年2回発行のJA静岡経済連情報誌『S-mail(スマイル)』の最新号・静岡県の冬野菜特集が出来上がりました。
今回は富士のカリフラワー、牧之原のブロッコリー、小笠中遠のメキャベツ、浜松のターサイをピックアップ。毎回、静岡県産食材を扱う料理店さんを紹介するページがあるんですが、今回は菊川市の西欧料理サヴァカを取材させていただきました。オーナーシェフ山口祐之(まさゆき)さんは、ふじのくに食の都仕事人としてさまざまなイベント等でもご活躍ですね。お父様が元NHKアナウンサーでSBSラジオパーソナリティとしても活躍された山口弘三さん。NHK時代に「明るい農村」を担当されていたことから、食に対する造詣が高く、息子の祐之さんも食への興味を深め、料理人の世界に入られたそうです。
今回の表紙は、山口さんが特別に用意してくださった「メキャベツのスフレポタージュ」「ブロッコリーとカリフラワーのジュレ」「ターサイと牛タンのソテー」。メキャベツは寒い時期に甘さがグ~ンとのることから、自然の甘みを生かして豆乳仕立てのやさしいポタージュスープに。カリフラワーは鮮度の良い時期に多めに仕入れてピューレ状態にし、冷凍保存しておくそう。ターサイは濃い塩分でサッと茹でて、薄めの塩水の氷水に浸すと完璧な下ごしらえになるそうです。サヴァカに食事に行かれた際は、シェフにいろいろ教えてもらってくださいね!
西欧料理サヴァカのHPはこちら。
ここではJA静岡経済連の販売情報センター考査役・齊藤公彦さんの冬野菜解説をご紹介します。なぜ静岡県が冬野菜のメッカになったのかを分かりやすく解説していただきました。なおスマイルは県内の主要JA窓口、JA直営ファーマーズマーケット等で無料配布しています。
長い歴史、高い栽培技術に支えられた静岡県の冬野菜
静岡県では温暖な気候と変化にとんだ自然環境を利用して、数多くの農作物が生産されています。産地が限定される秋~冬の寒冷時期にも、日照時間の長さや適度な潮風、降雪リスクの少なさ等、静岡県ならではの環境の強みが活かされ、全国の市場へ安定供給されています。静岡県の冬野菜の強みや特徴について、JA静岡経済連のマイスターに解説してもらいました。
解説/JA静岡経済連 販売情報センター考査役 齊藤公彦さん (聞き書き・写真/鈴木真弓)
寒くなるとサラダが美味しくなる
冬野菜と聞くと、みなさんはどんな野菜を思い浮かべますか?
鍋料理や煮物料理に使う白菜、大根、芋類を上げる人も多いと思いますが、静岡県で秋~冬の季節に栽培される野菜で最も多く出荷されるのはレタス。10月から翌5月にかけての出荷で30億円を売り上げる代表品目です。レタスの仲間であるサニーレタス、グリーンリーフ、ロメインレタスといった新品種も外食や中食用に需要が伸びています。第2位はセルリー。収穫時期は11月から翌5月で、この期間に約50万ケースを出荷しています。
この代表2品目に数量では及ばないまでも、最近とくに注目されているのが、本誌の特集にもなったカリフラワー、ブロッコリー、メキャベツ。ふつうのキャベツや甘い新品種キャンディキャベツ、レッドキャベツのような変り種もこの季節に人気を集めます。
年明け早々、日本で最も早く収穫される新たまねぎや、サラダオニオンと称される白たまねぎ、大根、にんじん、さとうえんどうといった品目も冬~春に旬を迎えます。中国野菜のターサイやチンゲンサイは一年中ハウス栽培されていますが、冬に味がのるといわれます。
静岡県の秋~冬は洋菜(西洋野菜)を中心に、地元産の美味しくて彩り豊かな野菜料理が楽しめる、と知っていただきたいところです。
静岡野菜・産地化の歩み
静岡の洋菜は県下の先進的な考えを持ったごく一部の生産者が栽培していたのがはじまりです。戦後、アメリカ軍が日本に駐留した時代、米軍の需要を見越し、レタスやセルリーをさかんに作るようになりました。米軍兵士の胃袋を満たすための需要が、日本人の食の西欧化に伴って爆発的に増え、高度経済成長とともに一大産地へと変貌したのです。東名高速道路がいち早く開通し、首都圏、中京圏、関西圏の大きな市場に出荷しやすい体制が確立したという利点もありました。
静岡県はまた冬場でも日照時間が長く、雪が降らず、氷点下になる日が少ないというメリットがあります。他の野菜産地が低温で収量が確保しにくい時期にも安定的に出荷できる。また大市場に距離的にも近く、収穫後、タイムラグがなく需要にきめ細かく対応できることが、市場の信用や価格安定につながっています。鮮度を保つため、収穫後すぐに真空予冷装置を使って余分な水分を取り除たり、急速に冷やして品質を保持するよう、鮮度保持に努めています。
ハイレベルの生産者
長い歴史がある静岡県の野菜づくり。産地には規模の大小に関わらず品質にこだわり、新品種へ積極果敢に挑戦する職人タイプの生産者がたくさんいます。北海道や長野県といった競合他地域に比べて栽培面積が少ないため、同じ畑で複数の品目を輪作するケースも多く、その分、土づくりに対する思いや気配りが深いといわれます。
競合産地との差別化を意識し、収穫した野菜の「見た目」「鮮度」「包装」にも細部にこだわり、“農芸品(農業芸術作品)”と称されるクオリティを目指しているのも、静岡野菜の特徴です。最近では消費ニーズに応えてミニサイズの品目もさかんに作られています。野菜売り場に並ぶ静岡生まれのユニーク野菜にぜひ注目してください。
■問合せ/JA静岡経済連 みかん園芸部販売情報センター TEL 054-284-9732