食べる食材・・・さまざまな条件に影響される。その意味では、面白い酒でもあります。

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 今回は、精米60~65%の純米酒という条件下で、にごり、特殊酵母、生酛と、ユニークな造り方のラインナップがそろったため、その面白さ、難しさがとてもよく理解できたと思います。

 

 さらにいえば、生酛のようなヘビーな酒は、よい環境で熟成すれば、本当に素晴らしいビンテージになることもよく解りました。

 生酛純米酒23BY(1年熟成)と、22BY(2年熟成)では、ビックリするほど変化していた。たった1年ですが、22BYの艶のある味わい。両方とも原料米は、麹は「誉富士」60%精米、掛は「あいちのかおり」65%精米。ともに静岡酵母NEW-5を使ってるので、スペックの違いはないはず。この違いが生酛由来なのか、保存の仕方なのか、その場では判断できませんでしたが、本当にビンテージ価格をつけてもDsc03231良い素晴らしい熟成酒でした。

 

 

 一方、燗付けをすると、23BYのほうがしっくりくる。22BYはなんとなく、ぼや~んとしてしまう。不思議ですねえ・・・この違いも大変興味深いものがありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私個人の印象では、日本酒って、純米かアル添か、原料米が何か、酵母が何か(とくに新酒鑑評会で賞を狙うような酒には)重要なことかもしれないけど、日本酒の味はそんな型どおりの条件の違いだけでは語りきれないような気がする。

 

 

 さらにいえば、造り手さんにとっては、仕込みのときにアルコールをどれだけ出すか。当たり前だけどやっぱり酒を造っているんですから、専門用語で言うところのボーメ(糖分)の切らし方=糖をどれだけアルコールに変えるかは本当に重要だろうし、後処理(加水や火入れや濾過や貯蔵)によって、ストレートで美味しく呑める、15度以上のアルコール酒に仕上げるには、どれも手を抜けないでしょう。アル添を全廃した純米オンリー蔵にとっては、ホント、腕の見せ所だと思います。

 

 

 なんか偉そうに酒造りの話にまで突っ込んでしまってスミマセン。

 

 池谷さんの料理はどれも申しぶんありませんでしたが、とりわけ酒肴としては、御殿場わさDsc03239
びのクキを御殿場の天野醤油に漬け込んだ肴、御殿場わさびをトッピングした鰻の白焼きちらし寿司が絶品でした。

 最後にいただいた新米なつしづかの鰻重、鰻もさることながら、今年最初の新米に感動。美味しい米は酒のつまみになるんだって発見できました!

 

 

 米、醤油、わさび・・・やっぱり日本酒に合うのは、ベーシックな和の素材なんだなあ。こういうことが解るのも、一人の料理人がまっとうな食材を使い、一人の蔵元の酒をじっくり飲み比べることができたからだと思います。

 【杯は眠らない】で紹介した地酒イベントの多くは、より多くの銘柄や店を追いかける楽しさがありますが、酒歴を重ねてくると、こういう、落ち着いたイベントのほうがしっくりくるような気もする。池谷さん、高嶋さん、本当にご馳走様でした。

 

 


7月後半のイベント案内

2013-07-18 14:33:43 | 地酒

 しばらく更新が滞ってしまいました。猛暑の中、バイト先のお寺が、お施餓鬼やお盆で忙しく、久しぶりにガチンコ肉体労働してました。毎晩浴びるようにビールを飲んでいたので、減量は出来ませんでしたが、運動代わりにはなったかな。施餓鬼やお盆のしきたり、お寺と檀家さんのカンケイ、お寺の後継者モンダイなど等、単なる歴史好き・寺めぐり好きでは見えてこない現代仏教の内側が垣間見えて、興味深い日々でした。

 

 

 ご案内したい情報がいくつかあるので、今日はとりあえずお知らせを。

 

 

 日刊いーしず隔週連載の地酒コラム【杯は眠らない】第12回(こちらを)で、富士高砂酒造を取り上げました。世界遺産のお膝元の酒蔵ということで、前回の金明(御殿場)に続いての紹介です。蔵というより、私の場合は「人」の紹介かな。金明の根上さんにしても、高砂の杜氏・小野さんにしても、古いつきあいなのに、今、酒造りにどのような気持ちで向き合っているのか聞く機会が減ってしまっていた。富士山の世界遺産決定が、“再会”のきっかけになり、あらためてじっくり語り合ってみると、造り手として変わらない矜持がそこにあった・・・とても嬉しい取材でした。

 

 記事でも触れましたが、7月27日(土)14時から20時まで、富士高砂酒造で夏の蔵開きが予定されています。夏祭りっぽく、富士宮グルメの屋台やよさこい音頭など等で盛り上がるようです。酒蔵の内部をフリーで見物できる貴重な機会ですので、よかったらぜひいらしてください!

