杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

西武池袋本店『静岡ごちそうマルシェ』完売御礼

2017-12-22 20:29:17 | しずおか地酒研究会

 前の記事でお知らせした12月12日~18日開催の西武池袋本店『静岡ごちそうマルシェ』、無事終了しました。最終的な数字はまだ伺っていないのですが、マルシェ全体で目標値を大幅にクリアし、同館で開催の東北物産展並みの売り上げを記録したそうです。主催の県商工会連合会の皆さま、出展業者の皆さま、お疲れ様でした&本当に良かったですね!

 とくに会場に駆け付けた多くのお客様が、その場でSNSで口コミ発信し、素晴らしい拡散効果を発揮したと思います(当ブログのため、FBの投稿写真を提供してくださったFさん、Yさん、ありがとうございました)。今回、会場にお越しくださったすべての皆さま、とくに静岡から駆けつけてくださった酒友の皆さま、本当にありがとうございました。

 

 

 こちらは私がお手伝いした地酒コーナーで当日お配りしたチラシ。『杯が満ちるまで』執筆時に撮った酒造写真がお役に立ちました!。

 地酒コーナーは西武池袋本店の酒売り場の直轄だったので、売上のノルマはなかったものの、県商工連が力を入れてチラシを制作しトークショーまで企画し、それに乗っかかるかたちで参加することになった私としては、それ相応の成果を出さなければ…!と力が入りました。主催者からは売り場に張り付く必要はない、トークショーだけ頑張ってくれればと言われていましたが、池袋だけでも西武・東武と巨大酒売り場を有する百貨店が2つもある中、7階まで昇ってこの催事場に足を運んでくださったお客様には、静岡の酒と幸せな出会いをしてほしい・・・そう思ったら、結局7日間、売り場から離れることができませんでした。


 結果としては、私がでしゃばるまでもなく、この酒造繁忙期に会場まで駆けつけて自ら店頭販売&トークをしてくださった蔵元さんたちのお力で、12日の開催直後にこれだけ並んでいた商品は次々に売り切れとなりました。都内に流通窓口を持つ「花の舞」と「富士錦」以外は追加補充もままらなず、6日目にほぼ無くなり、最終日には西武の担当者さんが地下にある酒売り場の常設商品から、今回エントリーのなかった開運と若竹おんな泣かせを急きょ運んで並べたのです。

 

 

 毎日交替でやってくる蔵元さんがたには「ご自分の酒をすべて売り切ってくださいね」と冗談半分にハッパをかけたものの、まさか本当に完売するとは・・・。嬉しい反面、チラシに掲載されていた商品がないというのは売り場にとってなんとも心苦しいですね。補充がスムーズに出来ていたら、もっと売れたのに!と地団駄を踏み、西武の催事担当者に何度もつっかかってしまいました(苦笑)。

 

 まず初日12日は「白隠正宗」の蔵元杜氏・高嶋一孝さんが来店。朝、酒造仕事を済ませ、11時のトークショーに参加され、その足で日本酒造組合中央会の技術委員として会議にご出席。夜19時のトークショーへとんぼ返りしていただくというハードスケジュールでした。高嶋さんご自身が店頭に立つ時間は短かったため、初日即完売!とはいきませんでしたが、指名買いをされる方、白隠禅師の酒だからと触手される方が多く、全商品中最もハイクラスの白隠正宗純米大吟醸(4000円)もきれいに完売しました。この時期ですから、あえて大吟醸クラスの商品を贈答用にお求めになるお客様も非常に多かったのです。ちなみに全商品のうち大吟醸は白隠正宗と正雪だけ。ああーもったいない!

 

 2日目(13日)は英君酒造の蔵元望月裕祐さん来店。「英君」は今回、静岡ごちそうマルシェのポスターに大々的にピックアップされ、「ポスターに載っていた酒」とご用命のお客様続出で、英君しぼりたてが完売第一号となりました。裕祐さんご自身、会場に来てポスターを初めて見てビックリ仰天。知り合いのお客さんからさかんに冷やかされ「袖の下渡してないですよー」と苦笑いされていました。この日は夜、日本を代表する酒類ジャーナリスト松崎晴雄さんが駆けつけ、トークショーを楽しんでくださいました。

 

 3日目(14日)は「志太泉」の蔵元望月雄二郎さんと「花の舞」の東京支店長上村智亮さんが来店。志太泉はうすにごり、花の舞はしぼりたてが飛ぶように売れました。説明に苦労した志太泉「身上起~龍馬にプレゼントしたかった酒・原料/愛国米」も、トークショーで雄二郎さんが丁寧に説明してくれたおかげで無事完売。

