JA静岡経済連発行の情報誌『スマイル』44号が発行されました。今回は全編みかん特集です。
取材は昨年11月末から年明けにかけて、東京、沼津、清水、藤枝、浜松(三ケ日)を飛び回り、みかんの造り手・売り手の現場の声を取材 しました。一般のグルメ情報誌と違い、この情報誌は“縁の下の力持ち”である、品種改良や栽培技術向上のために研究を重ねている専門家や、農産物の集荷施設の仕分け作業の紹介等、ちょっとした裏方重視目線で編集しています。スポットライトが当たる主役よりも、裏方や脇役のプロの仕事に惹かれる私の個人的趣向そのもの(苦笑)。もちろん地味な裏方さんばかりじゃ誌面に華が足りないということで、人気ケーキ屋さんのレシピや有名フルーツショップの紹介ページも設けています。
今回の取材の一番のトリビアは、静岡県が「みかん貯蔵王国」だったということでした。
みかんって、秋~翌春まで時期に応じていろいろな品種が出てきますよね。静岡県内では、9月に「極早生」、10月から「早生」、12月中旬から「青島」が登場し、今ぐらいから「デコポン」「はるみ」「ポンカン」「ネーブル」等の晩柑品種が出回ります。
このうち、「青島」は、全体の約56%を占める静岡みかんの代表選手。よく「青島って静岡のどこ?」と場所を聞かれることがありますが、 地名ではなくて静岡市の賤機山のふもとにある青島さんというみかん農家の畑で、昭和30年代に発見された温州みかんの変異種のこと。鈴木さんちで発見されたら「鈴木みかん」になっていたかも(笑)です。この青島さんちの温州変異種、他の温州みかんより糖度が高くて、しかも貯蔵しておくとグングン甘みが増したのです。
当初は色づきや糖度の上昇に時間がかかるんじゃ普及は難しいかも…と思われたそうですが、昭和60年以降、市場で評価が高まり、各産地でも貯蔵技術が進んで、「青島みかん」の名で一気に普及しました。形がこんなふうに、ちょっぴり平べったいのが特徴ですね。
青島みかんは11月下旬から収穫が始まります。収穫されたみかんは貯蔵庫に運ばれ、1~2週間かけて予措(よそ=果皮の水分を蒸発させること)を行った後、本格的な貯蔵に入ります。庫内を暗くし、換気をマメに行い、冷たい外気を取り込んで温度調整。そんな貯蔵みかんを12~3月上旬ぐらいの間、順に出荷していくのです。
最近ではJAみっかびが「誉れ」、JAしみずが「本貯蔵」、JAなんすん(沼津)が「寿太郎プレミアム」という商品名で、長期貯蔵みかんを“こだわりの逸品”として売り出すようになりました。
私が取材した岡部町のみかん農家増田正男さんも、土壁の蔵があった頃から、庫内でみかんの木箱を定期的に積み替え、風を入れながら品質と鮮度のチェックを行ってきました。
庫内の壁一面に積み上げられた木箱を見た時、思わず、「麹室みたいだ・・・」とつぶやいてしまいました。
酒蔵の麹室でも、麹蓋(木箱)に盛られた麹米を数時間ごとに積み明けしながら風を入れ、温度調整をするのです。もちろん、酒蔵の麹室とみかんの貯蔵庫では、目的も機能も異なりますが、外から完全にシャットアウトされた頑丈な蔵の中で、温度と水分と時間をコントロールしながら、化学変化を起こし、じわじわと変容させていくその姿にどこか相通じるものを感じます。四季のある日本で、美味しさを育むというのは、こういう知恵と経験の蓄積なんだなぁと実感させられますね・・・。
増田さんは、はからずも「静岡県はみかん貯蔵王国と言われてきたん ですよ」とおっしゃった。“王国”という表現に、造り手の矜持を感じ、そのまま書いたら、誌面では「みかん貯蔵産地」と直されていました。経済連の上の方から「おこがましい」と感じられたのな。・・・でも造り手が王国を自認するくらいの誇りを持って育てているって、いい話だなぁと率直に思いました。
この春は、新酒の味もさることながら、長期貯蔵でプレミアム感が増した高糖度みかんにぜひご注目くださいね!
なお、スマイル44号みかん特集号は、県内JA主要店やファーマーズマーケット等で無料配布しています。当ブログ読者でご要望があれば私から進呈いたしますので、プロフィール欄のメールアドレスにご一報くださいまし!