 

 

 

 

 

 

 

 直近ですが、7月19日(金)から21日(日)まで、静岡市の七間町通り、旧映画館跡の「アトサキ7」で、【伊豆フェス2013】が開かれます(こちら)。伊豆半島のグルメや手ワザなど等が、静岡市のど真ん中で楽しめる地域間交流イベント。この夏、伊豆へ旅行予定の人も、予定のない人も、つかのまの伊豆気分を堪能してみてください!

 

 

 

 

 

 歴史好きの方には、こちらを。静岡県朝鮮通信使研究会の今年度第2回例会が7月31日(水)19時からアイセル21で開かれます。

 今回のテーマはずばり「朝鮮通信使と富士山」。朝鮮通信使の訪日記録『使行録』にはたびたび富士山の記述が登場し、私が脚本制作にかかわった映画『朝鮮通信使~駿府発二十一世紀の使行録』でも、冒頭に、通信使が「富士山だ!」と興奮するエピソードを入れました。

 今まであまり注目されてこなかった、歴史上の外国人から観た富士山像に迫るタイムリーな講演です。誰でも無料で聴講できますので、お時間のあるかたはぜひ!!

 

 静岡県朝鮮通信使研究会第2回例会「朝鮮通信使と富士山」

  ◇日時 2013年7月31日(水)19時~21時

  ◇場所 アイセル21 4階44集会室 (アイセル1階の案内板は「静岡に文化の風をの会」名になっています)

  ◇講師 北村欽哉氏(朝鮮通信使研究家・郷土史家)

 

 

 


富士山~水の恵みと銘酒

2013-07-03 09:02:46 | 地酒

 富士山の世界文化遺産登録に関する記事、6月23日・24日に続いて、7月1日・2日にも中日新聞広告特集に掲載しました。

 2日の記事では、水にまつわるお話を紹介しました。6月30日のNHKスペシャル富士山で紹介された幻の地下水源探検のようなスペシャルなネタではありませんが、個人的にはなんとか地酒ネタにつなげようと頑張りました(笑)。

 この夏は、富士山を登る人も眺める人も、冷酒でスカッと乾杯してくださいね!

 

 

水の山・富士山の恵み<o:p></o:p>

(中日新聞 7月2日朝刊 祝・富士山世界文化遺産登録広告特集)

 

 

富士山は、世界遺産登録基準の文化的項目によって評価されたが、精神文化を育んだ自然の美しさや気高さにこそ価値がある。とりわけ、信仰や芸術の“源泉”となった湧水や伏流水、富士山の景観美を倍増させる湖沼や海・・・富士山ほど〈水〉と相性のよい山も珍しい。(文・写真 鈴木真弓)<o:p></o:p>

 

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湧玉池(富士宮市・富士山本宮浅間大社境内)<o:p></o:p>

 

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富士山本宮浅間大社境内にある湧玉池は、富士山麓の雨水が溶岩流の末端で湧き出したもので、富士宮市内を流れる神田川の源泉。室町時代の富士登山を描いた『絹本著色富士曼荼羅図』には、この池で登拝者が身を清める姿が認められる。彼らは六根清浄を唱えながら禊(みそぎ)を行い、霊山富士への思いを新たにした。池に連なる神田川の遊水ふれあい広場は、涼を体感する避暑スポットとして市民に愛されている。<o:p></o:p>

 

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白糸の滝(富士宮市)
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無数の白い糸を垂らしたように水が流れ落ちる『白糸の滝』。高さ2025m、幅約200mの溶岩壁から1日10万トンの水が湧き出し、水温は年間を通して15℃前後で一定している。<o:p></o:p>

 

