杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

他者からのアテンション

2008-09-18 23:06:09 | 地酒

 16日(火)夜は、静岡の酒を卒論に書きたいという静岡大学の学生さんの相談に応じ、篠田酒店ドリプラ店の萩原和子さんも呼んで、ひとしきり熱弁をふるいました。

 17日(水)夜は、酒蔵環境研究会を主宰されている世古一穂さん(金沢大学院教授)の静岡集会に呼ばれ、地域活動を支援する行政関係者と一献くみかわしました。

 18日(木)は、静岡大学の学生主導ゼミ「天晴れ門前塾」の社会人講師5人のうちの一人に呼ばれて県庁で記者会見。夜は東京の観光コーディネーターから地酒についてのレクを頼まれ、県観光協会で打ち合わせ。

 

 

 

 ・・・というわけで、この3日間、なんだかエラそうに人様の前で酒の話をする羽目になり、ばつの悪い時間を過ごしました。人前で話をすることに慣れているカルチャー講座の講師とか、きき酒師の先生とか、それなりの肩書とキャリアがあって人様に語るものを持っている方々ならまだしも、自分はただただ好きで追いかけているテーマを活字や映像で伝えるだけの人間なのに・・・。聞かれることにはつい夢中で答えてしまうのですが、終わってから一人になると、自分は何さまだと自己嫌悪に陥ります。分をわきまえずに出過ぎたことをすると、後でしっぺ返しが来るぞと。

 

 

 

 その一方で、自分より2回りぐらい下の大学生たちが、「地酒の世界って面白い」と目を輝かせて懸命に話を聞く姿には、無条件で心を打たれます。

 映画作りのことが新聞に載ったことで、自分よりはるかに高給取りの公務員さんや新聞記者さんたちが一目置くようになったのも、これまで経験したことのない待遇?かも。

 

 

 

 今、話題のベストセラー・姜尚中さんの『悩む力』の中に、「他者からのアテンション」というキーワードが出てきます。「人はなぜ働かなければならないのか」という問いの答えは、「他者からのアテンション」そして「他者へのアテンション」だと。アテンションとは「“そこにいていい”という承認のまなざし」だと姜さんは言います。

 

 

 

  ずっとフリーランスで働いてきた自分にとっては、自分の存在を他者から認められる、自分の仕事が社会で何らかの意味を持っていると実感できる・・・それはとても重いことです。好きなテーマを自己実現と称して、ただただ夢中で追いかけてきた20~30代とは違い、今は、社会に還元する役割を自覚し、責任を果たすという姿勢で取り組まねば、と実感しました。

 

 

 

 天晴れ門前塾は県内の学生(短大・専門学校生も可)を対象に、11月から3月にかけ、5人の講師がそれぞれのテーマで数回、学外ゼミを行います。講師は私のほか、フリー編集者で茶っ都会代表の大国田鶴子さん、静岡福祉大学非常勤講師で元静岡新聞記者の河合修身さん、静岡観光コンベンション協会の佐野恵子さん、㈱キャリアクリエイトの杉山孝さん。

 

 

 

 私は「酒造り、映画づくりを通してモノづくりの心を学ぶ」というテーマで、試飲会や酒蔵見学、映画撮影見学などを行う予定です。まさか映画づくりに学生を巻き込むことになるとは、自分でも予想していませんでしたが、これは、映画づくりを始めた自分への、社会からのアテンションかもしれない、と直感し、引き受けることにしました。

 

 

 

 学生限定企画ですが、興味のある人は、ぜひ参加してください。初めて飲む日本酒が静岡吟醸ならば、日本酒を一生好きになること、間違いなし!です。

 天晴れ門前塾についての問い合わせ monzenjyuku@yahoo.co.jp

 

 

 


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