3月11日 キャッチ!
アメリカ主導の有志連合による空爆やイラク軍など地上部隊の攻勢を受けながらも
勢いを保ち続けているIS(イスラミックステート)。
そのISを含めイスラム教徒の8割以上を占めているのがスンニ派である。
カイロの中心部にあるアズハルモスクは10世紀に建てられた。
そのモスクと大学、
研究機関を束ねる宗教機関が「アズハル」である。
イスラム教スンニ派の最高権威とされ
穏健派イスラムの総本山といわれている。
そのアズハルのトップがアハマド・タイブ総長である。
人々の生き方や考え方にかかわる宗教的な見解を示す機関の指導者として
スンニ派諸国の指導者たちに大きな影響力を持っている。
(宗教機関アズハル アハマド・タイブ総長)
「ISは若者を集めえ危険な思想を植え付けています。
彼らはイスラム教の思想と政治を代表しているとは言えません。」
世界中から2万人を超える外国人戦闘員を集め
イラクとシリアで勢力を広げてきたIS。
その指導者が去年イスラム国家の樹立を一方的に宣言したバグダディ容疑者である。
予言者ムハンマドの後継者でイスラム世界の指導者である“カリフ”を自ら名乗り
世界に衝撃を与えた。
ISはいま極端な宗教解釈をもとにどんどん過激化している。
イラク北部の博物館に侵入しメソポタミア文明の歴史的遺産を次々に破壊。
世界遺産の遺跡までも破壊し
すべては預言者の教えだと主張する。
(ISの戦闘員)
「予言者は偶像を破壊するよう命じた。」
異なる宗教の人々も迫害している。
ヤジディ教徒の女性たちを拉致し
7世紀の時代に存在した奴隷制を復活させたとして正当化している。
さらに日本人を含む外国人を人質に取って殺害するなど残虐行為を繰り返すIS。
タイブ総長はイスラムの教えとは全くかけ離れたテロ集団に過ぎないと指摘した。
(宗教機関アズハル」アハマド・タイブ総長)
「イスラム教は異なる宗教にも
愛情・慈悲・許し・尊敬を唱えています。
ISは仲間にならないものは不振入者で
殺害すべきだと主張する。
これは我々が考えるISの最も危険な部分なのです。」
イスラムの本来の教えとは相いれないテロ組織IS。
なぜこれほど極端な解釈に世界の若者たちが引き寄せられるのか。
タイブ総長は欧米諸国でおイスラム教徒への差別
そして中東諸国では経済成長とともに生まれた貧富の差が背景にあると説明する。
そうした社会に不満を募らせる若者たちが
平等な社会を実現した理想郷だと信じ
シリアやイラクのIS支配地域に向かうと言う。
(宗教機関」アズハル アハマド・タイブ総長)
「ISは欧米やアラブ世界で疎外された若者の状況を利用しています。
若者たちはイスラムの解釈を誤り
革命実現が信じられる場所に集まっているのです。」
しかしイスラムの正しい教えを浸透させ
過激主義の拡大を食い止める責任は宗教者にこそあるとタイブ総長は言う。
世界の100か国以上から留学生を集め宗教教育の中心地となってきたアズハル。
そのアズハルは今ISの危険思想の拡大に
かつてないほどの危機感を強めている。
タイブ総長は去年以降
コーランの誤った解釈をただすため」教育プログラムを見直したほか
各国の聖職者を招いた研修も増やし
過激思想の万円を防ぐ対策を始めたことを明らかにした。
(宗教機関」アズハル アハマド・タイブ総長)
「アズハルの教材を見直し
テロ組織に関する情報や
ISの思想への反論を載せました。
また世界中で聖職者への研修も行っています。」
危険なテロ組織のせいでイスラム教へのイメージが傷つけられるほどの危機感。
タイブ総長は過激派組織の勢力を弱めていくには
世界中の聖職者や各国政府は手を携え
宗教や社会の問題をより深く考えていく必要があると指摘する。
(宗教機関」アズハル アハマド・タイブ総長)
「テロの脅威は中東だけでなく欧州にも及んでいます。
世界中の人々が一致してテロに立ち向かうべき時だと感じています。
国や個人の利益を棚上げにしてISの壊滅を優先させることが重要です。」
イスラム教の極端な解釈をもとに世界に脅威を広げるIS。
過激な組織に対抗しようという宗教者の模索が続く。