常葉大学富士キャンパス社会環境学部の藤川格司教授は「この滝の湧水は約10万年前の古富士泥流層の溶岩と、その上に積もった約1万年前の新富士溶岩層の間から湧き出している。異なる地質から異なる年代の地下水が流出する、富士山麓特有の湧水の仕組みが分かる」と解説する。多くの和歌や絵画のモチーフになり、修験者の修行場として信仰されてきた名瀑は、地質学的価値も高かった。<o:p></o:p>

 

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猪之頭湧水群・陣馬の滝(富士宮市)<o:p></o:p>

 

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『白糸の滝』の北、芝川の上流に広がる『猪之頭湧水群』はニジマス養殖で知られ、養殖池がある一帯は、「井之頭」と表記されていた。この地で養殖業では珍しく、天然素材の餌にこだわる柿島養鱒の岩本いづみ社長は「ニジマスが川の中で長い時間をかけ、自然に育つ環境を再現したい。それには豊富な流水量が不可欠」と湧水群の保全に努める。
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 芝川の支流・五斗目木川にかかる『陣馬の滝』は、1193年に源頼朝が巻き狩りを行ったとき、陣を張った場所として知られる名勝。滝の一帯はマイナスイオンに包まれ、絶好の避暑ポイントにもなっている。

 滝の入口では毎月第2・第4火曜日に猪之頭地区の住民が東日本大震災チャリティーマーケットを行っている。(雨天中止。問合せは0544-52-0123 篠塚さんまで)。<o:p></o:p>

 

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富士山麓の酒蔵<o:p></o:p>

 

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22日、世界文化遺産登録決定の瞬間を待ちわびる富士宮市民は、昼12時から市役所で用意された祝賀イベントに集まり、市内4蔵(高砂、白糸、富士正、富士錦)が提供した日本酒で乾杯の前祝いをした。登録が決まった翌23日は、市内各所で晴れ晴れした表情で乾杯酒を酌み交わす人々の姿が見られた。<o:p></o:p>

 

 

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 富士宮市内の4蔵は、冬~早春の酒造期、共同で蔵巡りイベントを開くなど、富士山麓の名水に育まれた地酒の価値をアピールしている。世界文化遺産登録が叶った今年の酒造期は、さらに多くの地酒ファンで賑わいを見せることだろう。
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名水が必要不可欠である酒造業。近年、酒質の高さが評価されている静岡県の吟醸酒は、洗米から始まる仕込み工程で大量の水を使う。仕込み水を道具洗いにもふんだんに使えることに、県外出身の杜氏や蔵人が感心する。「原料米や職人は外から調達することもできるが、水だけは持って来られない。この地で酒造業を続けられるのは、この水あってこそ」と富士山周辺の蔵元は口々に語る。

富士宮市猪之頭の南西、芝川町柚野地区にある富士錦酒造の清信一社長は「水を扱う事業者として、毎年2回欠かさず水質検査を行っていますが、まったく変化がない。富士山のろ過機能というのは凄い」と言う。<o:p></o:p>

 

 

 

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一方、御殿場には、富士山頂の浅間神社に湧く霊水・金明水にちなんだ地酒『金明』がある。醸造元は御殿場市保土沢にある根上酒造店。『富嶽泉』『富士自慢』など富士山にちなんだブランドもそろえる。<o:p></o:p>

 

 

蔵の敷地には、富士山の雪解け水が勢いよく湧き上がる自噴井戸がある。水温は年間を通して1213℃と安定し、水質はやわらかな軟水タイプ。平地で湧く川の伏流水とは若干異なり、火山質の土壌をくぐりぬけ、ほどよく含んだミネラル分が酒の発酵を活発にする。自ら杜氏を務める根上陽一社長は「この水と相性がよく、富士山麓の土にあう酒米を育て、水も米も杜氏もオール富士山育ち、という酒を醸していきたい」と意欲的だ。

*金明については、こちらの記事もご参照ください。

 

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忍野八海(山梨県忍野村)<o:p></o:p>

 

富士山の伏流水が溜まった8つの湧水池・忍野八海。いにしえの巡礼者が8つの竜王を祀り、富士講信者が富士登山の前に身を清めた聖地でもある。<o:p></o:p>

 

