日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

「お届け物です」のあの笑顔

2017-03-11 07:15:00 | 編集手帳

3月8日 編集手帳

 

 開拓農民の一家が町の雑貨屋へ買い物に行く。
店で通信販売のカタログを開き、
衣服の写真を眺めた。
西部劇『シェーン』(1953年、米国)の一場面である。
希望の品が馬車で届くまで、
客はどのくらい待ったのだろう。

いまや指先ひとつ、
インターネット通販の時代である。
消費の行動半径が西部の荒野並みに広がる一方、
商品が届くまでの時間は主演俳優アラン・ラッドの早撃ちを連想させぬでもない。

早くて安くて便利の“ありがたずくめ”には、
どこかで無理も生じる。
配送の現場は疲労し、
ダウン寸前であるらしい。

ヤマト運輸が宅配便事業を見直すという。
人手不足で運転手を十分に確保できず、
急増したネット通販の取扱量をこなしきれない。
「お届け物です」と告げるあの笑顔の向こうには、
疲れた吐息が隠れているのだろう。
人の力なしに物は届かぬ、
という当たり前の事実を思い知る。

商品を買う側も届ける側も、
いまよりはのんびりしていた昔よ「カムバック!」とつぶやいてみても、
孤高のガンマン同様、
情報化の流れは逆戻りしてくれない。
便利で、
ときに手に余る現代の荒野である。




コメント    この記事についてブログを書く
« 本当は怖い?!シカのおじぎ | トップ | 日韓関係悪化の中で韓国人青... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

編集手帳」カテゴリの最新記事