平成24酒造年度全国新酒鑑評会が5月22日、東広島市で開かれました。私は5月21日の酒類総合研究所講演会、22日の全国新酒鑑評会製造技術研究会(業界関係者対象の全出品酒の公開試飲会)に行ってきました。22日の製造技術研究会については、日刊いーしず隔週連載の地酒コラム『杯は眠らない』(こちら)に報告しましたので、こちらをご参照ください。
5月21日の酒類総合研究所講演会、日本酒造組合中央会とともに全国新酒鑑評会を主催する独立行政法人酒類総合研究所が、鑑評会の開催に合わせ、日ごろの研究成果や鑑評会審査のポイントなどを解説するシンポジウムで、今年で49回を数えます(昨年の講演会については、こちらの過去記事を)。
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同研究所は昨年1月、時の民主党政権下で廃止が閣議決定され、100年続く全国新酒鑑評会の開催も危ぶまれましたが、自民党の新政権になってその決定が凍結となり、独立行政法人の見直しが継続審議となりました。地酒ファンとしても、まずは一安心、ってところでしょうか。そういう背景があってか、今年の講演会では研究成果の社会的貢献度を強調する発表もみられました。<o:p></o:p>
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【清酒粕の成分調査と機能性成分の安定性について】という研究発表では、酒粕の新たな機能性成分について興味深い解説を聞くことができました。NHKのためしてガッテンで酒粕の効能がクローズアップされ、ブームに火がついたことで、ここ酒類総合研究所でも新たな視点で酒粕の成分分析が始まったようです。
今回、発表された注目される高機能性成分とは、S-アデノシルメチオニン(SAM)と葉酸。SAMは清酒酵母が高含有する成分で、肝障害、ウツ、関節炎を防ぐ効果があり、欧米ではサプリメントとして広く知られています。国内産のサプリメントは2社から発売されており、いずれも清酒酵母から取得されているそうです。<o:p></o:p>
葉酸は欧米では子ども向けのシリアルにも使われる高機能性成分で、妊婦の滋養に効果あり。先進国では日本だけ摂取量が低いといわれるものです。<o:p></o:p>
酒粕に含まれるSAMは豚レバーの約27倍(最大で116倍)、葉酸はホウレンソウの約0.8倍(最大で2.5倍)。最大値との数値に開きがあるのは、サンプルに使われた酒粕の違いによるものです。
たとえば酒の主要成分であるタンパク質は、普通酒では14.4%、大吟醸では5.5%、液化仕込は25.3%というように仕込み方法の違いによって酒粕にまで成分の差がハッキリ出るんですね。とくに酒粕をあまり出さない液化仕込と、酒粕をもろみの5割以上出す大吟醸では、極端な差があります。<o:p></o:p>
そんなこんなで酒粕の成分検査は複雑かつ判断が難しいようですが、酒粕の有効成分が話題になる中、あらたにSAMと葉酸の高含有が科学的に解明され、ますます頼もしく感じました。<o:p></o:p>
SAMや葉酸は、酒粕を冷凍保存(マイナス30℃)することで長期保存でも含量が損なわないようです。とくに酒粕を凍結乾燥させると安定性が劇的に向上する。凍結乾燥の酒粕が機能性食品として開発される日も必ず来るでしょう。
なお、酒粕の有効成分については、【杯は眠らない】のこちらの記事でまとめてありますので、併せてご覧ください。<o:p></o:p>