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『湧池』は
忍野八海のなかで一番賑やかな通りに面しており、観光みやげ物店や蕎麦粉をひく水車小屋等が整備されている。伝説によると富士山の噴火のとき、天から木花開耶姫命の救いの声が響き、その直後、溶岩の間から水が湧き出し、池となったとされる。現在でも住民の飲用や灌漑用水の供給源として利用されている。

 

 

 

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隣接する『濁池』は実際に濁っているわけではなく、池底から少量ながら湧水が確認されている。伝説によると、ある日、みすぼらしい行者がやってきて一杯の飲み水を求めたところ、地主の老婆がただの乞食と思って無愛想に断った途端、池は急に濁ってしまったという。水は器に汲み取ると、不思議なことに澄んだ水に変わったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柿田川湧水(静岡県清水町)<o:p></o:p>

 

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 富士山の湧水地として名高い柿田川は、最後まで世界文化遺産の構成資産候補入りが検討されていた。残念ながら〈信仰と芸術の源泉〉という条件には適わないとの判断をされたが、構成資産候補になったことで注目され、国天然記念物の指定を受け、保全整備が進んだ。

 県世界遺産推進課の小野聡班長は「長年、地元の人々が手弁当で保全に努めていた活動が功を奏した。世界遺産に登録されなくても、地域が率先して富士山の恵みを守り伝えた経緯を、貴重な事例にしたい」と語る。

 

 

湧水や川の保全を考えるということは、その流域全体の暮らしや産業の在り方に向き合うことだ。世界文化遺産と共生することになる富士山麓の人々にとって、避けて通れないテーマになりそうだ。

 


酒で運を使い果たす風来坊

2013-06-17 12:32:38 | 地酒

 3本重なった原稿の締め切り。コンフェデ杯を見ようと早起きした甲斐もあって、サクサクっと片付いて、久しぶりにゆっくりコーヒーを飲んでいます。日本代表の試合じゃなければ、余裕で、ながら鑑賞できますね(笑)。さっすがスペインは素人目に見ても強えぇ・・・!

 

 

 今月に入り、仕事の量が少しずつ回復してきて、なんとか今年もこの稼業を続けられるとホッとしています。不安定極まりない働き方なのに、25年以上も続けていられるって幸せなんだろうか・・・。「職場」とか「家庭」といった、“所属先”を持たないあやふやなスタイルも、これはこれでアリなのかなあ。こんな風来坊が無事、生きていける社会って、とりあえず平和なんだと思います。

 

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 このところ、いくつかの酒宴に参加しながら報告できなかった会をまとめて紹介します。まず5月21日~22日の全国新酒鑑評会。21日の酒類総合研究所講演会では「清酒酵母がストレスに弱い」「酒粕の新たな効能」「熟成香と老香の違い」など興味深いお話をうかがいました。日刊いーしずの地酒コラム【杯は眠らない】で紹介しましたのでこちらをご覧ください。

 

 23日東広島で全国新酒鑑評会製造技術研究会(こちらを)に参加した後、広島市街へ。前日、偶然入った珈琲豆専門店の女将さんと会話している中で、近くに行きつけの地酒立ち飲みバーがあると教えてもらったのです。立町にある『善吉』というお店。小さなお店だったけど、品揃えはかなりの通好み。ご主人はこちらが何も言わずとも、おススメを次々と出してくれます。Imgp1392

 

 つまみは広島はんぺんや冷やしおでん。昼間はお弁当やお惣菜を販売しているようで、家庭的な酒肴が充実していました。

 この店を紹介してくれた珈琲豆専門店の女将さんもわざわざ駆けつけてくれて、初対面とは思えないほど話し込んでしまいました。

 

 気がつくと、全国新酒鑑評会に来たと思われる各地の蔵元さんや杜氏さんがご来店。ご主人から○○酒造の杜氏さんだよ、と紹介されて、またまた思わぬ酒談議。旅先の酒場気分を満喫できました!

