今週は、日中は農業の取材、合間に来週開催のNPO活動自治体フォーラム静岡大会の打ち合わせ&天晴れ門前塾(静岡大学課外講座)の準備、夜は衆議院議員上川陽子さんの政策ニュースの編集と、一日のうちで、いくつもの作業が同時並行していて、頭がこんがらがってます。どれ一つ手が抜けないんですが、前回紹介したセルリー農家田邊さんの「楽しんでやらなきゃ」の笑顔を思い出しては、しんどい中でも楽しいこと、ワクワクすることを見つけようと努力しています。
ゆうべ読んでいた上川陽子さんのインタビュー集の中で、これは記録というよりも、記憶に刻み込んでおきたいと思える一文を見つけました。
陽子さんは8月まで内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画・公文書管理)を務めていました。少子化対策や男女共同参画は、すぐにイメージできるのですが、公文書管理って何?と思いますよね。わざわざ担当大臣を付けてまで政府が取り組むことなの?と。
私は、政治や行政にかかわる原稿を書くときは、いい意味での“素人目線”を軸にするので、最初にパッと見て感じた「これって何?」「どんな意味がある?」という素朴な疑問に、自分で答えを見つけるような構成を意識します。
公文書管理とは「年金記録問題や防衛省関係文書の問題などで、行政文書には統一的な管理ルールが確立されておらず、公務員自身の意識が薄い。そこで、もっと構造的に本来あるべき文書管理の在り方を見直し、民主主義の基盤を作っていこうということ」なんだそうですが、こういう書き方だと、行政資料みたいでサラ~ッと目を通して終わりって感じ。記憶には残りません。
私がチョイスしたのはインタビューのこの部分。
(尾崎)7月に有識者会議の中間報告をさせて頂いたのですが、この報告書のタイトルが『時を貫く記録としての公文書管理の在り方~今、国家事業として取り組む~』。実はこのタイトルは上川議員が考えられたんですね。非常に良いタイトルなので委員全員大賛成で決まったのですが、意図していることは何でしょうか?
(上川)これは論語の『わが道は一を以て之を貫く』という言葉に基づいて考えました。孔子の心の中には確固たる理想があり、その考えはひとつに統一されているというような解釈があります。孔子の人生観だと思います。
人としての人生観と同じように、国としての国家観という哲学も、やはり貫かれていなければいけない。では何を貫いているのか。
たとえば私自身の人生の営みというのは一定の限界があるけれども、国家としての営みは「記録」というところに集約することによって、過去から現在、未来へと時を貫いていくことが出来る。国家として正しい仕事をし続けるための背骨の部分だと思います。
この「記録」という国民の共有財産を大切にしていく文化を育むこと。これを国家の事業として取り組んでいこうということです。
昔、奈良の大仏様を国民の力を結集して国家事業としてつくり、国家としての拠りどころ・アイデンティティーを造った。同じように「公文書管理」を国家事業として取り組むことによって「記録」をベースにしたアイデンティティー、日本人としての誇りを持つことにもつながる。そういう思いを織り込みました。(以下略)
尾崎護氏との対談「公文書管理の在り方」 ~トーハン発行「新刊ニュース」2008年11月号より
(尾崎 護氏/元大蔵事務次官。08年3月より「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」座長)
公文書管理という硬~いテーマの読み物に、一見、縁のなさそうな「孔子」「人生観」「奈良の大仏」「アイデンティティー」といったキーワードが出てくると、オヤッと興味がわいてきます。硬くて難しそうなテーマであればあるほど、誰もがイメージしやすい簡易な言葉で、しかもテーマとは異なるジャンルや一見、脈略がなさそうな言葉を使うことで、意外なツボが刺激される…ミステリー小説なんかに見られる手法かもしれません。
内容自体は硬いものですが、陽子さんのこの受け答え、知性と配慮が行き届いた、記憶に残るメッセージだと思います。
と同時に、ライターという職業を得た私には、「書いて残す」という作業の普遍的な価値を、改めて実感させる一文でした。