 初日・2日目は気を張っていたせいか、ほとんど疲労感を感じなかったのですが、この日の午後あたりからなんとなく調子が悪くなり、下痢と吐き気。19時のトークショーが終わった後、早めに上がらせてもらい、薬局へ駈け込んで胃腸薬と風邪薬をゲット。結局最終日まで薬は手放せませんでした。

 

 4日目(15日)は「花の舞」の上村さん来店。しぼりたて、純米吟醸、純米吟醸熟成酒の3種類を見事売り切りました。私も売り場にほとんどつきっきりで、身体が持つかなと終始心配だったのですが、花の舞以外の商品もどんどん無くなる状況に比例して疲労も消えていった。・・・とても不思議な感覚でした。

 

 5日目(16日)は「富士錦」蔵元の清信一さん、「花の舞」上村さん来店。富士錦は富士山のお膝元、花の舞は井伊直虎の故郷・井伊谷のお膝元。それぞれ名水に恵まれ、自蔵で米を育てる蔵ですという説明がすっかり板に付きました。土曜日のこの日は期間中最大の集客数を記録。開店の10時から21時の閉店までお客様が途切れませんでした。疲労もピークに達していたはずですが、閉店時には気分爽快。肉体は精神がコントロールするものだと改めてしみじみ感じました。

 

 6日目(17日)は「正雪」の蔵元望月正隆さん、「杉錦」の蔵元杜氏杉井均乃介さん来店。「正雪」は東京でもネームバリューがあるだけに、正隆さんが来店された6日目にはほとんど商品が残っておらず、午前中にあっさり完売。とはいえ、販売する商品がなくても、この2人のトークショーをお目当てに多くの酒通が詰めかけ、売り場のあちこちで酒談義に花が咲きました。

 

 最終日の7日目(18日)は杉井さん続投。やはり午前中にすべて完売となり、2回のトークショーではイートイン駿河屋嘉兵衛に残っていた杉錦をわけてもらって試飲をお楽しみいただきました。酒造り職人でもある杉井さんには生酛づくり、山廃づくりのイロハを丁寧に解説していただき、トーク後には酒造に関心のあるお客様との会話も弾んでいるようでした。

 トークショーのアンカーでもあった杉井さんは、自分の酒のみならず、静岡の酒がここまで上質になった経緯を熱を込めて語り、売り場に置かれた開運やおんな泣かせを一生懸命売ってくれました。こういう蔵元の姿勢が、この売り場を完売状態にしてくれたんだなあとジーンとしてしまいました。

 

 7日間、酒売り場以上に地酒のPRに貢献してくださったのがイートインの駿河屋嘉兵衛さんでした。駿河屋嘉兵衛は富士市の塩辛専門店。東名富士川SAの富士川楽座、秋葉原の地域物産店ちゃばらに直営ショップを持ち、川崎と神田万世町に静岡の地酒&60種の塩辛が味わえる居酒屋を経営(詳しくはこちらを)。今回のお話をいただいた夏ごろ、私も万世町のお店を訪ね、地酒と塩辛の相性の奥深さを実体験しました。酒肴はどちらかといえば酒の味を邪魔しないあっさり・さっぱりが好みだった私も、塩辛さが酒杯を進ませる効果に唸りっぱなしです。

 

 イートインでは酒売り場で販売する酒を試飲に使ってくれたので、気に入ったお客様が続々と商品をお買い上げ。素晴らしい相乗効果を発揮しました。

 

 

 下の写真の右端が静岡県商工会連合会のアドバイザーで今回の総合プロデューサーでもある石神修先生。左端が駿河屋嘉兵衛のオーナー渡邊悠さん。この2人の功績は計り知れなかったでしょう。本当にお世話になりました。

 

 ふだんは日中ほとんど自宅のデスクでパソコンのキーボードを叩いている私が、立ちっぱなしでしゃべりっぱなしの慣れない販売業務を完投できたのも「静岡の酒が売れた」というライブ感覚そのもの。どんなに疲れていても「職業的人格」がそれを可能にすることを改めて実感しました。食事がとれない、疲れすぎて眠りも浅い・・・そんな日が続いても、朝、顔を洗っていつもよりしっかり目にメイクをして、持参した作務衣を着て売り場に臨む、そんなルーティーンと、実際に成果が出る手応えが、自分にも「職業的人格」を与えてくれたのです。外で働く女性たちは毎日こうして頑張っているんだなあと、今更ながら感動してしまいました。

 なによりライターとして、商品コピーや紹介記事を書く上で、お客様の顔を見て声を聞いて、どんなアクションが購買に結びつくのか現場で体験できたことは大きかったと思います。せっかく溜まった、いろんな貴重な経験値、無駄にしないようにしなければ!

 

 

 

 



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