杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

文化創造アルカ&奈良の伝統酒呑み比べ

2012-12-04 17:45:54 | 地酒

 12月1日~2日の京都奈良報告つづきです。1日は京都で宿が取れず、奈良のビジネスホテルに泊まることにしました。そして以前、お世話になった奈良の文化情報誌『あかい奈良』の編集長・倉橋みどりさんに久しぶりにお会いすることに。

 

 

 『あかい奈良』は奈良で活動するライター、フォトグラファー、デザイナー、そして印刷会社が広告ナシ・ノーギャラで発行していた文化情報誌。そのクオリティの高さは、奈良、京都をはじめ、東京国立博物館ミュージアムショップでも常設販売されていた等で証明されていました。歴史好きのライターとしては手弁当でも編集に関わりたい!と私も遠路はるばる取材に参加させていただき、そのつど、みどりさんのお宅に泊めていただいたりして、本当にお世話になりました(こちらを参照してください)。

 

 

 みどりさんは、『あかい奈良』が休刊になった後、自ら『NPO法人文化創造アルカ』を立ち上げ、新たな文化情報発信活動を始めました。こちらの記事でも紹介したとおり、奈良きたまちの古民家を拠点に、歴史や生活文化等をテーマにした講座やイベントを開催。雑誌で発信していた情報を具体的に見せて語って体験してもらうというわけです。自分が地酒研究会を始めたときのモチベーションに近いものを感じ、“同志”として心から頼もしく思いました。

 

 

 みどりさんとは1日夜、近鉄奈良駅近くの鍋料理の店で、大和地鶏の吟醸塩出汁鍋というのをいただきながら、旧交を温めました。アルカではさっそく以下のような講座を企画中です。興味のある方はHPでチェックしてみてください!

 

 

シリーズ奈良きたまち学

 

*奈良きたまちは、奈良時代から現在まで長い時間を重ね、さまざまな歴史の足跡とともに人々が暮らしています。「奈良きたまち学」とは、どこからどこまでが奈良きたまちなのか、このまちの魅力をどう整理し、発信していくべきか、歴史的・地理的に考えていくことです。

 

 

平城宮跡保存運動のはじまり

 

第1回 溝辺文昭さんに聞く「嘉十郎と文四郎」

 

■日時 12月16日(日) 13時15分~15時30分

 

■場所 空海寺(奈良市雑司町167)

 

■会費 2000円(文化創造アルカ会員は1500円。即日入会可)

 

 

 

第2回 平城宮跡保存運動の歴史

 

■講師 吉川聡氏(奈良文化財研究所歴史研究室長)

 

■日時 1月20日(日) 13時15分~15時30分

 

■場所 空海寺

 

■会費 2000円(同)

 

 

 さてさて、久しぶりの奈良だったので、新大宮のホテルまでぶらぶら夜歩きしようと三条通りを散策。みどりさんに教えてもらった『大和酒の店&チョットBar 酒商のより奈良三条店』を訪ねました。場所は三条通りのホテルフジタ奈良のまん前です。

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 メニューや酒棚のラインナップを見て「アタリ!」と心の中でガッツポーズ(笑)。菩提酛、水酛(生酛)、生酛どぶろく、山廃酛、速醸酛と、室町時代から近代にかけての酛造りを一度に呑み比べできるなんて、菩提酛の発祥(奈良正暦寺)の地ならではのレアな体験です。カウンターに立つおかみさん(おたぬきさん)も豊富な酒の知識を披露し、いろいろチョイスしてくれました。

 

 このサイズで1杯300~400円で呑み比べできるのも酒党にはありがたいサービス。つまみは乾きモノ(ナッツ)だったけど、これが酸度の高い伝統酒にはぴったり合うんですね。静岡吟醸では体験できない味わいでした。

 

 

 歴史が深く、文化を大切にする人々が暮らす街で、美味しい地酒を手軽に呑める。イマドキの“大人旅”にはベストな条件が揃っているんじゃないでしょうか。奈良には勝てないまでも、駿府静岡だって掘り起こせばいろいろな魅力があるはず。まず創らなきゃならないのが、街中で、気軽に地酒が試飲できる場所! 前夜、静岡発の夜行バスに乗る前に駅南銀座の『湧登』で磯自慢と初亀の新酒しぼりたてをひっかけたのですが、ホント、街中や駅の近くでちょこっと呑める店がどんなにありがたいか・・・とりあえずは年末ジャンボに賭けてみるか(苦笑)。


京都仏堂の紅葉

2012-12-03 19:48:52 | 仏教

 12月1~2日と京都・奈良に行ってきました。静岡も急に寒くなったみたいですが、京都奈良の底冷えの厳しさといったら・・・ウールやダウンウエア類を着てこなかったので参りました、ホント。

 

 

 

 1日は静岡発の夜行バスで朝5時に京都駅に到着。以前、行ったことのある、朝6時から空いている太秦天神川の銭湯「やしろの湯に直行し、ひと風呂浴びてサッパリ。地下鉄で北大路まで移動して、ネットで見つけた自家焙煎珈琲の店伊藤珈琲」のモーニングをいただきました。朝7時からやっているコーヒー専門店のモーニング、ありがたいです。焙煎したてのブレンドは風味が新鮮でほどよい酸味が心地よく、朝一番にいただくベストな味わいでした。申し訳ないけどチェーン店のマシンコーヒーでは味わえないですよね・・・。