 

 

 

 

  5月26日にはホテルセンチュリー静岡で開かれた『ヴィノスやまざき・2013地酒フェスティバル蔵会』に行ってきました。今年で創業100周年なんですね。すごい店です。

 

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 20年前、この店の80周年記念の年に静岡新聞で全面広告を作らせてもらったのが、コピーライターとしての大きな自信になりました。

 

 皇太子殿下ご成婚を祝して『雅ひめ』というやまざきオリジナルの酒銘を付けさせてもらったこと、その後、シリーズで何本か広告を作らせてもらい、『蔵直便』というキャッチコピーが商標登録にまでなったこと、そして折につけ、亡き山崎巽会長のお話をうかがいながら、“造り手と売り手と飲み手をつなぐ”という活動テーマを自然に授けていただいたこと。・・・いろいろな意味で自分を育ててくれた酒販店でもあります。

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 日本を代表するワイン専門店として発展される中、ローカルな地酒にこだわる自分には手の届かない店になったという思いがありましたが、久しぶりに奥様や祐子さんにお会いし、会長から受けたご恩に対するお礼を伝えることができ、清々しい気持ちで一杯になりました。「また、まゆみさんに小粋な酒銘を考えていただきたいわ!」と笑顔を返してくださった祐子さんに、これからも、真正面から返しができるクリエイターでありたい、と思いました。

 

 

 試飲した酒の中では、待望の國香の誉富士使用酒。まだ搾りたての若々しさがありましたが、最高の静岡吟醸を醸す松尾晃一さんが、誉富士をどのように使いこなしたのか、若干の熟成期間をおいて、再度確認してみたいと思いました。こんなふうにワクワクさせる酒、本当に貴重です。Imgp1430

 

 

 喜久醉純米大吟醸のやまざきPB酒である『雅ひめ』、久しぶりに飲めると思ったら、人気殺到であっという間になくなってしまいました。しゃぁないけど、松尾さんの弟弟子であり、今年の静岡県知事賞を受賞した青島孝さんの手腕・クオリティには全幅の信頼を置いています。入手された方は、大切に味わってくださいね。

 

 

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 会場には誉富士の専用ブースもあって、開発者の宮田祐二先生方が出張PRをしていました。ブースに張り付いて他の酒を試飲できない方々が気の毒になり、私が各ブースを回ってグラスでせっせと運んであげているうちに、『雅ひめ』を飲み損なった次第です(苦笑)。ちなみに、この日飲んだ誉富士の酒の中では、初亀の『岡部丸』がワタシ的にジャストフィットでした。

 

 

 

 

 

 

 6月3日には、東京赤坂で開かれた山同敦子さんの『極上の酒を生む土と人~大地を醸Dsc_0182
す』出版祝賀会
に参加しました。

 全国の名だたる酒蔵やマスコミの方々が集まっていて、私のようなローカルライターが出張るような場所ではない気もしましたが、同書で取り上げられた青島孝さんと松下明弘さんが真っ先に壇上で紹介され、なんだか我が事のように誇らしく思いました。

 

 

 ニュージーランドでワインを造る楠田弘之さんは存在感がありました。初めて飲んだ『クスダ・ピノワール』、静岡吟醸が最上の酒と思っている自分にも、引っかかりなくすんなり飲めました。

 

 

 

 

 

 

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 6月7日は恒例の志太平野美酒物語2013。今年も静岡駅前のグランディエールブケトーカイの一番でかい宴会場で、450人を集めた大盛会でした。

 

 

 

 私は今年、日頃お世話になっている静岡県ニュービジネス協議会の会員さんをお誘いしました。茶道研究会の望月静雄先生にも来ていただき、酒杯の作法などご教授いただこうかと思ったのですが、蔵元ブースで試飲酒を飲み漁るのに夢中で、先生をホッタラカシ(苦笑)。初参加の皆さんは地酒ファンの熱気に目を白黒させ、飲む酒がどれもハDsc02461ズレがないのにビックリされていました。

 

 望月先生にはジョン・ゴントナーさんを紹介しました。裏千家インターナショナル運営理事で、海外へ茶の伝統を普及させるお仕事をされている先生と、海外に日本酒の価値を伝えるジョンさん。“良縁”になればいいなあと思います。

 会場では、年に1回、この会のときだけお会いできる懐かしい酒徒の皆さんと親交を温めることができました。お声をかけてくださった皆さま、本当にありがとうございました。 

 
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 写真は地酒研でお世話になっている松崎晴雄さんと奥様典子さん、ジョン・ゴントナーさん、すっかりダンディー?になった浜松の片山酒店さん、今やベストセラー作家?の仲間入りをした松下明弘さん。