 

 

 地下鉄で京都駅まで戻り、JRバスで高尾の高山寺へ向かいました。ここにあるという「日本最古の茶園」を見に行くためです。

 

 

 お茶はご存知のとおり、鎌倉初期に栄西禅師が宋から茶の種を持ち帰り、明恵上人に贈り、明恵上人が栂ノ尾のこの地に植えたと伝わります。鎌倉~室町期には栂ノ尾の茶が「本茶」とされ、天皇へも献上されました。明恵上人と親しい近衛家も茶樹を譲り受け、所領する宇治に植え、これが宇治茶の発祥となった・・・というのが一般の理解です。

 

 

 

 

 

 昨年から茶道の勉強を始めて以来、作法を覚えるより歴史を知るほうに興味のある私は、今年7月に比叡山坂本にある日吉茶園を観にいきました(こちらを)。栄西よりも古い、最澄が持ち帰った茶樹が植えられたとされる、正真正銘?の“日本最古の茶園”。でも栄西→明恵→Imgp0991
栂ノ尾ルートのほうが知られているし、ほら、こんな立派な石碑も。これは日本を代表する茶産地宇治のパワーバランスが成せるワザなんでしょうか・・・?

 

 

 

 栂ノ尾は市内北部の山間地だけに紅葉のピークは終わり、おまけに市街地よりも格段に寒い!高山寺入山料に500円、国宝石水院に入るのに600円と、こちらも痛い!石水院は明恵上人が後鳥羽院から賜った学問所で鎌倉の創建時代のまま残る国宝&世界文化遺産で、維持管理費等を考えたらやむを得ないか・・・。

 

 

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 参拝者のほとんどが石水院を観て帰る中、私は境内に点在する茶園、Imgp0993
明恵上人の墓、仏足石、金堂、金堂道等をゆっくり廻りました。

 

 

 

 茶樹と紅葉のコントラスト、とても清清しい光景でした。茶葉は一見、ごくフツウのグリーンの葉だけど、1200年前に生まれた茶文化の源流・源泉だと思うと神聖な気持ちになります。きれいに整備された静岡の茶畑とは違う原点回帰の美しさがありました。静岡の茶畑は・・・まさに人間の叡智と自然の共同作品。それはそれで大変価値あるものだと思います。

 

 

 

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 JRバスで市街地へ戻る途中、龍安寺の前に停留所があったので、下車しました。枯山水の石庭で名高いこの寺が紅葉の名所だという認識がなく、この時期に訪ねるのは初めてでしたが、ビックリ感激するほどの美しさでした! まさに今がピークといった感じ。観光客の多さにもビックリでした。Imgp0998

 

 

 

 

 せっかくの名庭ですが、人の多さにウンザリ。なんとか人が映らずに撮れる場所を見つけて一枚撮って、そそくさと退散しました。こういう庭はひと気の少ない早朝や夕方に静かに観賞したいですね・・・。

 

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 境内の紅葉もこのとおり。今年、紅葉を見るのはこの日が初めてでしたが、この場所だけでワンシーズン分、たっぷり満喫できた気分でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 時計を見たら11時。お昼には早い時間だけど、湯豆腐の暖簾を見たらついつい吸い込まれるように入ってしまいました。初めていただく龍安寺の湯豆腐。1人分(1500円)にしては大盛りでしたが、ごはん(200円)をつけてありがたく頂戴しました。

 

 

 このあと妙心寺までぶらぶら歩き、妙心寺南門の門前にある作務衣専門店『井上順商店に。今回の京都行きは、いつも坐禅に行く興聖寺の蠟八接心(集中坐禅)の参加が目的です。

 蠟八接心とは、お釈迦様が悟りを開いたとされる12月8日の前、12月1日から7日までの一週間、ぶっ通しで寝ずに坐禅をする禅宗の恒例行事。意欲がある一般の人も参加OKで、私は今回は2日(日)一日のみの参禅ですが、ちょうどいい機会なのでMY作務衣を用意することに。井上順商店のことは、今、アルバイトで通っているお寺の奥様から教えてもらいました。女性用は色に限りがあり、悩んだ挙句、手入れしやすく厚みもあるポリエステル&ウール製の薄青を購入。まあ実用的であれば色や生地なんてどうでもいいことなんですけど、こういうのって「カタチから入って気持ちをつくる」みたいなところ、ありますよね。ちょっぴり禅の世界に近づいた感じがしました。

 

 

 

 午後から天気が悪くなり、京都市街地もハンパない寒さに。雨も降り出してきました。明日の坐禅では作務衣の下にちゃんとした防寒着を着ないと、とてもじゃないけど耐えられないと、四条河原町のユニクロに駆け込み、ヒートテックの下着・レギンス・ネックシャツを購入。なんとか寒さをしのげるかと思いましたが、甘かった・・・!

 

 凍りそうだった坐禅の体験談はまた後で。