 

 

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 2次会は、伝説の洋酒バー『ブルーラベル』へ。ボウモア62年古酒にしびれました。

 最上の静岡吟醸を味わった後の、幻のシングルモルト―明日の仕事や暮らしの保証がない風来坊な自分が、どうしてこういう酒にありつけるのか、我ながら笑っちゃうほど不思議です・・・。

 

 

 きっとこうして美味しい酒に出会うたんびに自分の運を使い果たしちゃって、最後は何も残らないんだろうな~と今から覚悟しています。

 

 


酒粕の新たな機能性

2013-06-04 09:23:32 | 地酒

 

 平成24酒造年度全国新酒鑑評会が5月22日、東広島市で開かれました。私は521日の酒類総合研究所講演会、22日の全国新酒鑑評会製造技術研究会(業界関係者対象の全出品酒の公開試飲会)に行ってきました。22日の製造技術研究会については、日刊いーしず隔週連載の地酒コラム『杯は眠らない』(こちら)に報告しましたので、こちらをご参照ください。

 

 

5月21日の酒類総合研究所講演会、日本酒造組合中央会とともに全国新酒鑑評会を主催する独立行政法人酒類総合研究所が、鑑評会の開催に合わせ、日ごろの研究成果や鑑評会審査のポイントなどを解説するシンポジウムで、今年で49回を数えます(昨年の講演会については、こちらの過去記事を)。

 

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同研究所は昨年1月、時の民主党政権下で廃止が閣議決定され、100年続く全国新酒鑑評会の開催も危ぶまれましたが、自民党の新政権になってその決定が凍結となり、独立行政法人の見直しが継続審議となりました。地酒ファンとしても、まずは一安心、ってところでしょうか。そういう背景があってか、今年の講演会では研究成果の社会的貢献度を強調する発表もみられました。<o:p></o:p>

 

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 【清酒粕の成分調査と機能性成分の安定性について】という研究発表では、酒粕の新たな機能性成分について興味深い解説を聞くことができました。NHKのためしてガッテンで酒粕の効能がクローズアップされ、ブームに火がついたことで、ここ酒類総合研究所でも新たな視点で酒粕の成分分析が始まったようです。

 

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 今回、発表された注目される高機能性成分とは、S-アデノシルメチオニン(SAM)と葉酸SAMは清酒酵母が高含有する成分で、肝障害、ウツ、関節炎を防ぐ効果があり、欧米ではサプリメントとして広く知られています。国内産のサプリメントは2社から発売されており、いずれも清酒酵母から取得されているそうです。<o:p></o:p> 

 

 

 

葉酸は欧米では子ども向けのシリアルにも使われる高機能性成分で、妊婦の滋養に効果あり。先進国では日本だけ摂取量が低いといわれるものです。<o:p></o:p>

 

 

酒粕に含まれるSAMは豚レバーの約27倍(最大で116倍)、葉酸はホウレンソウの約0.8倍(最大で2.5倍)。最大値との数値に開きがあるのは、サンプルに使われた酒粕の違いによるものです。

 

たとえば酒の主要成分であるタンパク質は、普通酒では14.4%、大吟醸では5.5%、液化仕込は25.3%というように仕込み方法の違いによって酒粕にまで成分の差がハッキリ出るんですね。とくに酒粕をあまり出さない液化仕込と、酒粕をもろみの5割以上出す大吟醸では、極端な差があります。<o:p></o:p>

 

 

 

 

そんなこんなで酒粕の成分検査は複雑かつ判断が難しいようですが、酒粕の有効成分が話題になる中、あらたにSAMと葉酸の高含有が科学的に解明され、ますます頼もしく感じました。<o:p></o:p>

 

SAMや葉酸は、酒粕を冷凍保存(マイナス30℃)することで長期保存でも含量が損なわないようです。とくに酒粕を凍結乾燥させると安定性が劇的に向上する。凍結乾燥の酒粕が機能性食品として開発される日も必ず来るでしょう。

 

 

 

 

なお、酒粕の有効成分については、【杯は眠らない】のこちらの記事でまとめてありますので、併せてご覧ください。<o:p></o:p>